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電気設備の知識と技術 > 照明設計・電球の知識 > 照明器具の劣化と寿命

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照明器具とランプの劣化

照明器具は、長期間の利用に伴って電球の劣化が進むので、定期的にランプ交換をしなければならない。ランプを交換すると、新品のような明るさで光を放つので、器具本体も新品に戻ったように感じられる。

しかし、表面の清掃やランプ交換に外観上は綺麗に見えたとしても、安定器の内部機器は劣化が進んでおり、ランプ交換だけでは本体の劣化修復はできない。

照明器具の内部にほこりが堆積していたり、内部配線の絶縁性能が劣化していると、湿気を吸収してトラッキング現象を起こしたり、絶縁性能の低下による内部発熱により、発火や発煙を引き起こす可能性がある。絶縁抵抗が悪化した照明器具は、漏電事故につながるおそれがあり、漏電遮断器が設けられていれば良いが、照明回路は漏電遮断器の保護範囲外としていることも多く、広範囲の停電につながることも考えられる。

事故を防止するには、ランプ交換だけでなく、器具内部の安定器や電源装置、配線の点検や、修繕が重要である。

劣化した白熱電球とLED電球

照明器具とランプの寿命

照明器具は、10年~15年が耐用年数とされる。使用時間1,500h/年程度の使い方であれば、15年以上の寿命を持つことがある。実際には、20年以上使われている照明器具も見受けられる。

設置場所によって寿命は大きく変化し、屋内に設置する場合よりも屋外に設置した場合の方が、寿命は短くなる。沿岸部や工場内など、塩分を含んだ外気にさらされる場合、腐食性ガスを含んだ外気にさらされる場合は、より激しく腐食が進行するため、寿命はさらに短くなる。

ランプの寿命は照明器具の種類によって多々あるが、白熱電球は1,000~3,000時間、蛍光灯・HID灯は6,000~12,000時間が一般的である。長寿命化したHf蛍光灯や高圧ナトリウムランプでは、20,000~24,000時間の寿命を持つ製品もある。

白熱電球は電圧と寿命が比例関係にあり、電圧を下げればフィラメントの蒸発量が少なくなるため、光束が少なくなるが、寿命は長くなる。しかし、蛍光灯やHID灯の場合、電圧が変動すれば寿命が短くなる特性がある。

急激な電圧変動や電流変動でも、寿命が短くなる。白熱電球では、ランプを付けたまま寿命を迎えることはほとんどなく、多くは「電球に電源を入れた瞬間」の突入電流にフィラメントが焼き切れることによる。電源をオンにした瞬間、突入電流が流れることでフィラメントに負担が掛かり、切れてしまうというものである。

蛍光灯の場合も、電子放出物質であるエミッタに突入電流が加えられると、消耗が促進されて寿命が短くなる。頻繁に電源を入切する環境下では寿命が短くなることを考慮しなければならない。LED照明の場合は、入切に強いため、点滅回数によって寿命が左右されることがないため、頻繁にオンオフを繰り返す環境であれば、蛍光灯ではなくLED照明を選定することも考慮する。

白熱電球の劣化と寿命

白熱電球は、フィラメントに電流を流して加熱し、放射熱によって発光させている。フィラメントが消耗し、断線した瞬間が寿命となる。定格電圧よりも高い電圧を印加したり、繰り返し点滅させれば、期待される寿命が大幅に減少する。

蛍光灯・安定器の劣化と寿命

蛍光灯が不点灯、または光束維持率が70%以下となった瞬間をもって寿命とされている。蛍光灯の光束維持率が70%となる頃には、ちらつき、部分発光、黒化等が発生している可能性が高く、目視でも異常を確認できる。

蛍光灯の不点灯は、電極から電子を放射させるエミッタが消耗し、電子が放出されないことが原因となる。この時点でランプ寿命と判断し、電球交換を行うのが良い。

蛍光灯は白熱電球と違い、電圧は定格電圧よりも高くても低くても寿命が短くなる。定格電圧で点灯させるのが最も長寿命であり、供給電圧の変動に注意が必要である。白熱電球のように、電圧を下げたとしても寿命が長くなることはない。

HIDランプの劣化と寿命

HIDランプは、蛍光灯と似た性質を持っているランプである。蛍光灯と同じように、内蔵する電子放出物質が消耗すると、始動放電が始まらず、ランプが点灯しない。電圧と寿命については蛍光灯と同様、電圧が高くなっても低くなっても、寿命が短くなる。

15年以上使用している、または40,000時間以上の累積点灯時間となっているHID照明器具は、器具本体・安定器に深刻な劣化が進んでいるものと考えられる。灯具本体の塗装剥離、鉄部や樹脂部分の腐食発生、内部電線の硬化、変色ひび割れ、ランプソケットの破損、焦げなど、劣化を表す要素は多岐に渡る。

目視で異常がなかったとしても、絶縁抵抗試験などで異常状態を検出する。絶縁劣化を引き起こした灯具については、器具交換を視野に入れたメンテナンス計画を考えるのが良い。

蛍光灯安定器の劣化と寿命

磁気回路式の安定器は、内蔵しているチョークコイルの巻線劣化、絶縁物の劣化による絶縁不良、コンデンサの劣化等が考えられる。電子回路式の安定器は、磁気回路式安定器に含まれる機器類に加えて、半導体素子類の劣化が考えられる。

安定器は劣化することにより、異常振動、発熱、点灯不良、漏電等が発生する。目視による診断では正常に見えたとしても、内部劣化が進行している。長期間使用した安定器では、目視確認で異常を判断するのは困難なため、絶縁抵抗測定や、異音・異臭・発熱状況を確認することが重要である。

照明器具の清掃による効率向上

照明器具のセードやカバーだけでなく、ランプ本体の清掃も重要である。ランプは点灯によって発熱するので、汚れが付着して落ちにくくなる。ホコリが付着している部分は、ランプからの放熱が阻害されて熱が集中し、寿命の低下にもつながる。

照明設計の事例を紹介する。士室内の照度計算を行う場合「保守率」という指標で明るさの補正を行う。保守率はランプが汚れやすい環境か、汚れにくい環境かを数値化しており、定期的に保守されている電球は高い効率を維持する。定期的にランプを清掃すれば、ランプが本来持っている明るさを維持して点灯するので、省エネルギーにつなげられる。

ランプ清掃時の注意点

照明器具を清掃する場合、電源を入れたまま行うのは避ける。照明器具は放熱しており、火傷を防止するだけでなく、通電状態のままでは充電された接続部に清掃器具が入り込む危険性があるので、感電防止の意味でもある。

ランプ本体を清掃する場合、蛍光灯や白熱電球は、消灯後しばらくは電球が熱いので、手で触れる温度になるまで放置して冷やする。電気機器の原則として、水分を含むと絶縁性能が低下するため、乾燥した布を使用するか、固く絞り水分を取り除いた雑巾を用いると良い。

器具本体の劣化と診断

器具本体の劣化には、反射板やカバーの傷、塗装のはがれ、腐食や錆の発生がある。補修をしなければ腐食や錆が進行し、内部まで進行するおそれがある。

照明器具を診断する場合、ソケットが割れていないか、照明器具にカバーがある場合、つまみネジが正常に回るかなど、外観だけでなく機能についても確認することが重要である。

安定器の劣化と診断

安定器は、磁気回路式と電子回路式の2種類がある。寿命は10年程度である。使用限界を超えた安定器では、内部の巻線やコンデンサが劣化しており、異音・発熱・発煙、ランプのちらつきなどが発生するおそれがある。

グロースターター型やラピットスタート型の蛍光灯、水銀灯等は磁気回路式の安定器が使われている。周囲温度や湿度、供給電圧が適正でなければ、規定の寿命を維持できず、早期に寿命となる。

電子式の安定器は、Hf蛍光灯に使用されている。半導体などを内蔵したプリント基板を搭載しているが、劣化する原因は磁気回路型安定器と同様である。

照明器具の診断方法

照明器具は、目視によって錆や腐食が発生しているかを確認する。内部の安定器が焦げていないか、異常に発熱している部分はないか、焦げ臭さはないかなど、五感を活用した診断を行う。

安定器の内部回路や電線の診断を目視では行えないため、絶縁抵抗計を用いて絶縁抵抗値を測定し、法定以上の値を維持しているかを確認する。絶縁抵抗値が法定値以下であれば、電線の交換、安定器の交換などが必要である。

照度の低下と耐用年数

照明器具は、使用時間や使用場所、周囲温度の影響で、照度が変化する。使用時間が長くなったり、周囲温度が低かったりすると、作業面照度が低下する。照明をある期間以上使用したあとでも、当初設定した照度を維持できるように、保守率や照明率を考慮した照度設計を行う。

蛍光灯や水銀灯は、4,000時間程度点灯した後の照度は、約20%程度暗くなる。点滅回数も寿命に影響し、繰り返しオンオフを行ったランプは寿命が短くなる。一般的には1回のオンオフで1時間、寿命が短くなるといわれる。点滅寿命を飛躍的に延ばしたランプもあるが、汎用的なFHTランプや水銀灯では、概ねこの数値が適用できるであろう。

蛍光灯の寿命の判断

蛍光灯を長期間使用していると、照度の低下だけでなく、ランプ本体にも異常を確認できる。ランプ端部の黒ずみ、部分発光、ちらつきの異常点滅がある。最終的には不点灯となるため、この段階ではランプを交換するしかない。

照明器具の台数が少なければ、ランプが切れる毎に交換することで問題ないが、数百~数千台の照明器具が設置されている場合、個別に交換することは非効率的であり、照度が70%まで低減している場合、または2年程度の運用後に全ての電球を交換する方法がある。

塩害地域に設置した場合の腐食進行

耐塩害性能が要求される地域では、腐食が著しく発生するため、照明器具の耐用年数は短くなる。常時、飛来塩分が高濃度な地域(沿岸から200~300m)では、照明器具に重耐塩仕様が求められる。重塩害地域よりも少ないものの、気象条件によっては塩分が高濃度となる地域(沿岸から300m~2km)では、耐塩仕様を考慮する。

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