短絡電流の遮断・保護 | パーセントインピーダンス法による短絡電流計算

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短絡とは

短絡とは、電気が流れている導体同士が接触し、負荷抵抗が電線抵抗のみになった状態である。100V回路でいえば白線と黒線が接触した状態であり、単に「ショート」とも呼ばれている。

回路が短絡状態になった場合、その回路には「電線長さ分の抵抗」しかない状態となる。多くの影響を無視した単純な考え方であるが、VVFケーブルの1.6mmの1kmあたり抵抗値は約9Ωであり、仮に100m(0.1km)敷設した場合の回路抵抗は0.9Ωである。

この電線路の末端を短絡して100Vの電圧を印加した場合、約111Aの電流が流れる。負荷が接続されていなければ、電線そのものの抵抗値によって電流が熱に変換され、一気に温度上昇して発熱・発火につながる。ケーブルに電流が流れた場合の温度上昇式 θ = 0.008 ( I / A )^2 ×t で1秒毎の温度上昇を計算してみると、

上記の計算のように、1秒毎に25℃弱の温度上昇が発生することになる。電線からは一定速度で放熱するが、発熱量の方が多ければ温度は上昇することになり、3~4秒もすれば電線温度は100℃を超え、被覆が溶け、発煙・発火につながる。発火した場合はケーブル全体に延焼する。

このように、電路が短絡状態となった場合、極めて大きな熱量が電線全体から発生し、電線を被覆しているビニルやポリエチレンが加熱され溶けてしまい絶縁性能が失われる。さらに内部銅線も発熱によって損傷することになるため、短絡が発生した場合はブレーカーによって電路を遮断し、電気回路全体を保護しなければならない。

電気事故によって焦げた端子台の写真

短絡に対する保護

短絡事故の発生した回路には大きな事故電流が流れ、電流は P = I^2 × R の計算式で熱に変換される。

変圧器の直近部分など、インピーダンスの小さな地点で事故が発生した場合、数千Aの電流が流れることがあるため、遮断器などで電路を遮断しなければ、火災事故につながる。保護が適切に動作しなかった場合、電力会社側の配電線にまで悪影響を及ぼす可能性もあり、需要家内を超えて波及事故につながるおそれも考えられる。

高圧電路でも、短絡事故を保護しなければならないのは同じである。短絡事故が発生した場合、限流ヒューズや真空遮断器によって電路を保護しなければならないが、一定時間以上保護できない時間が継続した場合、需要家に電気を送っている地域の変電所の保護装置が作動する。

変電所の遮断器が作動してしまうと、その変電所の系統から送電されている付近一帯まで停電してしまい、影響を受けた需要家から、損害賠償を求められるおそれがある。かつ、事故を起こした電気設備の管理責任を問われ、電気主任技術者がその責任を負うこととなる。

事故には短絡のほか、地絡も同様であり、電気事故は速やかに検出・遮断し、電路の安全性を確保しなければならない。

配線用遮断器による保護

低圧回路で短絡事故が発生した場合、事故が発生している変圧器、電線、遮断器など回路全体に大電流が流れる。この大電流によって異常な加熱が発生や衝撃が与えられ、著しく劣化する。短絡電流は、遮断器などによって事故点を切り離さない限り継続する。

電気回路の事故を切り離す装置としては、ヒューズや配線用遮断器が用いられる。高圧回路の場合も同様であるが、高圧回路は不用意に電線同士を離すことができない。電圧が高い回路を保護装置なしで切り離すと、空中に放電して電気を流し続けようとするため、火花が発生して周辺に飛散し、短絡事故につながる。そのため、事故電流は「遮断器」で遮断する必要があり、事故電流が遮断できないものは「開閉器」として分類されている。開閉器は電流が流れておらず、電圧だけが掛かっている回路を切り離すものであり、負荷の流れている回路を開閉できるものは「負荷開閉器」として分類される。

保護協調の考え方

電気回路を事故から保護するためには「保護協調」を考慮しなければならない。電路の規模や負荷の大きさを見て、事故が発生したときに停電範囲をできる限り小さくするよう、段階的に保護するのが一般的である。

コンセントにつなぐような小さな電気機器に対しては、20A程度の小型遮断器で保護し、それが複数束ねられた100A程度の遮断器で、その一群を保護する。さらに、電力会社から受電する地点には大型の変圧器を設け、225A~400Aの大型遮断器が複数配置され、大きなまとまりで保護することになる。変圧器本体については、一次側にLBS(高圧気中開閉器)を設けて保護する。

コンセントにつながった電気機器の故障で、変電所が遮断されてしまうというのは合理性がない。コンセントの直近回路のみが遮断され、停電範囲を限定するのが適切な設計である。事故が発生する可能性が高い機器には、専用の遮断器を設けると良い。

定格遮断容量

遮断器は事故による大電流を遮断するための保護装置であり、数千アンペアの事故でも遮断できるといった製品もあるが、変圧器付近の短絡事故は数万アンペアに及ぶ可能性もあり、事故によって発生する電流値を計算し、適合した遮断器を選定しなければならない。

事故発生時の大電流が保護できるかを確認するには、「定格遮断容量」をチェックすると良い。定格遮断容量は、短絡電流による大電流を遮断できるかどうか確認するために用い、配線用遮断器の場合は「2.5kA」「5kA」「25kA」「50kA」というように、定格電流だけでなく遮断容量にも注意しなければならない。

定格遮断電流は、事故電流を遮断できる最大値であるため、5kAの事故電流が流れる回路に2.5kAの定格遮断容量の製品を選定すると、事故発生時の遮断に失敗し、遮断器本体が焼けてしまったり、回路が溶融してしまうといった事故につながる。直近の遮断器で保護できなかった場合、その上位にある遮断器で保護しなければならず、複数の健全な回路を巻き込んで停電となってしまう。

短絡電流は変圧器に近いほど大きく、太い電線であるほど大きくなる。配電盤に最も近い遮断器は25kAや50kAといった大きな定格遮断容量を持つ遮断器を選定することになる。

コンセントなどの末端負荷に向かって、定格遮断容量は小さくしても良い。正確に短絡電流を算出するには、変圧器、電線太さなどを模式図に記した「インピーダンスマップ」を作成し、任意の地点で発生した短絡電流が何Aになるのかを計算し、短絡電流以上の定格遮断容量を持つ遮断器を選定しなければならない。

高圧回路の短絡保護

電流が流れている電線に対し、その2本線が接触することを二相短絡、3本線全てが短絡することを三相短絡と呼ぶ。三相短絡が最も過酷な短絡事故であり、極めて大きな電流が流れ、すぐに遮断しなければ大事故につながる。

短絡の原因は多々あり、鳥獣の侵入による電線同士の接触、端子締付けが緩むことによる電線外れ、人的ミスによる接触など多岐に渡る。鳥獣の侵入を防止するために、キュービクルの密閉性を高めたり、ケーブル導入口をパテなどで塞ぐといった措置を講ずることは重要な事故防止対策である。

人為的ミスでは、負荷電流の解放をしてはならない「断路器での負荷電流開放」「定格遮断容量以上の短絡電流遮断による失敗」などが考えられる。事故発生時は放電(アーク)を発生させ、アークが電路に接触すると空中放電による短絡となり事故につながる。

自然現象による事故も事例が多く、電気機器への直撃雷によって機器が焼損し、機器内部で電線が短絡することも考えられる。

高圧受電設備の受電点短絡電流

高圧受電設備の受電点における短絡電流は、電力会社の配電線がどれだけ抵抗となっているかを知る必要がある。そのため、変電所がどの位置にあり、どのルートで電気が送られているのかを知らない需要家は、インピーダンス計算を行うことができない。

そのため、電気を受電したい需要家は電力会社との協議の中で、受電点に設ける機器類に対してどれだけの性能が必要かを問い合わせ、推奨機器を選定してもらうのが一般的である。通常、12.5kAにて選定することが多い。

変圧器本体の保護

低圧の保護と同様、高圧部分も段階的に保護する必要がある。低圧の電路は変圧器単位で電気が送られているが、大規模な建物では変圧器も数多く必要となり、変圧器1台ごとに保護を行い、かつ複数台の変圧器をまとめた上位に真空遮断器を設けて一群を保護する。

変圧器単体の保護には高圧負荷開閉器(LBS)と限流ヒューズが用いられる。変圧器に事故が発生した場合、その変圧器だけを切り離すのが合理的であるため、ヒューズによって変圧器の回路を切り離す。ヒューズは事故電流の遮断性能と遮断速度が非常に高く、LBSに組み込むことで高い安全性が確保されている。

変圧器の保護には「限流ヒューズ」が用いられ、変圧器のほか電動機、コンデンサなどにも用途に応じて選定できるようになっている。

限流ヒューズに規定されている「T特性」は変圧器用の保護能力であり、変圧器投入時に発生する励磁突入電流では溶断せず、事故を適切に検出して保護するよう最適化されている。

「M特性」は電動機の始動電流に最適化されている。「C特性」はコンデンサの突入電流で切れないよう特性を定めている。保護する対象によって使い分ける事で、信頼性を高められるので保護対象に応じて容量チェックをおこなわなければならない。なお「G特性」は一般用特性として規定されており、変圧器・コンデンサの区別なく使用することができる。

短絡電流の計算

短絡電流は電線同士の接触による事故であり、回路に大電流が流れてしまうというのは解説した通りである。ここでは高圧の構内配電系統について、短絡電流の計算事例を解説する。

6.6kVの受電設備で、3φ3W 6,600V/210Vの変圧器二次側直近で事故が発生したと過程し、短絡電流を算出する。基準容量は10MVA(10,000kVA)、受電点%合成インピーダンスはj10%とする。

引込ケーブルの%インピーダンス算出計算

引込ケーブルは、ケーブルサイズによって%インピーダンスが変動し、太いケーブルほどインピーダンスが小さいため短絡電流は大きくなる。まずは、受電点に設置した保護装置である「PAS」や「UGS」を起点に、受電設備内の遮断器までのケーブルサイズのインピーダンスを確認する。

ケーブルのインピーダンスは、採用する電線メーカーによって数値が若干違うが、一般的に 6.6kV CVT100sq では下記となる。

電線メーカーの資料では、インピーダンスが「Ω」で表現されているため、%インピーダンスに変換して算出を行う。6.6kV CVT100sq を100m敷設した場合、%インピーダンスの変換計算は下記の通りである。

単位を合わせなければ計算できない。0.2548[Ω/km] をメートル単位にするため、100 m × 1/1000 = 0.1[km] とする。

Paは基準容量であり10[MVA]とする。ただし計算上はkVAとしなければならないため、1000倍してkVAに換算する。

Vaは基準電圧であり、変圧器一次側の計算をしているため6.6kVとする。以上の数値を、%Z = Zc × Pa / ( Va^2 × 10 ) × 1 / 敷設数 の式に当てはめて計算を行う。

上記の数値は受電用の「PAS」「UGS」から受電設備の遮断器までであるから、電力会社の変電所から受電点までのインピーダンスが含まれていない。そのため、受電点%インピーダンスを電力会社から受賞し、その数値を加算しなければならない。

例として、電力会社から提示された受電点%インピーダンスが10%であれば、10 + 0.5849 = 10.5849% とする。これで、遮断器二次側の%インピーダンスを求めることができる。

高圧ケーブル末端の短絡電流算出

短絡電流は下記の計算式で求める。

PaはkVA単位であり、10[MVA] を10000[kVA] に変換して計算する。%Z = 10.5849%を使用する。Vaは基準電圧であり、6.6[kV]を使う。

これで、受電設備の遮断器付近で発生する短絡電流は、8.27[kA]であることが確認できた。真空遮断器には「8kA」「12.5A」「20kA」というラインナップがあるが、8kAでは適合しないため、12.5kAを選定すると良い。

変圧器二次側の短絡電流算出

変圧器二次側の短絡電流は、線路のインピーダンスだけでなく、変圧器容量と変圧器の%インピーダンスに左右される。

ここで、3φ3W 6600V/210V 500kVAの変圧器について短絡電流値を計算する。変圧器本体の%インピーダンスはメーカー仕様書を参照することとし、ここでは4%にて計算する。

変圧器のインピーダンスは、10[MVA] ベースを実容量に換算する。%インピーダンスを4%としたので、これを使用して計算する。500kVA の変圧器であり、単位を統一して 0.5[MVA]とする。

受電点+線路のインピーダンスは10.5849%、変圧器のインピーダンスは80%となるため、合算すると90.5849%となる。 Pa × 10^3 / (√3 × Va × 10^3) × 100 / %Z で短絡電流を求める。Paは同じく10[MVA]であり10000kVAに変換する。今回は低圧側の計算であり、Vaは6.6[kV]ではなく0.21[kV]を使用する。

変圧器二次側が30.5[kA]ということが判明したので、配電盤遮断器の遮断容量は、50[kA]の製品とする。

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