ペロブスカイト
次世代太陽電池「ペロブスカイト」とは
ペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン系太陽電池とは違う新技術として世界的に注目されている薄さ、軽さ、柔軟性を持つ、太陽光発電のひとつである。ペロブスカイト太陽電池は、「ペロブスカイト」構造を持つ結晶性の化合物を、光を電気に変える光吸収層に用いている。この結晶構造は「灰チタン石」と同じ結晶構造(ABX3型)を持つ物質の総称である。
従来のシリコン系太陽電池が、高温で複雑な製造プロセスを必要とするのに対し、ペロブスカイト太陽電池は比較的低温で、インクジェット印刷のような簡便な製造手法で作成できるため、低コスト化の実現が期待されている。
社会実装を加速させる特性・メリット
ペロブスカイト太陽電池のメリットは多岐に渡る。本体はフィルム状にできるため、重量はシリコンの10分の1以下ともいわれる。これまで重量や設置場所の制限で導入が難しかった建物の壁面、カーポート、農業用ハウス、電気自動車のルーフなど、様々な場所への設置が可能となる。また曇りや雨の日、朝夕の日光が弱い時間帯でも発電効率が落ちにくい特性を持つ。これは、日本の気候条件にも非常に適している。
レアメタルを使用せず、製造プロセスも簡便なため、国内での普及効果が期待されている。主要材料の一つであるヨウ素は、日本が世界第2位の産出量を誇る資源であり、エネルギー安全保障の観点からも重要とされる。
ペロブスカイトが抱える課題・デメリット
大きく期待が持たれている一方、実用化にはいくつかの課題も存在する。大きな課題として、ペロブスカイトは水分や酸素、紫外線に弱いとされている。屋外で長期的に使用するには、性能の劣化を防ぐ保護層の開発が不可欠で、化学メーカーでは高性能な封止技術を開発し、大幅な改善が進んでいる。
材料に微量の鉛が含まれるため、環境負荷を懸念する声がある。これに対しては、鉛フリーの代替材料の研究や、リサイクル技術の確立が進められている。開発当初は数週間程度と言われていた寿命も、現在では数十年間の実用を目指せるレベルまで研究が進展している。
実用化の現状と今後の展望
現在、日本では複数の企業や研究機関が実用化に向けて幅広い開発が進められている。超高層ビルにペロブスカイト太陽電池を導入し、メガソーラービルにするという構想も発表されており、大きく期待されている。【PDF】内幸町一丁目街区南地区第一種市街地再開発事業
政府も、2030年度の電源構成目標達成に向け、ペロブスカイト太陽電池を再生可能エネルギー普及の切り札と位置付けている。2040年には世界市場で約4兆円規模に達するとの予測もあり、エネルギー革命の主役となる可能性を秘めている。
ペロブスカイト太陽電池は、既存の社会インフラを活かしつつ、クリーンエネルギーへの移行を加速させる強力なツールである。その普及が、持続可能な社会の実現に大きく貢献するものとして期待されている。












