電力ヒューズの選定方法

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電力ヒューズとは

電力ヒューズは、ヒューズリンクに一定以上の電流が所定の時間以上流れた際に、ヒューズエレメントがジュール熱によって溶断し、電気回路を開放させる保護措置である。

高圧受変電設備の保護装置として利用される電力ヒューズは、主に限流ヒューズが利用されており、アーク電圧を高めることで短絡電流を限流抑制し、事故電路を遮断する。

限流ヒューズはアーク抵抗を発生させ、短絡電流の立ち上がり半サイクルで遮断し、回路に流れる故障電流を限流遮断することから「限流」と名付けられている。短絡電流が最大値になる前に回路を遮断するため、電路の保護用として非常に適した特性となっている。

電力ヒューズの長所

電力ヒューズは、過負荷電流から短絡電流を保護するために使用する。以下、長所と短所について記載する。

限流遮断が可能

電力ヒューズは、サイズは小さいが定格遮断電流が非常に大きく、事故時に発生する大電流を確実に遮断する。

真空遮断器も保護装置のひとつであるが、一般的に「3サイクル」や「5サイクル」といった時間を経て遮断動作を行なうため、比較的大きな電流が電路に流れる。

限流ヒューズの場合は、短絡電流が発生しても半サイクル以内に遮断されるため、大電流がケーブルや電気機器に流れる時間が非常に短く、損傷を最小限に抑えられる。

密閉構造のためアーク・ガスが発生しない

短絡遮断時などで発生するアークやガスは、全てヒューズリンクの内部で抑制されるため、遮断点付近にアークを飛散させるおそれがない。

受変電設備が小型となる

ヒューズは非常に小型に製作されているため、受変電設備全体を小型に計画できる。高圧遮断器は非常に大きく、かつ外部から過電流継電器の信号を受ける必要が有るため、多くの装置を搭載した専用盤が必要となる。限流ヒューズは高圧カットアウトや負荷開閉器(LBS)と一体とし、変圧器盤内に組込むことが可能である。

保守点検が容易

高圧遮断器を稼働させるには、過電流継電器や変流器などを併設しなければならず、これら継電器類のメンテナンスも含め、保守点検が煩雑である。限流ヒューズは、ヒューズ本体が保護装置として完結しており、操作・動作機構が内蔵されていないため、保守点検が容易である。

電力ヒューズの短所

繰り返し使用できない

電力ヒューズは、ヒューズリンクに内蔵しているヒューズエレメントが溶断すると、物理的に回路が遮断されるため高い安全性が保たれている。しかし、遮断器のように繰り返し使用はできず、交換しない限り再送電ができない。

遮断不能域がある

限流ヒューズは瞬間的な大電流に対しての保護性能が極めて高いが、定格電流をわずかに超過しているような小電流域の遮断に適していない。ヒューズが溶断する寸前の電流が長時間流れると、消弧するために必要なエネルギーを十分確保できず、本体が加熱され、破損や破裂といった事故につながるおそれがある。

欠相の可能性がある

ヒューズはRST各相に1本ずつ挿入されているため、事故電流の流れ方によっては、1本のみヒューズが動作し「欠相状態」となる。過負荷時の異常電流にばらつきが生じた場合、動作時間のずれから1相のみヒューズが動作し、欠相運転となる事例がある。

ヒューズ溶断による欠相を防止するには、ストライカ形の負荷開閉器を選定し、ヒューズ動作時に全ての相を開放する保護装置を設けると良い。

励磁突入電流による劣化が発生する

高圧遮断器を選定するのと同様であるが、変圧器の励磁突入電流や電動機始動電流、突入電流などで大電流が流れた場合、電流による衝撃や熱によってヒューズエレメントが劣化し、溶断するおそれがある。

ヒューズの特性表をよく確認し、許容時間と電流特性を見極めた選定が不可欠である。

電力ヒューズの種類

電力ヒューズには、変圧器用ヒューズ、電動機用ヒューズ、一般用ヒューズ、コンデンサ用ヒューズの4種類があり、それぞれT・M・G・Cと表記される。変圧器用、電動機用といった専用ヒューズを必ずしも選定しなければならないということはなく、一般用ヒューズ(G)で変圧器やコンデンサを保護することも可能である。

電力ヒューズおよびヒューズリンクは、屋内用と屋外用に分類されている。電気室などで用いるのは当然ながら、屋外キュービクル内部に収容した場合でも、屋内用のヒューズ及びヒューズリンクが使用可能である。塩害地域など空気環境が過酷な場合で、冷却による外気導入が多い場合などは、屋外用のヒューズを用いるとより安全である。

変圧器用ヒューズ(T)

変圧器用ヒューズは、変圧器保護用として適した特性を持つ電力ヒューズである。変圧器は、電源投入時に「励磁突入電流」と呼ばれる過渡的な大電流が発生するので、ヒューズの劣化を引き起こす可能性がある。

変圧器用ヒューズは、定格電流の10倍の電流を0.1秒間通電し、100回繰り返しても溶断しない特性がある。変圧器の投入と開放は頻繁に行われる性質のものではないため、繰り返し開閉回数は100回に設定されている。

電動機用ヒューズ(M)

電動機用ヒューズは、電動機保護用として適した特性を持つ電力ヒューズである。定格電流の5倍の電流を10秒間通電し、10,000回繰り返しても溶断しない特性があり、特に電動機の始動電流に対する耐量が高い。

電動機は始動時に大きな始動電流が流れるため、この始動電流によってヒューズエレメントが劣化したり、溶断することがないように特性が定められている。電動機はオンオフを多く繰り返すことになるため、繰り返し開閉回数が多く設定されている。

一般用ヒューズ(G)

一般用ヒューズは、変圧器・電動機・コンデンサを含め、どのような負荷に対しても利用できる標準的な電力ヒューズである。励磁突入電流や始動電流、突入電流に対して、特定の耐量は持っていないが、どのような負荷に対しても適用できる。

コンデンサ用ヒューズ(C)

コンデンサ用ヒューズは、コンデンサ保護用として適した特性を持つ電力ヒューズである。定格電流の70倍の電流を0.002秒間通電し、100回繰り返しても溶断しない特性がある。コンデンサの突入電流に対して耐量が高い。

電力ヒューズの選定方法

電力ヒューズは、定格電流の1.5倍から2倍以上を選定する。始動電流や突入電流、励磁突入電流でヒューズエレメントが溶断が溶断しないよう、余裕のある容量で選定しなければならない。

変圧器用・電動機用・一般用・コンデンサ用があり、負荷設備に応じた特性に適合したヒューズを選定すると良い。一般用ヒューズ(G)を選定することも可能である。

定格遮断電流は、電力ヒューズの場合40kAが一般的である。数多くの受変電設備で、受電用の遮断器の定格遮断要領を12.5kAと設定しているため、40kAの選定であれば特段支障にはならない。

変電所に近い場合、受電用の遮断器を20kAや25kAとする場合があるが、それであっても十分な保護性能を持っている。

限流ヒューズとOCRの保護協調

複数台の変圧器バンクを一括で保護する高圧遮断器(VCB)が設置されている受変電設備において、過電流継電器(OCR)によって系統の過電流保護を行なっている場合、OCRと電力ヒューズの保護協調を検討しなければならない。

ヒューズは小電流遮断ができず、過負荷によりエレメントが損傷すると、爆発を伴うおそれがある。大きな電流が流れる「短絡事故」に対してはヒューズによって早期遮断を行い、小電流遮断領域では、OCRから真空遮断器を動作させるよう整定するのが原則である。

ヒューズよりもOCRの動作が常に早い整定となっていると、ヒューズ動作よりもVCBによる遮断が先行してしまい、広範囲が停電するおそれがある。保護協調を計画する場合、停電範囲ができる限り狭くなる設計としなければならない。

ヒューズの許容特性

限流ヒューズに電流が流れても、ヒューズエレメントに性能の劣化を及ぼさない電流と時間の特性を「許容特性」と呼ぶ。許容特性以下の電流値であれば、原則として電流によるヒューズの劣化が発生しないため、変圧器の励磁突入電流や電動機の始動電流は、許容特性を超えないように保護協調を検討しなければならない。

許容特性を超過すると、「変圧器への電源投入のたびにヒューズが劣化する」という状態になるため注意を要する。

ヒューズの動作特性

限流ヒューズが溶断し、アークが発生して消滅するまでの電流と時間の特性を「動作特性」と呼ぶ。動作特性は遮断特性とも呼ばれ、高圧限流ヒューズの一次側に位置する受電点OCRや、配電線OCRとの保護協調を検討する場合に用いる。

動作特性で示されたカーブ以上の電流と時間が発生した場合、ヒューズが溶断して異常電流遮断が完了するので、OCRが動作せず、一次側遮断器動作による広範囲停電を防止できる。

ヒューズの溶断特性

限流ヒューズに電流が流れた瞬間から、ヒューズエレメントが溶断するまでの電流と時間の特性を「溶断特性」と呼ぶ。最小溶断特性と最大溶断特性が示され、その平均値は「平均溶断特性」と呼ばれる。

溶断特性のカーブに入るような電流が一定時間以上流れた場合、ヒューズエレメントは溶断寸前の電流を受けている状態である。ヒューズ溶断が発生しなかった場合としても、エレメントの劣化が進行しており、ヒューズ本来の性能が失われている可能性が高い。

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