電気設備の知識と技術 > 電気設備設計の基礎知識 > 開閉器の種類・手元開閉器
開閉器は、電路を開閉する装置である。通常、開閉器は単純に電路を開放・接続するための装置となっており、事故電流を遮断するような保護機能は期待できない。電路充電中の負荷電流を開閉でき、異常電流が発生している際に投入ができるという機能を満足する性能を持っている。
開閉器には、低圧受電点に設ける引込開閉器、空調機など電動機の付近にメンテナンス用として設ける手元開閉器があり、用途に応じて設置される。もし開閉器に遮断器能を持たせたい場合、二次側に遮断器を設置したり、電力ヒューズを内蔵した開閉器を用いて対応する。
開閉器が開発された当初はナイフスイッチが使用されていたが、充電部が露出しており危険なため、安全性の向上が求められ、充電部が露出しないようカバースイッチや箱開閉器が開発され、最近では配線用遮断器と同じ形状をしたノントリップ開閉器をボックスに収容するなどして使用されている。
開閉頻度が高く、開閉回数が多くなる場合は、電磁接触器を使用するのが良い。電磁接触器は電磁石の吸引によって電路を開閉する機構のため機械的な摩耗が少なく、100万回以上の開閉に耐える製品もある。自動制御によって電路の開閉を自動的に繰り返す電路では、開閉寿命の長い電磁接触器を使用する。
電路を開閉するための開閉器には、ナイフスイッチ、カバースイッチといった従来の機器から、安全ブレーカーと呼ばれている配線用遮断器、いくつかの種類がある。
ナイフスイッチは、ナイフ状の電極を刃受け電極に挿し込むような形状をした開閉器の一種である。ナイフスイッチは刃切開閉器とも呼ばれている。古い建築物の改修工事では見かけることがあるが、新規案件で採用することはない。充電部が露出していては危険なため、通常は充電部が樹脂でモールドされたカバースイッチが通常使用される。
ナイフスイッチは、充電部が露出した状態で使用することが禁じられている。電気室内などで、電気管理者など限られた人だけが操作する場所において、開閉操作時に充電部に触れないようカバーを設けた場合に使用できる。
ナイフスイッチは刃を負荷側に接続した状態で縦方向に向けると、自重で刃が落ち電路が開いてしまう可能性がある。自然に電路を開放しないよう、刃受を上部とすべきである。振動によってナイフスイッチが自然と回路してしまうことにも注意しなければならない。なお単相3線式電路の場合、中性線が欠相すると過電圧による事故につながるため、中性線が先に切れたり、遅く入るような仕組みにしてはならない。
カバー付きナイフスイッチとも呼ばれる開閉器で、充電部は樹脂でモールドされ安全性が向上している。ナイフスイッチでは短絡事故など事故電流に対応できないため、電路の保護が必要な場合は、電力ヒューズを内蔵し事故電流を遮断できる。カバースイッチはCKS(Covered Knife Switch)という略称で表現されている。
ヒューズは溶断した瞬間に使用不能となり、電路は開放されたままになりヒューズを交換しない限り復旧できない。よって現在では、ヒューズを使用せず、事故電流を繰り返し遮断できる配線用遮断器(MCCB)を使用するのが一般的である。
ヒューズを使用する場合単相2線式であれば問題ないが、単相3線式回路の場合、中性線が欠相すると異常電圧が健全相に発生してしまい危険であり、中性線はヒューズではなく銅バーを使用し、欠相を防止しなければならない。三相3線式の場合、3極同時にヒューズが切れることは稀で、ほとんどの場合1相のみの欠相となるため、欠相運転を防止できない。場合は、3極同時に遮断できるMCCBを使用するのが良い。
カバースイッチは日東工業などが製造・販売を行う。カバースイッチは1951年(昭和26年)に日東工業が製作・販売を行い、国内に幅広く普及することになったという歴史がある。
配線用遮断器を開閉器として利用する方法で、現在最も普及している方法である。外箱を一体化しパッケージとして販売しているメーカーもある。短絡や過負荷などを遮断するトリップ機能を除き、電路の開閉だけが可能なブレーカーとする。
手元開閉器は、電動機の近傍に設置することで、機器のメンテナンス時に電路を容易に開放し、メンテナンス者が安全に点検するために設置する開閉器である。内線規程では、電動機などを設置する場合には、近傍に設置することを定めており、電動機の付近に動力盤がない場合、誤って電源を投入されて感電するといった事故を防止するため、トリップ機能を持たない安全ブレーカーを設けて安全対策とする、というのが一般的である。
電動機には原則として手元開閉器が必須になるが、電動機に電源を供給する動力盤が付近に設置してあり、ブレーカーを操作する際に電動機が目視できる場合は、動力盤を手元開閉器とみなして省略できる。手元開閉器は配線用遮断器であり、設置にはコストが発生する。電動機と動力盤の位置を検討し、効率的な配置とすることで、安全を確保しつつコストの削減を図ることができる。
電磁開閉器は、電気回路の多頻度開閉に適した開閉器で、電磁接触器とサーマルリレーを組み合わせたものである。電路を閉じる場合、電磁石のコイルに電流を流すことで磁力を発生させて接点を閉じる。電路を開ける場合は、コイルの電流を遮断することで電磁石の磁力を消する。電磁石の吸引力を利用して電路の開閉を行う。
モーター類を電磁開閉器で開閉すると、大きな始動電流によるアーク熱により、接点表面が黒くなっていく。長期間の使用により、黒化が著しくなるが、大きな不良を引き起こすことはない。
電磁開閉器によってモーター類を開閉する場合に問題になるのは「始動や停止を頻繁に繰り返すことにより、大きな始動電流を繰り返し流す場合」「始動電流が安定し、全速運転に切り替わる前に投入と遮断を繰り返すインチング運転」「始動電流と逆相電流の重畳した電路を開閉するプラッギング」など、条件が過酷な場合、故障につながるおそれがある。これは電磁開閉器に限らず、遮断器による開閉時も同様である。
電磁接触器は電磁コイルに電流が流れた時、可動鉄片が電磁力によって引き寄せられることで接点が動作し、電気回路の開閉を行う機器であるが、過負荷に対する保護機能を有していない。この電磁接触器にサーマルリレーを組み合わせ、保護機能の開閉機能の両機能を有したものを電磁開閉器と呼ぶ。
電磁接触器の投入電圧が低下している場合、チャタリングと呼ばれる接点のばたつきが発生する。チャタリングは、1秒に十数回の接点開閉を繰り返すことになるため、接点部が異常過熱し、消耗する。条件が悪ければ、接点が熱により溶着することにもつながる。
コイルの定格電圧や周波数を間違えた場合などで発生するが、定常的な使用時では、電源の電圧低下や変動による吸引力の不足、電磁開閉器本体の取り付け不良によるガタ付き、コイル端子の接続緩みなどが原因として考えられる。
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