車路管制設備とは
商業施設やオフィスビル、病院など、多くの人が車両で来訪する大規模駐車場における車両誘導・事故防止を行うための設備である。数百から数千台に至るような大規模駐車場で、ゲートや発券機、精算機、信号機といった多様な設備をイメージしがちであるが、数台しか駐車されない小規模な建物で、出庫時にランプを点灯させるようなシンプルな構成であっても、車路管制設備として分類される。
一般的に、駐車場にはカーブミラーや安全サインが設けられるが、単なる案内板といった安全対策に付加して、センサー技術や情報通信技術をシステム化し、現代の駐車場設備として広く普及している。
車路管制設備の基本機能
車路管制設備の目的は、人と車の安全確保、そして駐車場内の円滑な交通流を作ることにある。
満空情報表示と車両誘導
駐車場が満車か空車かを示す表示機である。満空情報をリアルタイム表示することができ、入庫後に駐車スペースがないというトラブルを未然に防ぐことができる。駐車場入口の看板に「満」「空」と表示することで、利用者がいち早く駐車場への入庫可否を判断できる。
場内の分岐点に満空表示を設置すれば、各階満空やエリア満空といった、部位単位での入庫可否も確認できる。複数階にわたる大規模駐車場などにあっては、入口のみの満空表示のみでは不足の場合が多く、ドライバーが入庫可能な車室を探して場内を走り回ることで、渋滞や接触事故のリスクが高まってしまう。そのため、各階満空やエリア満空の表示機を整備して、スムーズな入庫を促す。
空きスペースを探して場内を長時間走行する「うろつき」を避けることは、前述した渋滞の回避、事故の防止に加えてCO2排出の抑制効果も期待できる。
車両検出の機能
車両の進行方向や、入出庫を判断するための方法としてループコイルや赤外線センサーなどの手法が用いられる。
ループコイルによる車両検出
駐車場に何台の車両が入庫しているか、または何台が出庫したかを検出するためには、路面に車両検知センサーを設けて台数検出を行うのが一般的である。多くの場合、路面に埋設された「ループコイル」と呼ばれる特殊な車両検出電線が使用される。
車両がコイル上を通過する際に生じる磁界の変化を捉えることで、車両の存在や通過を検知するというシンプルな機構で、2列のループコイルを並べることで、どちらの方向から車両が通過したかを判断し、進行方向によって台数カウントのプラス、マイナス(または片方向のみ)のカウントを行う。耐久性が高く、天候の影響を受けにくく、コスト面も安価であるという利点があるため、路面に十分なスペースがある場合はループコイルを埋設するのが一般的である。
ループコイルは台数検出だけでなく、車両が歩道に差し掛かる部分や、交通量の多い交差点などで回転灯を回転させブザーを鳴らすといったことも可能である。駐車場から公道へ出庫する際、歩行者や走行中の一般車両に対して、警報灯(回転灯)やブザー音で注意喚起を行う「出庫警報システム」が代表的な例であり、これは数台しか駐車スペースのない小規模駐車場であっても頻繁に採用される。
赤外線センサー
車両の通過を検出する方法として、赤外線センサー方式がある。赤外線投光器から放出された赤外線を車両が遮ることで検知する「対向型」と、物体からの反射を捉える「反射型」がある。設置が比較的容易で、検知エリアをピンポイントに設定できるため、ゲートの開閉制御や特定の出入口での利用に適している。ただし、豪雨や霧などの悪天候時には検知精度が低下する可能性がある。
ループコイルと同様、赤外線も2本並列して設置し、赤外線が遮られた順番によって入庫なのか出庫なのかを判断可能である。ただし、ループコイルのように車両通過による磁界変化を動作原理としていないため、台車や自転車、風で飛ばされた新聞紙といったような「車両以外」の要因であっても動作してしまうおそれがある。そのため、設置場所によっては適切な動作を実現できないおそれがあるため注意を要する。
マイクロ波センサー
マイクロ波をセンサー本体から照射し、車両からの反射波を受信することで検知する方式である。空中設置型のため、路面工事が不要で設置が容易という大きなメリットがある。検知エリアの設定も比較的柔軟で、雨や風の影響を受けにくい。出庫時の車両検知や、高架下などの環境で特に有効である。
ループコイルや赤外線センサーと違い、1台で車両の方向確認が可能である。注意点として、直線的に車両が通過する部分での検出能力が高いが、切り返しや、車両の近接が著しく発生するような部分では誤検出が増えるとして、推奨されていない。
有料駐車場における諸設備
駐車場を有料とし課金を行うためには、ゲートによる車両出庫の制限や、券売機、精算機を用いた支払いを行う判定機能を必要とする。
ゲート(カーゲート、遮断機)
車両の入庫・出庫を物理的に制御する機器である。車両の通過を許可または阻止するために、昇降するバー(遮断棒)を備え、発券機からの駐車券受取ることで入庫ゲートを通過し、精算機での支払い完了で出庫ゲートを通過する。
支払い完了や、事前精算カードを挿入する、事前精算された車両のナンバープレートをカメラで読み込むといった、特定条件が満たされた場合にバーが上昇し、車両の通過を許可する。これにより、不正駐車や無断出庫を防ぐことが可能となる。
発券機(駐車券発行機、入庫機)
駐車場の入口ゲート部に設置され、駐車を開始する車両に対して駐車券を発行する機器である。ボタン操作などで磁気カードやQRコードの付与された駐車券を発行する。同時に、車両検知センサーと連携して入庫時刻を記録する。利用者が駐車場の利用開始をシステムに認識させるための最初の接点となる。
発行された駐車券は出庫時の精算に必要であり、紐づけられた駐車時間により料金が加算され、出庫時に所定の金額を支払うことでゲートの通過が可能となる。
出口精算機
駐車料金の支払いを行うための主要機器である。出口付近や、事前精算機のない駐車場では出口ゲート前などに設置される。駐車券を読み込ませて駐車時間に応じた料金を計算し、表示する。利用可能な支払い方法(現金、カード、電子マネーなど)で料金を収受し、支払い完了によりゲートを開放するという機能を持つ。
駐車料金の最終的な収受と、支払い完了情報をゲートシステムに送信し、出庫を許可する役割を担っている。事前精算機とは機能が違い、こちらは「出口精算機」と呼ばれる。
事前精算機
駐車場内の歩行者動線上の便利な場所で、事前に料金を走らうことができる仕組みである。エレベーターホールや店舗出口付近などに設置される。利用者が駐車スペースに戻る前に駐車料金の精算を済ませることができる。駐車券を挿入し、割引サービス券を適用させた後、現金やキャッシュレス決済(クレジットカード、電子マネーなど)で支払いを行う。
事前精算機の採用は、ゲート出口での精算による渋滞を緩和するという大きなメリットがある。事前精算済みの車両は、出口ゲートで駐車券を挿入する、またはナンバー認識システムと連携して自動的にバーが開くため、スムーズに出庫できる。
招き灯による入庫システム
招き灯は、車室ごとに「今この車室が空いているか」を示す小型ランプで、赤色は入庫済、緑色は空車であるということが、離れた場所であっても視認できるというシステムである。
車室には車両センサーを個々に設置し、車両が入庫した場合にランプの色を変化させるという単純な仕組みであり、緑色のランプが点灯していれば空き車室があるとして、ドライバーを効率的に空き車室へ誘導する。招き灯は天井取付のほか、青空駐車場のような場所でも採用できるように床埋め込みの製品も存在する。
これにより駐車場内の渋滞を緩和し、スムーズな駐車を実現することが可能となる。特に大規模な商業施設や立体駐車場で広く採用されているシステムであり、エリア満空表示と組み合わせて利用するなど、柔軟なシステムを構築可能である。












