電気設備設計とは | 設備工事の分類と関連法規

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建築電気設備の目的と概要

建築電気設備の目的は、建物居住者または利用者が、便利で安全に建物を利用するためにある。建築は空間だけでは成り立たず、給排水、空調換気、電気が適切に設置されることが必要である。建築物を人体に置き換え、建物は骨格であり、建築設備は身体を動かすための内臓や血管であると例えられる。それほどに設備は重要であり、建物の大きなウエイトを占めている。

照明がない、空調や換気がないような建物では、居住者や利用者は著しく不便な生活を強いられるばかりか、汚れた空気による体調の悪化、火災発生のおそれと隣り合わせである。利便性の向上を追求し、かつ安全性の高い建物を創るために、建築設備の適切な設計が求められる。

利便性や安全性を追求するには大きなコスト、投資が必要である。やみくもに高級な設備を導入するのは、設備の無駄となり、設置コストばかりが大きくなり不経済である。予算の許容する範囲内で、最善の設計を行うための資料や事例を収集し、企画設計から解体リサイクルまでのライフサイクルコストを判断する技術力が設計者に必要である。

保護リレーと図面の写真

設計業務と設計図

電気設備設計は、法規やコストが許容される範囲内で、ライフサイクルコスト等多方面からの指標をもとに、創造を行う業務である。設計業務には設計図書を作成することが含まれているが、発注者の要求を満足した図面を作成するだけでなく、施工者や運営管理を行う者に対して、意図が伝わるように設計図を作成することが求められる。

設計図だけで表現できない発注者の与件は、設計概要書・比較資料、計算書、行政議事録などを整理し、設計図と共にまとめることでより設計の意図を伝えられ、電気設備の完成度を高められる。一般的な設計手法と比べて不合理と思われる部分があっても、比較書や行政議事録をもとに採用不可であった経緯を明確にできる。

建築電気設備の分類

電気設備というカテゴリーには、多数の工事種類が含まれている。

受変電設備

受変電設備を示す。近年はパッケージ化されたキュービクル式の受変電設備が主流で、これを構成する単線結線図、外形図が含まれる。工場や研究所では、改修工事のし易いオープン型の受変電設備が一般的であるが、現在では安全性の高いキュービクル式が大勢を占めている。

オープン変電所を構築するには専門技術を持つ施工技術者が必要であり、多くがキュービクル式変電所を占めている現状では、施工者を集めることが困難となりつつある。

発電設備

ディーゼルやガスタービンを動力源とする発電機を示す。非建築設備分野では、屋内消火栓やスプリンクラーといった防災設備への電源供給用として、非常用発電機の設置が求められる。

電力の平準化や、予備電源用として使用する発電機は「常用発電機」として区分されている。常用発電機は非常用発電機よりも運転時間が長く、負荷変動も激しいため耐久性が高いという特徴がある。非常用発電機は火災や停電の非常用に用いるものなので、常用発電機のような過酷な運転には適していない。

中央監視設備

大規模施設では、照明の点灯、ポンプやファンのオンオフなど多様なビル設備がオートメーションで動作しているため、これを個々に把握することは困難である。大規模施設では、中央監視設備で動作を監視、制御することで、省エネルギーかつ安定した設備運用が可能である。

中央監視設備のPC本体、中継盤、リモート盤、UPSの装置及び、配管配線が含まれる。PLCなど汎用インターフェースを用いる、BACnetと呼ばれる統一規格を採用する、コスト低減のためメーカー専用伝送規格を用いるなど、設計者による選択の幅は広く、コストへの影響も大きいため比較的難しい分野ともいえる。

幹線設備

キュービクルなど、配電盤から分電盤・制御盤までの太い電力ケーブルの部分を示す。幹線ケーブルにはCVケーブルやCVTケーブルが良く使われ、電気工事の中でも大きなコストウエイトを占める設備項目である。各階の平面図と、系統図が含まれる。

負荷設備の容量を積み上げ、供給する電流に応じたケーブルサイズで選定するが、配電盤から各所分電盤までの距離、ケーブルが敷設される場所の周囲温度、ケーブルラックなのか電線管収容なのか、といった要素から、許容電流と電圧降下を勘案してケーブルサイズを確定する。

ケーブルラックに乗せる場合で、一定の離隔を確保していればケーブルに規定された許容電流をそのまま使えるが、ケーブル間に離隔なく接する場合や段積みにする場合、許容電流が著しく小さくなるため注意が必要である。

環境配慮のため、PVCを含むケーブルではなく、エコケーブルを採用する物件も多くなる。公共建築物ではエコケーブルの採用が実質的な義務とされている。

動力設備

動力制御盤、動力コンセントなど動力電源で動作する機器類及び、配管配線を示す。空調機や換気ファンなど、大型の機械設備は単相電源では動作できないため、動力電源を供給する。3φ200Vまたは400Vが主流である。各階平面図によって表現する。

動力機器は故障によって発生する被害が大きいため、警報盤を設けて施設管理者に故障を知らせる必要がある。小規模施設では中央監視設備などが導入されていないことが多いため、警報だけを簡易に表示できる警報盤を設ける。警報盤は動力設備に含むのが一般的である。

電灯コンセント設備

分電盤、照明器具、コンセントなど、単相電源で動作する機器及び、配管配線を示す。日本国内の単相配電は200V及び100Vが主流である。動力設備同様、各階平面図によって表現する。

電灯設備には照明器具が含まれるので、照明器具姿図と称して、採用した照明器具の姿図と機器仕様、ランプ仕様、安定器や取付金物の特記事項を表現する。

拡声設備

放送設備及び、その配管配線を示す。アンプや電源ユニットを収容するラック、プログラムタイマー、チャイム、CDやDVDの再生装置、マイクやスピーカーなど、施設の放送に関わる設備一式が含まれるが、BGMを行うための設備とは区分されるのが通常である。

消防法に規定された非常放送設備が必要な場合、拡声設備に含めて記載する場合が多く「非常・業務兼用放送設備」として設計するのが一般的である。

映像音響設備

プロジェクター、スクリーン、スピーカーなど、会議や講演、イベントステージなどで使用する映像や音響設備及びその配管配線を示す。前述の「拡声設備」とは区別され、より局所的な設備として設計する。

音響設備を設計する場合、音質を優先するため、ハイインピーダンスではなくローインピーダンスのスピーカーを用いるなど、音質を重視した計画が求められる。室内の音の反響などを考慮し、聴きやすい環境を整えることも重要である。

インターホン設備

構内のみに限定され、敷地外に及ばない通話用設備であるインターホンと、その配管配線を示す。夜間受付、設備の保守管理用、ハートビル法に準じた身障者呼出用など、構内で通話するための設備に限定され、内線電話とは区別される。

大規模建築物では、伝送用のケーブル到達距離が不足する。メタルケーブルを使用する場合、音声信号では200m程度、カメラ画像では100m程度が伝送限界となるため、超長距離を伝送したい場合、LANや光ファイバーに変換して伝送するという方法が採用され、これはIPインターホンとして普及している。

通信設備(電話交換・構内情報)

電話設備には、構内情報通信網、電話、LAN等のネットワークが含まれるが、建築電気設備の分野ではその多くが専門業者工事となる設備項目である。電話配線はNTTに代表される通信事業者が配線を行うことも多く、配線ルートの確保のみを本工事とする場合が多々ある。

通信設備も同様で、施設所有者が独自に通信網を整備し、設計時は配線ルートの確保や電源供給のみを行う事が多く、施工調整がその大半を占めることもある。

テレビ共聴設備

テレビアンテナ、分配器、混合器、ブースター、直列ユニット及び、その配管配線を示す。配線には同軸ケーブルが通常使用されている。テレビ共聴設備を設計する場合、電波を発信している電波塔の位置を調査し、その距離に応じた電波の強度を計算する。

受信した電波をそのままテレビに接続できれば良いが、大規模建築物ではアウトレット設置場所とアンテナの位置が遠くなるため、電波をケーブルで伝送していくうちにと減衰していく。同軸ケーブルを太いサイズとしたり、ブースターで繰り返し電解強度を高めるなどして、一定品質を保ったまま末端のアウトレットまで電波を伝送する。

自動火災報知設備

火災を早期に発見し、避難を促すための設備で、受信機、感知器、非常ベル、発信機及びその配管配線を示す。自動火災報知設備の設置基準は消防法によって定められており、建物規模に応じて設計する。

所轄の消防の指導や、火災予防条例によって特別な基準が設けられている場合がある。消防法の法文だけではなく、地域ごとの特殊条件を確認し、設計に反映させる必要がある。

ITV(監視カメラ)設備

防犯上必要な場所に監視カメラ、録画・再生に必要なレコーダー及び配管配線を示す。監視カメラはセキュリティ上重要な建物エントランス、エレベーター内、駐車場や駐輪場など盗難のおそれのある部分に重点的に設置される。

カメラの台数がそのまま録画時間や主装置の規模に影響し、コストが大幅に変動する。無駄のない計画が求められる。

ITV監視モニターは管理室や守衛室、防災センターに配置される。来訪者に監視モニター画面を見られないよう配置するよう注意しなければならない。

入退館設備

カードリーダーやカードキーを用いてセキュリティレベルを設定し、重要室への入室制御を掛けるシステム及び、その配管配線を示す。近年ではカードキーを用いず、指紋など生体認証を用いたシステムも開発され実用化している。

扉の施錠を電気信号で制御するため、電気錠との連携が不可欠である。電気錠は通常建築工事で設置されるものなので、適切に制御できるよう調整が必要である。モーター錠など、物理的に錠前を動作させるような電気錠では、特別な電源や制御盤が必要となることもあり注意が必要である。

駐車管制設備

駐車場を運用するためのゲート、ループコイルのセンサー、台数監視装置、発券機、料金機等及び、その配管配線を示す。有料駐車場か、無料駐車場かによって必要設備が大きく変化する。

公道に面する部分や交差点では、出庫警報灯や回転表示灯によって人や車両同士の接触を防止するための設備を計画する。駐車場の効率の良い計画のため、ブロック満車や各階満車表示管理を計画することもある。

避雷設備(雷保護設備)

建築物を雷から保護するための設備で、避雷突針、導体などが含まれる。建築基準法では、高さ20m以上の建築物に避雷設備を設けるよう規定されており、その技術基準はJISによって定められている。

避雷設備のJISには新旧二種類あり、そのどちらを採用しても良い。新旧を混在させた計画は禁止されている。

危険物取扱所を計画する場合、避雷設備の設置が義務付けられることがあるため、消防法や火災予防条例に準じた対応が必要となる。危険物の指定数量10倍を保管するような施設では設置を求められる。

電気設備設計に関連する法規

電気設備は、その設計・施工・維持管理が法令によって定められている。設計を行う場合、国が定めた法規の枠内で、その個性や特徴を活かす。

電気事業法

電気事業法は「電気工作物の工事・維持・運用を規制することで、安全確保、電気事業の発達を図るもの」という位置づけであり、電気工作物の種類を定義し、その規模や種類に応じた規制を行っている。600V以下で使用する構内用電気設備である「一般用電気工作物」、高圧や特別高圧で受電する「自家用電気工作物」、電気事業で使用する「事業用電気工作物」に分類している。

電気工作物のうち、自家用電気工作物と事業用電気工作物は、電気主任技術者が作成した保安規程に基づき、電気工作物の保安監督が行われる。保安規程は電気事業法に基づいて、電気工作物の維持管理やその体制などが明記される。

電気工事士法

電気工事法は、電気工事による欠陥による災害を防止するための法律で、電気工事士免状の種類と作業できる範囲を定めている。一般用電気工作物は第二種電気工事士、第一種電気工事士でなければ工事を行えない。500kW未満の自家用電気工作物は、第一種電気工事士でなければ電気工事を行えない。

電気用品安全法

電気用品安全法は、電気用品そのものの不良によって感電等の事故が発生しないよう、安全性を確保するための法律である。電気用品の技術基準に適合していることを表示しなければ販売することを禁止され、この表示をPSEマークと呼んでいる。

海外で製造された照明器具や電気機器を国内で使用する場合、電気用品安全法に準拠した性能であることを確認し、適合性検査を受け承認される必要がある。この手続のため、海外の照明器具等を使用する場合に時間を要す。

建築基準法

建築基準法では建築物だけでなく、建築設備もその規制に含んでいる。火災時の炎症の原因としてケーブルがあり、消火や避難のために使用する消火ポンプや排煙機は、電気を供給しなければ動作しないため、これら設備を健全に動作させるための規制がある。避雷設備など落雷による建築物の破損の防止を図ることも、建築基準法で規定されている。

さらに、一定規模以上の建築物を新築・増築する場合、建築基準法に基づいた確認申請手続きを必要とする。この申請では、市役所や民間の確認機関が電気設備の確認を行い、所轄消防が消防法に基づいた設備の同意を行う。

建築基準法では「非常用照明」「自動火災報知設備による防火戸連動」「排煙連動」「避雷設備」「予備電源」「防火区画貫通処理」といった、防災に関する設備の確認を行う。消防法では「非常電源」「非常警報」「誘導灯」「自動火災報知設備」を主に確認する。特定の建築物では、排煙設備を「消防排煙」として確認される。

これら必要な図面を整備し、確認申請の届出を行うことは、電気設備設計者の一つの業務となる。

建設業法

建設業を営む場合、一定規模以上の工事を請け負う場合、建設工事の種類ごとに定められた区分に応じた許可が必要となる。電気工事もその一つとされており、発電・変電・送配電・構内電気設備工事が含まれる。発注者から直接工事を請け負う場合で、3,000万円以上を下請契約する場合、監理技術者を専任するという規制がある。

消防法

消防法は、火災予防、警戒、鎮圧(消火)することで被害を軽減するための法律である。電気設備においては火災を警戒するための設備が主要で、自動火災報知設備、誘導灯、非常コンセントの基準が定められている。排煙機や消火ポンプを停電時に動作させるため、非常用発電機や蓄電池の非常電源も、消防法によって規制される。

消防法ではさらに、ガソリンや軽油、重油といった危険物を使用、保管、販売等をする危険物取扱所の規制を含んでおり、一般の建築物よりも防災に関する規制が厳しくなる。これら危険物施設は、落雷による火災防止、火災時の消火方法などが一般建築物と同等では対処できないため、数多くの規制対象となる。

 
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