ヒューズ
定格以上の電流が流れたとき、通過電流による発熱で溶断し電流を遮断する安全装置。電路に過大な電流が流れた際に自ら溶断(切断)することで回路を保護し、機器の損傷や火災といった重大な事故を防ぐ。ヒューズの構造はシンプルであり、ガラス筒の内部に、一定の電流値を超えるとジュール熱によって溶けるように設計された、比較的融点の低い金属製のエレメント(溶断部)が封入されている。
正常な状態では、電流はこのエレメントを通過して回路を流れる。しかし、何らかの原因で過電流や短絡が発生し、規定された定格電流を超えた電流が流れると、エレメントは急激に発熱し、瞬時に溶けて断線する。これにより、電流の流れが物理的に遮断され、後段の機器や配線へのダメージを防ぐ仕組みとなっている。
この動作は、機械的な制御機構を持たない自己完結型のものであるため、信頼性が高く、故障要因が少ないという大きな特徴がある。一度溶断したヒューズは元に戻らないため、交換が必要となる。
ヒューズは配線用遮断器と違い、一度溶断してしまったヒューズは交換する必要があり再利用できない。なおヒューズに大電流が流れた場合で溶断に至らなかったとしても、ヒューズの内部導体が劣化するため、適切な回路保護ができない場合があるため注意が必要。
ドライヤーやヘアアイロンといった小型の家庭用電気機器にはサーモスタットが内蔵されており、異常発熱による発火を防止するための安全装置として構成されている。通常の異常過熱による保護はサーモスタットによる可逆的な保護であり、一時的に電流を遮断するなどして本体の保護を行うが、サーモスタットで保護ができないような致命的な故障や異常発熱があった場合には、ヒューズによって機器内部の電路を完全に遮断することになる。
なお、一般的な家電機器の場合、ヒューズが切れた場合はユーザーが交換できない構造であることが多く、その機器はもう使えなくなるため廃棄またはメーカーによる修理を必要とする。
ヒューズの主な種類と用途
ヒューズには、使用される環境や目的に応じて様々な種類が存在する。
- ガラス管ヒューズ:一般的な電子機器や家庭用機器の内部でよく用いられ、ガラス管の中にエレメントが見える構造になっている
- ブレードヒューズ:自動車の電気系統で広く使用されている。プラスチック製の本体に金属の端子が付いた形状で、色によって定格電流が区別されている
- 限流ヒューズ:高圧電路の短絡保護など、高電圧の電力設備で使用される
電力ヒューズの選定方法や特徴、仕組みについては電力ヒューズの選定方法を参照。












