倍率器
倍率器(Multiplier)は、直流電圧計の測定レンジを拡大するために用いる機器である。電圧計本体と直列に接続される高精度の抵抗器であり、電気計測分野において基本的な役割を果たす。倍率器は直流用機器のひとつであり、交流では使用できない。
倍率器は基本的に直流測定に用いられる受動素子(抵抗器)である。交流高電圧の測定には、原理の異なる計器用変圧器(Voltage Transformer)または変成器(Potential Transformer)が使用される。VTは変圧比を利用して高電圧を安全な低電圧(通常110Vや100V)に変換する事が可能で、抵抗のジュール熱による消費電力が少なく、周波数特性にも優れているため、電力系統などの交流回路で標準的に用いられている。
直流電圧計の測定範囲を拡大させるために使用する抵抗器。抵抗を直列に繋ぐと、電圧が分圧されることを利用しており、本来電圧計が持っている最大目盛よりも大きな電圧が測定したい際に利用する。主に、可動コイル形計器を電圧計として使用する場合に用いられる。
倍率器の機能は、オームの法則に基づく「分圧の法則」によって実現される。電圧計は、内部に固有の内部抵抗を持っており、その両端にかかる電圧に応じた電流が流れることで指示値を示す。
測定したい電圧が電圧計の定格よりも高い場合、そのまま接続すると過電流により計器が破損してしまう。ここで倍率器を電圧計と直列に接続することで、測定対象の電圧は、倍率器と内部抵抗の合計抵抗に加わる。回路全体を流れる電流は一定であるため、測定対象電圧はこれら二つの抵抗で分圧されることになる。
このように、電圧計の内部抵抗と倍率器を組み合わせることで、電圧計の内部抵抗に掛かる電圧を低く抑え、最大目盛よりも大きな電圧を測定できる。測定した数値は、倍率器の倍率によって読み替えを行うことで、大電圧の測定も可能となっている。
倍率器は外付けで設ける方法のほか、電圧計の内部に組込搭載し、電圧測定レンジを可変させて様々な電圧を測定できるよう工夫されている製品もある。












