電気設備の知識と技術 > 電気設備設計の基礎知識 > プルボックスの材質と選定
プルボックスは、配線を収容した電線管の接続部に設けることで、電線やケーブルを分岐させたり、敷設を容易にするために設置する接続箱である。電線を交差させたり曲げを行う場合には、プルボックスを設けることで、配線工事が容易になる。
電気設備技術基準により「電線管内で電線を接続してはならない」ことが規定されていねため、電線を延長したり、分岐する場合には電線の接続場所に接続用のボックスを設けなければならない。電線管内で電線を接続することは禁止されており、アウトレットボックスやプルボックスを設置し、その内部で電線を接続している。
プルボックスは、その内部に収容する電線の本数とサイズによって大小が決定される。プルボックスに接続する電線管の本数とサイズを数え、縦横のサイズを計算しなければならない。プルボックスのサイズの選定においては、今回工事分のみのサイズとするか、将来増設や引き換えを想定したサイズとするかを設計時に確認しておくと良い。
プルボックスは、天井裏、EPSのシャフト内など場所を限定せずに採用される。屋外キュービクルから屋内に電線を導入する部分などは、プルボックスに止水処理を施して、建物内部に水が入らないように配慮する。
プルボックスを屋内で使用するのであれば大きな問題が発生することは少ないが、屋外で使用する場合は、プルボックス本体が直射日光や雨水、塩分などによって劣化するおそれがあるため、耐候性の高い素材で製作すると良い。水が掛かる場所であれば、プルボックスの下部に水抜き穴を設けて、内部に水が滞留しないよう配慮しなければならない。
プルボックスを屋内で使用する場合は、特別な耐候性を検討する必要はなく、通常は錆止め程度の処理で問題が発生することはない。溶融亜鉛メッキやステンレスを用いることもあるが、場所に応じた素材選定をすれば良い。ただし、落下を防止するための支持固定には、特に注意を払う必要がある。
屋内用プルボックスは鋼板で製作し、表面にさび止め塗装を行って劣化を防ぐ。硬質ビニル製のプルボックスであれば、経年劣化による損傷の被害が抑えられる。ただし、物理的な衝撃には弱い。
鋼板製プルボックスの場合、200mmの立方体でも3kg程度の重さがあり、500mmや800mmにもなると数十kgの重さになる。自重による落下を防止するため、スラブなど強固な部分から支持するよう計画し、ALCといった弱い建材に直接アンカーで固定するような施工では不安が残る。
ALCなど、比較的強度の小さな建材にプルボックスを支持すると、自重によってボルトが外れて落下したり、地震時に抜けたりするおそれがある。支持点を増やして壁を挟み込むようにして固定はたり、コンクリートの床にアンカーボルトを固定し架台を設けるなど、適切な補強を施す必要がある。
電線の接続点は、屋内だけでなく屋外にも設ける可能性がある。接続点にはボックスが必要となるが、屋外の場合、ボックス内部への雨水の侵入や、塩害による腐食について対策しなければならない。外部配線を建物内に導入する場合などもプルボックスが使われる。
雨掛りになる部分にプルボックスを設置する場合、溶融亜鉛メッキか、ステンレス製の製品を選定する。硬質ビニル製でも良いが、ビニル材は直射日光に弱く、経年劣化によりひび割れが発生して内部に水が入ってしまうため、直射日光が常時あたる場所ではビニル製の材料を避け、ステンレスや溶融亜鉛メッキなどを利用すると良い。
どのような仕様のプルボックスを選定した場合でも、雨にあたる場所ではプルボックス内に水が入るおそれがあるため、下部に水抜き孔を設け、内部に水が滞留しないように加工すべきである。
ステンレス製プルボックスは、屋外用プルボックスとして数多く採用されている。ステンレスは、クロム・ニッケルを含む合金であり、表面に酸化皮膜を形成し保護膜として働くため、耐食性に優れるという特徴がある。
発錆を防ぐためのメッキ処理が不要で、強度が高いという利点があるが、一般鋼にメッキを施したプルボックスよりも高価であることに注意が必要である。
標準仕様ではSUS304が選定され、高い耐候性・耐久性が必要であればSUS316が使用される。意匠性を優先する場所に、やむを得ずプルボックスを配置する必要がある場合、ステンレス表面を光沢ある鏡面仕上げとしたり、髪の毛状の研磨目を付けたヘアライン仕上などが適している。
ステンレスを選定すれば、錆が発生しないと思われがちであるが、他の鋼材と接触することでもらい錆を引き起こすおそれが残る。ステンレス本体は電位が高いため、鉄材と長期間接触すると鉄側の錆を促進するので、異種金属の接触はできるだけ避けると良い。もらい錆を長期間放置すると、ステンレス本体まで錆が侵食する。
ステンレスは化学的な腐食に対して弱く、塩酸や硫酸など、酸類による腐食も考えられるので、有害ガスが発錆する環境にステンレス製プルボックスを設置することは厳禁である。
プルボックスの敷設場所が沿岸に近い場合、プルボックスに塩害対策を施す必要がある。考え方は分電盤や配管類と同様で、ステンレス製や溶融亜鉛メッキ製、樹脂製プルボックスを選定したり、プルボックス表面に耐塩アクリル系塗装をすることなどが考えられる。
塩害対策をする場合、軒下に設置するより雨ざらしにする方が錆びにくくなる。雨が当たることで表面の塩分が洗い流されるため、長期間に渡って同じ場所に腐食原因が留まらないようになる、というのがその理由である。雨が当たらない軒下などは、付着した塩分が長期間に渡って同じ場所に滞留するため、腐食の進行が非常に早くなる。
塗装は恒久的な対策にはならない。鋼板製プルボックスに耐塩害塗装をする場合などは、数年で塗装が劣化し塗り直しが必要になるため、維持管理を適切に行わなければ、塗装が剥がれた部分から腐食が進行する。溶融亜鉛メッキやステンレスのプルボックスや、樹脂製のプルボックスを選定すれば、恒久的な対策となり得る。ただし、キズや衝撃を受けた場合にはその部分から腐食が進行するため、定期的な目視点検を行うなどして、健全性を確認すると良い。
一般民間用プルボックスと違い、国土交通省仕様のプルボックスは、その構造に多くの規定がある。
国土交通省仕様の場合、下記の仕様を全て満足する。通常のプルボックス設計で概ね仕様を満足するが、プルボックスに接地端子用の台座を設けるといった規定があるため、注意を要する。プルボックスを購入する場合に「国土交通省仕様」という製品を選定すると良い。
屋外にプルボックスを設置する場合、屋内使用よりも過酷な環境となるため、下記の仕様に準拠しなければならない。
プルボックスのサイズを決定するには、接続する電線の本数とサイズを把握しなければならない。下記、プルボックスのサイズ選定計算を解説する。
51mmの電線管を4本、2段配列でプルボックスに直角接続し、内部にケーブルを入線する場合を考える。「ケーブルを直角接続する場合」に数値を当てはめる。
663(600mm×600mm×300mm)以上のプルボックスサイズの選定となる。
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