PAS(高圧気中負荷開閉器)
PAS(高圧気中負荷開閉器)は、日本国内の高圧受電設備において、電力会社との責任分界点に設置される保護装置のひとつである。正式名称を「Pole Air Switch」と呼び、主に電柱の最上部に設置されることから、電気管理の現場では「パス」という略称でも呼ばれる。
需要家が高圧受電を行う際、受電点に設ける開閉器であり、気中負荷開閉器とも呼ばれる。PASには、需要家内で発生した事故電流を切り離し、波及事故を防止するための機能が搭載されている。
通常、受変電設備内には真空遮断器など事故電流の切り離しが可能な安全装置が備わっているが、受電点から受変電設備間にある高圧ケーブルの絶縁破壊や機器の故障により大きな事故電流が流れた際は、受変電設備では保護ができないためPASが瞬時に反応して回路を切り離す。これにより、近隣一帯が停電する「波及事故」を防ぎ、被害を自社設備内だけに留める役割を果たす。
地絡事故が発生した場合、地絡電流そのものは大きな電流ではないため即時開放が可能だが、高圧短絡事故では電流値が極めて大きく、PASでは安全な開放ができない。これはPASが「負荷開閉器」と呼ばれる由来でもあるが、負荷状態で開閉することは可能でも、事故電流を「遮断」することはできない。
そのため、短絡による過大な電流が発生した場合には、開閉機構をロック状態とし、電力会社が停電したのを検出し、無電圧・無電流状態を見計らって開放するという動作が行われる。
この場合、電力会社の停電を伴うため波及事故と思われがちだが、電力会社は数分後に再送電を行い、事故が取り除かれていれば波及事故として取り扱わないという規定がある。PASに過電流ロック機構付きが採用されていれば、万が一の事故であっても電力系統から自動的に切り離されるため、波及事故リスクの低減を図ることができる。なお波及事故を引き起こした場合、地域への広範囲停電となり、数千万円単位の損害賠償に発展するケースもある。
PASの構造とSOG動作の仕組み
PASは「開閉器本体」と「過電流蓄勢トリップ形(SOG)制御装置」のセットで構成されているが、PASに搭載されている機能については下記の通りである。
- 開閉器本体は絶縁体として「空気」を利用し、回路の開閉を行う
- SOG制御装置は地絡事故(漏電)や短絡事故(ショート)を検知する「頭脳部」であり、事故電流を検出しPASを動作させる制御部である
- SO(過電流ロック)機能は、短絡事故などの巨大な電流が流れた際、PAS自体の遮断能力を超える損傷を防ぐため、一度電力会社側の遮断器が動作して無電圧状態になるのを待ってから、自動で開路する
- GR(地絡遮断)機能は、ケーブルの劣化などによる微弱な漏電を検知し、即座に回路を開放する
このように、事故電流を高精度で検出し安全に事故回路を切り離すことが可能であることから、需要家が受電点に用いるPASは「過電流ロック機能・蓄勢トリップ機能」等を搭載した機種を基本とすると良い。PASそのものは30年以上も以前から開発されており、架空配線による高圧受電を行う需要家の多くがPASを用いた受電を行っている。
負荷開閉器の詳細については断路器・負荷開閉器・遮断器の特性と選定方法を参照。












