電気設備の知識と技術 > 電気設備用語辞典 > ピークカット
ピークカットとは、最大需要電力時において電力需要量を削減し、電力需要のピークを抑制し、需要と供給のバランスを保つことを目的とした取り組みである。電力の尖頭的な需要を緩和し、平準化するための手法のひとつで、ピークカットはその名称の通りピーク負荷を「カット」する手法であり、他の時間帯に負荷をずらす「ピークシフト」とは考え方が異なる。
太陽光発電設備や風力発電設備、自家用発電設備によってエネルギーを創出し、電力会社から購入する電力を減らすことで、最大需要電力の低減を目指す方法が代表的である。ピーク発生が予測されるタイミングで電力需要を抑制することで、電力需要がピークの時期に需要が供給を上回る「需要過剰」の状態となることを避けることができる。
ピークの発生を抑制できれば、太陽光発電などによる余剰電力の買い取りや、発電設備の不要な運転に頼ることがなくなり、省エネ・CO2削減効果が期待できる。また、電力会社にとっても、ピーク時に発生する大きな負荷による電力の安定供給に対するリスクが低減されるため、電力システム全体の安定性が向上する。
ピークカットの導入メリットは、電気料金の削減である。例えば、1kWを1,269円の基本料金で契約している場合、蓄電池の使用によって200kWをピークカットすることで、1年間で約300万円の電気料金を削減できる。ピークカットの実施には費用面も含めた相応の準備が必要だが、電気料金の低減効果が期待できるため、導入検討の価値は高い。
各種発電設備を利用した創エネルギーによるピークカットのほか、旧式の空調機を高効率な空調機に交換したり、蛍光灯や白熱電球といった消費電力の大きなランプをLED照明など効率の良い照明器具に置き換えることも、ピークカットの手法に含まれる。
電力会社と電気の受給契約を結ぶ場合、1年間を通し最も大きな電力が発生する瞬間(ピークデマンド)の電気容量で契約を行うため、ピークカットにより最大需要電力を低減できれば、基本料金が安価になるためランニングコストを低減できる。
ピークカットとは異なり、ピークシフトは、電力の使用量そのものを低減させるのではなく、電力の使用をピーク時に多く使用する時間帯から、電力の使用量が少ない時間帯にシフトさせて使用電力を平準化させる方法である。身近な例としては、蓄電池を使用して、昼間にためた電力を夜間に放電することで、ピーク時の需要を低く抑える方法が挙げられる。
蓄電池や蓄熱設備といった設備は、夜間あまり使われていない電力を貯め、負荷の大きな昼間時間に利用する手法であり、ピーク負荷をカットしているわけではない。手法は「ピークシフト」と呼ばれ、ピークカットとは区別されている。ピークカット、ピークシフトどちらも需要電力の低減を図られる省エネルギー手法だが、その考え方は異なっている。
契約電力やデマンドについての詳細は契約電力とデマンド管理を参照。
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