電気設備の知識と技術 > 電気設備設計の基礎知識 > アウトレットボックス
アウトレットボックスは、電気工事におけるケーブルや電線の配線工事で、配線の分岐、接続に用いるために用いる。本体は鋼製またはプラスチック製となっており、防火区画に設ける場合は金属製の指定があるなど、選定に注意を要する。
電線の引き出し、コンセントやスイッチの取付、電話配線の取り出し、照明器具の取付など、配線の接続以外にも多用されており、電気設備工事の材料として数多く使用されている。
アウトレットボックスはその利用頻度から、第二種電気工事士試験で使用する材料のひとつでもあり、二次試験で実施される実技試験においては、金属電線管やPF管を接続する技術が求められる。
アウトレットボックスには、16~28mmの小径の電線管を接続するのが一般的であり、VVFケーブルなどの分岐や接続点として使用される。太径の幹線などは収容できない。
アウトレットボックスと電線管を接続するための入線口を「ノックアウト」と呼ぶ。新品のアウトレットボックスは、全てのノックアウトが閉塞状態となっているため、接続する電線管のサイズに適合したノックアウトを打ち抜いて使用する。
接続しない部分のノックアウトを打ち抜いてしまうと、内部にほこり、虫などが侵入する原因となるため、撃ち抜かないよう注意する。
ノックアウトには電線管を接続せず、直接電線を挿入することもできるが、電線を挿入する場合は「ブッシング」と呼ばれるゴムをノックアウトに取り付ける。ノックアウトの開口端部は鋭利となっているため、電線の被覆に傷がつかないよう、ゴムによって保護すべきである。
低圧電線路にアウトレットボックスを使用する場合、鋼製のアウトレットボックスには、接続する金属電線管とアウトレットボックスに対して接地工事を施さなければならない。
一般的に、照明やコンセントの回路として使用されるため、ほとんどが「D種接地工事」を施すことになる。
金属管の端部とアウトレットボックスは、相互に接続することで電気的導通が図ることができると思われがちだが、電気抵抗が大きく十分な電気的接続を図れないため、接地用のIV線を使用してボンディングを行う。
金属管に接地線を接続するためには、ラジアスクランプと呼ばれる接地金具を使用する。ラジアスクランプに接地線を挟み込み、金属管に巻きつけ、ペンチで挟み込んで折り曲げることで、接地線と電線管の接触面積が大きくなり十分な電気的接続を得られる。
ラジアスクランプ本体は、伝導性が良く劣化しにくい「無酸素銅」が一般的に用いられる。詳細はラジアスクランプを参照。
ラジアスクランプには突起部があり、塗装したペンキが硬化する以前であれば塗装部を貫通して電気的接続を得られるが、電線管に塗装が完了し、完全に硬化した後では突起部で塗装を貫通できず、電気的導通を得られないことがある。
配線工事に使用するボックスには、アウトレットボックスのほかに「スイッチボックス」「コンクリートボックス」「プルボックス」がある。
スイッチやコンセントを取り付ける場合は、アウトレットボックスではなく、連用枠を取り付けコンセントやスイッチを取り付けられる「スイッチボックス」が使用される。連用取付枠がネジ止めできるような突起が設けられており、露出・埋込など多様な施工方法に対応した製品がある。アウトレットボックスと使用目的により明確に区分される。
コンクリートボックスは、アウトレットボックスのように配線取り出しなど中継用として使用するボックス類であるが、コンクリートに直接打ち込みを行う場合に使用する。照明器具の取付や放送用スピーカー、自動火災報知設備における各種感知器などを取り付けるための位置ボックスとして使用する。
ボックスには固定用の耳状のツメがあり、これを型枠に打ち付けて固定し、コンクリートを流し込み一体化させる。底板は取り外しができる構造となる。材質として樹脂製と鋼製があり、堅牢性が必要な場所においては鋼製を採用すると良い。
プルボックスは、電線の分岐や接続に使用する鋼製・樹脂製のボックスであるが、幹線や、多数の電線管を接続する部分で使用され、大型のものでは1m近い立方体の大きさのボックスを使用する。
配線こう長が長く、電線敷設が困難な場所においてはプルボックスを多数配置し、電線敷設の難易度を緩和する目的でも使用される。高圧ケーブルの敷設においては、中継や接続に大きなスペースが必要となり、ケーブルも太く曲がりにくくなるため、幹線を引き回すための拠点としてプルボックスを使用する。
プルボックスは露出工事を行う機会が多く、その存在感が大きくなりがちのため、意匠性を考慮した選択を行うのが望まれる。ステンレスヘアライン仕上げや鏡面仕上げなど、建築材料と同様な表面仕上げを行うのが可能である。
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