電圧降下の計算と電圧変動 | 瞬時電圧低下との違い

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電圧とは

電圧とは、電位・電位差を意味しており、基準点となる電位との差を示しているが、電線で長距離敷設をするなどを理由に、電圧は末端に近づくほど降下する。

電圧は、回路に電流を流そうとする力の大きさであり、同じ電力を必要とする場合、電圧が高いほど電流が小さくなることから、発熱量が小さくなる。電流が小さくなるほど熱に変換される量が少なくなり、大きな電力であっても損失は小さくなる。

電圧は水圧に例えて説明されることが多い。水圧が高いほど多くの水を流せるように、電圧が高いほど多くの電力を安定して遠くまで送ることが可能である。

高い圧力の水を送る場合、水を送る管の強度が高くなければ亀裂による漏水が発生してしまう。同様に、電線に印加する電圧が高過ぎると、電線の絶縁が破壊されて漏電が発生する「パンク状態」になってしまう。送電する電圧に応じて適正な電線を選定しなければ事故につながる。

さらに、細すぎる電線で長すぎる距離を敷設すると、電線そのものの抵抗による電圧低下が著しくなり、これを「電圧降下」という。幹線や配線を計画する設計者は、電圧降下が適正な範囲内に納まるよう計画しなければならない。

電柱が連立した屋外の写真

電圧降下とは

電圧降下とは、電圧を印加したケーブルや電線において、末端になるに従って電圧が低くなっていく現象で、変圧器二次側から末端までの間など、電線の両端に発生する電位差の値である。

電線やケーブルは銅導体を用いているため電気抵抗はほとんどないと考えられがちであるが、長距離を敷設することで電気抵抗がどんどん大きくなり、わずかな電気抵抗も大きなものとなる。電圧を印加し電流が流れることでケーブル本体に発熱が生じ、電線全体が熱を発生させる負荷と同様になり、電圧が低下することになる。

電流と抵抗による発熱の関係式

電線は銅やアルミニウムを主に使用しているが、導体といわれるこれら金属にもわずかに電気抵抗が存在している。この電線が持つ電気抵抗によりジュール損が発生し、電流を流すことで導体が加熱され熱くなる。

発生する熱量は、P = I^2×R の計算に基づいて発生するので、電流値が大きいほど、電気抵抗が大きいほど発熱量が大きくなる。 電線に大電流を流した場合、導体の断面積が小さく電気抵抗が大きかった場合、発熱により被服を溶かしてしまうほど加熱されることもある。

電線が太ければ太いほど電気抵抗値が小さくなるため、電圧降下を小さく抑えられる。大電流を流しても発熱量が小さくなるため、大規模設備などへの電源供給が可能である。

逆に、大電流を流す電線において細すぎる電線を使用すると、電線の電気抵抗が大きくなり熱が発生する。高温になった電線はより電圧降下が大きくなり、電線の異常発熱に被覆が溶ける、電線が燃えるといった事故も発生する。

電線に傷が付いていたり、長期間の使用により電線が劣化していた場合、端子台や遮断器の接続緩みなどがあった場合、部分的に電気的抵抗値が高くなり、異常発熱の発生や電圧降下の増大が発生する。

どんな電線でも電気抵抗は存在する。電線の電気抵抗をゼロにするためには低温による超伝導を考えるしかないが、電気設備関連の分野では実用化されていない。

電圧降下による不具合の事例

変圧器から電線を敷設することにより、電圧降下は必ず発生するものであり、これをゼロにすることは不可能である。しかし、本来想定していた明るさや加熱出力といった性能が発揮できないという不具合を発生させてはならないため、著しい電圧降下にならないよう幹線設計することが重要である。

これは、ケーブルサイズを太くすることで解決するのが基本手法であるが、ケーブルが過剰に太径であることはコスト面で不利となり経済性に劣る。設計にあっては高い品質を低コストで実現するのが原則であり、過剰コストを発生させるのは避けなければならない。ここでは電圧降下に関連する規制や基準、設計方法について紹介する。

電圧降下を考慮した幹線設計

幹線設計をする場合、電圧降下は許容電流と同様に重要な項目である。電圧降下を考慮した幹線計画をしないと、所定の電圧が確保できないために、送電先の負荷に悪影響を及ぼす。ファン類では風量低下、蛍光灯では光束低下や寿命低下などを引き起こす。通信機器や電子機器は電圧変動に弱く、機能の停止などを引き起こす。

電圧降下を防止するには、電力会社の電源品質の向上も一つの要素であるが、構内の配線計画に大きく影響される。電気供給元と供給先の距離、負荷電流などを十分確認し、ケーブルサイズを適正なサイズにすれば、長距離敷設を行なっても著しい電圧降下は発生しない。

電圧降下計算の方法(簡略法)

ケーブルのこう長が長くなると、受電点と比べて末端の電圧が低くなるのはこれまで説明した通りである。これは電線の抵抗値により、ケーブルに流れる電流が熱になることに関係する。電線が細いほど抵抗値が大きくなり、電流が熱に変化し、電圧降下が大きくなっていく。

電圧を印加する電線の「抵抗」や「リアクタンス」を使用した計算は、電線種別が多くなると非常に煩雑であるため、下記の簡略式を使用した計算方法で電圧降下を求めることが可能である。屋内配線など、電線こう長が短く、電線が細い場合などで表皮効果や近接効果による導体抵抗の増加や、リアクタンス分を無視しても差し支えない場合に採用する。

「単相3線式の幹線としてキュービクルから分電盤まで CVTケーブル150sqを200m敷設し、負荷電流250Aが流れる」という条件で計算する。

キュービクルから分電盤の間において、供給電圧が 5.93V 低下していることが判明した。

電圧降下を考慮した幹線設計(インピーダンス法)

電線の電圧降下には、インピーダンス法と呼ばれる計算方法がある。電線こう長が長く、大電流を取り扱う場合の計算は、インピーダンスを用いた計算式で算出することが望ましいとされており、距離単位は[km]となる。

電圧を印加するケーブルや電線の抵抗値とインピーダンスを用いることで、より詳細な電圧降下値を算出できる。

電圧降下は下記の計算式で示される。

記号が示す数値と単位は、下記の通りである。

同じく、単相3線式の幹線としてキュービクルから分電盤まで CVTケーブル150sqを200m敷設し、負荷電流250Aが流れる」という条件で、インピーダンス法によって計算する。インピーダンス法は電源周波数や力率を考慮しなければならないため、周波数50Hz、力率 cosθ=0.95(95%)と仮定する。cosθからsinθに変換する場合、 sinθ = √(1 - cos^2θ) により、0.312 となる。

使用電線のインピーダンスや抵抗値は、社団法人日本電線工業会「技資第103号A 低圧電線・ケーブルのインピーダンス」を参照する。「架橋ポリエチレン絶縁ケーブル[CV,CE/F」(周波数50Hz)によると「単心撚り合わせ形」150m㎡のケーブルの抵抗値とリアクタンスはそれぞれ 0.159[Ω]、0.0846[Ω]と記載されている。

これを代入すると、下記となる。

インピーダンス法による計算は、簡略式よりも厳しい結果となる。比較的距離が短い屋内配線では、簡略計算を実施しても良いことになっているため、どちらを採用するか設計者が総合的に判断すれば良い。

下記は、内線規程で定められている、距離に応じて許容されている電圧降下の一覧である。

配線の敷設距離が長いほど、許容できる電圧降下の値が緩和されるという特徴がある。電力会社の変圧器を利用する場合は、電圧降下を調整できないことから厳しい数値となっているが、構内に変圧器を設置する場合は自ら変圧器の電圧タップ調整ができるなど、需要家内で電圧を維持するための調節が可能なため、電圧降下の許容値が緩和されている。

さらに、電線こう長が120m、200mを基準として緩和されており、これは経済性を理由としたものである。実際に電圧が降下しすぎてしまうと動作不良を引き起こす可能性があるため、超長距離を敷設する必要がある系統で、電圧低下してはならない生産機器等がある場合には、基準値だけを判断基準としないことが望まれる。

内線規程における許容電圧降下

電源供給方式 こう長 許容電圧降下
幹線 分岐
変電設備なし 60m以下 2%以下 2%以下
120m以下 4%以下 4%以下
200m以下 5%以下 5%以下
200m超過 6%以下 6%以下
変電設備あり 60m以下 3%以下 3%以下
120m以下 5%以下 5%以下
200m以下 6%以下 6%以下
200m超過 7%以下 7%以下

許容電圧降下の表から、200mを超過した幹線こう長で、構内に変電設備がある場合は7%、低圧引込の場合は6%以内の電圧降下であれば問題ないと判断できる。計算構内変電設備ありで計算すると、

105V×0.07 = 7.35V となる。キュービクルから分電盤までの間の電圧降下は、許容できる電圧降下範囲から、実際の電圧降下値を引き、 7.35V-5.93V = 1.42V となる。

この計算では、キュービクルから分電盤に至るまでのケーブルにおける電圧降下を算出している。しかし分電盤は負荷の末端ではなく、分電盤の先にある電気機器まで電線を敷設して接続される。分電盤からVVFケーブルの細い配線が接続されるため、この範囲に大きな電流が流れると、比例して電圧降下も大きくなる。

VVFケーブル2.0-2Cを分電盤から20m敷設し、10Aの電流を流した場合を考えてみる。VVF2.0-2Cの断面積は、導体径2.0mmであり 1.0×1.0×3.14 = 3.14[m㎡] である。

キュービクルから分電盤までの電圧降下を適正に保ったとしても、分電盤より先に対して電圧降下の余裕がないと、末端負荷に対して適正電圧を供給できないおそれがある。場合、キュービクルから分電盤までのケーブルサイズを大きくするか、分電盤から先の配線をVVFケーブルからCVケーブルに変更するなどして、電圧降下を低減させる設計とする。

電圧降下を抑えるためには、負荷電流を小さくするか、ケーブルのサイズアップを行う。末端負荷までの配線においてケーブルサイズを太くするのは避け、二次側配線はVVFケーブルが無理なく使用できる計画とする。外構照明など遠距離を敷設しなければならない場合、水没のおそれが高くなるため、耐候性の高いCVケーブルを用いるのが一般的である。

電圧降下が大きくなり、定格よりも低い電圧で負荷に電源供給されている場合、各種の不具合が発生する。パソコンの電子機器では電源維持ができなくなり、突然の再起動が発生することも考えられる。蛍光灯などは寿命の低下や、光束の低下を引き起こす。

計算の結果、電圧降下が大きくなることが判明した場合、幹線のケーブルサイズを大きくするか、分電盤の位置を変えるなど、電圧降下を抑えるための再設計を行う。

末端負荷までの電圧降下を考慮した幹線計算

分電盤一次側の電圧降下を低減させるために、幹線サイズを1ランクアップさせ、CVT200[sq]で計算する。

計算内容は、前述した「単相3線式の幹線としてキュービクルから分電盤まで CVTケーブル150sqを200m敷設し、負荷電流250Aが流れる」という条件について、ケーブルサイズを150sqから200sqに変更した場合とする。

分電盤から許容できる電圧降下も緩和される。

結果、分電盤から末端負荷までにおいて2.9Vの電圧降下となった。3V程度の電圧降下の余裕を持たせておけば、分電盤二次側で電圧が不足することはない。電流値が低ければ、長距離配線敷設も可能である。この幹線系統の場合、幹線サイズを150sqではなく200sqとするのが、計画的に無理がないことが判明した。

線間電圧と大地間電圧

三相3線式、単相2線式の場合対象となる電圧降下は線間で計算するが、単相3線式や三相4線式の場合は大地間である。単相3線式配電方式の場合、使用できる電圧は210Vとなっているが、電圧降下の計算は105Vを基準として算出する。

高圧電路の電圧降下

低圧の電路に限らず、高圧電路でも電圧降下が発生する。しかし、構内の高圧幹線であれば長くても数百メートル程度であり、電圧が大きく降下することはない。

高圧電路は3kVや6kVなど、低圧電路の20~30倍まで電圧を高く設定しているため、ケーブルに流れる電流が極めて小さく、電圧降下がほとんど発生しない。

高圧電路における幹線ケーブル選定は、電圧降下を考慮する必要はなく、許容電流と遮断容量でケーブルサイズを選定する。高圧ケーブルの短絡電流については短絡電流の遮断・保護を参照。

大規模・大電流幹線の電圧降下計算

集合住宅や高層事務所建築など、電線こう長が長く、大電流が流れる幹線を計画する場合、上記の簡略計算式ではなく、ケーブルの椅子インピーダンスを考慮した詳細計算を行うのが望まれる。

それぞれの記号が示す数値、内容は下記の通りである。

ケーブルインピーダンスは、電線メーカーのカタログを使用し、採用するケーブルのインピーダンスを確認する必要があるため、計算に手間が掛かる。しかし、より精度の高い電圧降下計算が可能になるため、簡略計算ではない方法として実施するのが良い。

瞬時電圧低下と電圧降下の違い

電力会社の送電・配電設備に落雷などが発生した場合、影響によって受電電圧が変動する。電力会社では事故が発生した電力系統を自動的に切り離すことで電圧の維持を行なっており、この一連の保護動作を行う際に発生する0.07秒~0.2秒程度の電圧降下を、瞬時電圧低下と呼ぶ。瞬時電圧低下は「瞬低」と略されることがあるが、瞬間的な停電であるものではなく、瞬間的な電圧の低下であるので注意を要する。

瞬時電圧低下では、工場などで使用しているプロセス制御装置、オートメーション装置、サイリスタなどを使用しているモーターなどが停止したり、誤動作を発生する可能性がある。水銀灯やHIDランプでは、電圧低下によって立ち消えが発生する。立ち消えが発生した水銀灯は10分~15分の再始動時間が必要となる。

電力会社側では、瞬時電圧低下を防止するために、落雷を防止するための架空地線の敷設、電線への雪や氷の付着を防止するための難着雪リングの設置などを進めているが、これも完全ではない。重要な電力系統では、需要家側で瞬時電圧低下に対応する措置を行う。

瞬時電圧低下の対応

コンピュータでは、瞬間的な電圧低下が発生すると動作を停止する。停電対策として使用するUPSが設置されていれば、瞬間的な電圧低下に対しても、UPSからの電源供給が継続されるため影響を軽減できる。

水銀灯の立ち消えの対策としては、瞬時再点灯安定器に交換することで電圧低下が発生し、立ち消えが発生してもすぐに再点灯できる。

電圧変動と電圧降下

電圧変動は、負荷電流の変動や、系統インピーダンスの変動によって発生する電圧の変動である。電気事業法においては、標準電圧100Vでは101V±6V、標準電圧200Vでは202V±20Vが維持すべき電圧範囲として定められている。一般的汎用電動機は、±10%程度の電圧変動に対して追従し、許容範囲とされる。

コピー機やプリンター、ドライヤーなどコンセントを使用する機器の内、大電流を必要とする負荷を運転させた際に、一時的に電圧が大きく下がる現象が発生するが、これは「電圧変動」という現象のため、電圧降下とは分けて考える。

電圧変動の場合、定常時の電圧から±10%が一般的である。コピー機やプリンターの電源を、パソコンと同じテーブルタップから確保すると、電圧変動によって90V程度まで電圧が低下し、パソコンに悪影響を及ぼすことがある。

超長距離送電と電圧降下

長距離送電を行うほど電圧が降下し、発熱により電力が損失していく。発電した電力が熱になり大気中に放出されるだけであり、非常に無駄なエネルギーといえる。地球温暖化やCO2の発生を促進しているだけで、環境にも良くない。

送電時の電力ロスを防止するため、発電所や変電所から送電される電力は、数十万ボルトまで昇圧した電圧で送電している。三相3線式( 30.8 × 電線長m × 電流A / 1000 × 断面積[sq] )の簡略式で示したように、電流値と電圧降下は比例関係にある。高圧送電にすることで電流値を低減させられれば、電圧降下も発熱も小さく抑えられる。

3φ200Vの低圧送電と3φ6,600Vの高圧送電では、単純に33倍の電圧の差があるため、電流値は1/33である。同一の発熱量が許容できるならば、電圧を高圧にすることで33倍の電力を送電できる。

しかし、建物内の電気設備や家電に6,600Vを供給する訳にはいかず、受変電設備を設け、低圧に降圧し使いやすい電圧に変換した上で、建築物に電力供給している。

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