電気設備の知識と技術 > 電気の基礎知識 > 電気ケトルの構造と仕組み
電気ケトルは電気によって熱を発生されて暖めることを原理とした、電気式のやかんである。
家電として販売されているハンディタイプの電気ケトルは、0.15リットルから1.2リットル程度の、小型のものが大部分を占めており、大きな電気ケトルでも0.5リットル程度が人気である。
電気ケトルを用いるのは「使う分の湯だけを速く沸かす」という使い方であり、1リットルもあるような大型の電気ケトルは、大き過ぎて持て余すことがあるので、小型の電気ケトルが人気である。
電気ケトルは、一度に大量の湯を作ることを目的としておらず、少量の湯を「使う分だけ」沸かすのが通常の使用方法である。ガスコンロで湯を沸かすよりも、効率的で素早く湯を作ることが可能である。
沸かした湯は、すぐに使い切ることを前提としており、長時間保温することは想定外の使い方である。多くの電気ケトルには保温機能がなく、これが電気ポットとの大きな違い。
電気ケトルと「やかん」との利便性の違いは「コンロを塞がず」「短時間で」熱湯を作れるという便利さが挙げられる。コンセントに接続して数分で、熱湯を得られる。
電気ケトルは、欧米などで広く普及しているが、国内ではあまり普及していない。国内では電気ケトルよりも電気ポットが昔から使われており、お茶やコーヒーを飲むたびに湯を沸かすよりも、常に熱湯を保持する方が、生活スタイルとして合理的である。
しかし、最近では使い方の保存を行わず、電気ケトルにより使いたい時に使う分の湯を沸かすというスタイルも、広く普及するようになる。
一人暮らしの世帯では、不在のタイミングが長くなるため、大量の湯を保温する必要はない。少量の湯をすぐに作れるという手軽さから、電気ケトルが選ばれる。コーヒーやお茶一杯のために必要な、0.15リットル程度であれば、約1分あれば沸かすことが可能である。
電気ポットはJIS規格に転倒したときの流水量を50ml以下にするなど、高い安全性が求められている。電動ポンプや手押しポンプなどを用いて、据え置いたまま湯を出せるのも、高い安全性のひとつである。
電気ケトルは電気ポットと違い、やかんと同様に「傾けて湯を出す」という使い方であり、ケトルを転倒させた場合は内部容器の湯が外に放出される。
国内メーカーが販売する電気ケトルは、これら安全性の問題点を解決するべく、ケトルの転倒時の流水防止機能や、二重構造による断熱によって本体を熱くしないなど、安全性を高めた電気ケトルを製造していることもあるが、全ての電気ケトルにまで普及しているわけではない。
電気ケトルは、電気を熱源にして湯を沸かす「やかん」というのは、前述したとおりである。ケトル下部にある電源プレートに本体をセットし、電熱ヒーターに通電させることで加熱し、プレートに熱を伝達させて湯を沸かすという仕組みで加熱する。
水が沸騰すれば、電気ケトルへの通電は不要になるが、電源カットは自動で行われる。沸騰を検出して電気ケトルへの通電を自動停止させる方法として、沸いた湯から出る蒸気を使用して温度を検知し、一定の温度に至った時点で、電熱ヒーターへの通電を停止が行われる。
やかんのように、湯が湧いたら慌ててガスコンロの火を止めに行く、といった煩わしさから解放され、非常に手軽かつ安全に湯を沸かせる。
0.5リットル程度のサイズの電気ケトルを使用し、水温20℃程度の水から沸かす場合、約3分の時間を要する。0.15リットル程度の水量であれば、約1分で沸騰する。
電気ケトルの仕組みは「水を電熱によって加熱する」という方法であり、家庭用の100Vコンセントから電源供給する場合、最大で1,200W程度の消費電力を得るのが限界である。製品によって沸騰時間が速い、遅いといった違いはほとんどなく、どの製品でも同様の時間で水が湧き上がる。
通常、電気ケトルには保温機能がない。一般的な電気ポットであれば、沸騰により一定温度まで昇温した後は、保温モードとなり「長時間に渡って高い水温を保つ」という動作に切り替わる。いつでも同じ温度の湯を得ることが可能である。
電気ポットの保温性能は大変良く、容器の断熱性能を高めることで熱の出入りを最小限にし、温度維持のために必要な消費電力を低く抑えている。
電気ケトルは、使うだけの湯を使い切るのが通常の使い方であり、保温機能を持たせる必要がない。電気ポットのように、大量の湯を作り、長時間に渡って使用することは想定されていないため、本体断熱性能が低く、通電を中止した瞬間から湯は冷えていくのが一般的である。
必要な湯を必要な分だけ沸かすというスタイルは、長時間部屋を空けることが多い、一人暮らし世帯に向いている製品である。長期間無人となる部屋に、電気ポット等で保温したままにするのは、空焚きによる事故の原因となるため避けなければならない。
電気ケトルであれば、基本的に保温機能がないため、必要な分を沸かし、使い切った後は電源を切っておけば安心である。
一部に、電気ケトルであっても保温機能を持たせた製品もあるが、電気ケトルは熱湯使いきりをするのが主目的の電気機器であり、保温をすると電気ポットとあまり変わらず「使う分だけを沸かして使う」という電気ケトルの目的から外れてしまう。
電気ケトルは手軽さが売りの製品であるが、電気ポットと比べて安全性に劣るとされている。電気ケトルを転倒させて、溢れ出た熱湯に触れた乳幼児がやけどするといった事故も報告されている。
保温目的の電気ポットは、倒しても熱湯がこぼれないよう、JIS規格に定められた流水保護装置が組み込まれており、万が一転倒しても、漏れ出す湯量を厳しく制限しているため、電気ポットを転倒させても、やけど事故につながるおそれは小さくなる。
電気ケトルは湯をこぼれにくくする基準が明確ではなく、その性能はメーカーの自主性に委ねられている部分がある。海外製の電気ケトルは安全面に不安が残る製品も多く、乳幼児や高齢者が居る家庭では慎重な選定が必要である。
国内メーカーでは独自に、電気ポットと同様のレベルの安全装置を組み込んでいる製品もある。電気ケトルが万が一転倒しても、溢れる湯量を制限して安全性を高めている。
しかし、安全装置の多重化は電気ケトルのメリットである「手軽さ」を阻害することになりかねない。ガスコンロで沸かす「やかん」には安全装置はなく、倒せばやけどにつながる。電気ケトルもやかん同様、容器内に熱湯が入っていることを理解し、低いテーブルや床に置くことは避けるべきである。
電気ケトルは構造がシンプルであり、簡単に一定時間の沸騰ができるため、スープを作ったり、うどんを茹でたりといった利用が「便利な使い方」といって紹介される。
水以外の食品やスープ類を電気ケトルに入れて加熱すると、温度が100℃を超え、安全装置が動作して機能を停止したり、本体そのものが熱に耐えられずに破損することがあり危険である。
電気ケトルの材質は「プラスチック」「ガラス」「ステンレス」に大きく分類されている。それぞれ材質によって特徴があり、本体価格だけでなく、性能や手入れのしやすさに違いがある。
プラスチック製の電気ケトルは、もっとも多く普及している内部容器の材料であり、安価で購入しやすい特徴がある。本体が軽いため扱いやすいという利点がある。
落としたり倒した場合、プラスチック部分にキズが付くことがあるが、ガラス製の電気ケトルのように、割れて使用不能になるほどの損傷はほとんどない。
プラスチックの欠点として、付着した汚れを落としにくいことや、目立つキズが付きやすい事などが挙げられる。プラスチックの「雑味」が水に移ってしまい「湯が美味しくない」と感じることもある。プラスチック特有の味が気になる場合は、内部容器がステンレス製もしくはガラス製の電気ケトルを選択するのが良い。
ガラスは極めて安定した物質であり、沸騰や保温で水の成分を変化させないため、どんな飲み物に対しても一定の水質で湯を供給できる。
ガラスは表面がなめらかなため、汚れを落としやすく、本体の清潔さを保てることも利点である。電気ケトルに入れた水に対し、プラスチックや金属の臭いや味を移す心配がなく、安心して湯を扱える。
ガラスは透明なので、電気ケトル内部にどれだけ湯が入っているか、湯が湧いているかを目視できるのも利点である。残り湯の有無を確認したり、汚れている部分がすぐに判別できるので、高い清浄度を保てる。
ガラス製の電気ケトルの欠点として、プラスチック製の電気ケトルよりも重いことや、衝撃に弱いという点が挙げられる。本体を倒したり、落下させたりするとガラス部が割れてしまい、使用不可能である。
注意点として、本体がガラス製であっても、注ぎ口やフィルター部分が樹脂になっている場合がある。汚れやすく洗浄しにくい部分であり、気になるためあれば、注ぎ口を含めた「オールガラス」の電気ケトルを選択すると良い。
ガラスは急激な温度変化に弱いので、沸騰させて熱くなった容器に氷を入れたりすると、ガラスが急激に冷やされて、本体にヒビが入る。ガラス製の電気ケトルを使用する場合、衝撃や急激な温度差に注意し、破損しないような取り扱いが必要である。
ステンレス製の電気ケトルは、強度の高さが利点である。プラスチックよりも強靭なためキズが付きにくく、倒したり、落としたりしても破損することがほとんどない。
プラスチック製よりも汚れにくく、ガラス製よりも強度が高いという特徴により、安心して使用できる。
推奨されることではないが、熱した電気ケトル容器に氷などを入れ、急激な温度変化に晒されても、ステンレス製であれば割れることなく安全である。スチール製の電気ケトルは総じて重くなるが、軽量化を図った製品も多く販売されるようになった。
ステンレス製の電気ケトルの欠点として、金属製の容器に水を入れて沸かすので、人によっては水に金属臭を感じる。プラスチック製と同様、水の臭いが気になる場合は、ガラス製の電気ケトルを選択するのが良い。
水道水は、清浄度を保つための消毒用途として、塩素が投入されている。水道水は高い塩素濃度が保たれているため、水道水を直接電気ケトルに入れて沸騰させると、沸騰直後の湯にカルキ臭さを感じることがあり「水の味が悪い」と感じる。
電気ケトルは沸騰させた後すぐに通電を中止する。長い沸騰時間を維持すれば、徐々にカルキ臭さが抜けるが、電気ケトルでは十分にカルキ抜きされないことがある。
緑茶など日本茶のために使うと、カルキ臭さが分かりやすく、味を劣化させる原因とされる。塩素の臭いが気になる場合は、沸騰後30秒以上継続する機能を持つなど、カルキ抜きに特化した機能を持っている電気ケトルを選ぶと良い。
水道水は塩素投入によって腐敗を防止しており、水を沸騰させ塩素が失われた水は、腐敗速度が非常に速くなる。
沸騰後に放置した湯を飲用に使用するのは危険であり、体調不良の原因となるため、沸騰させた水はすぐに使い切ることが原則である。沸騰だけでなく、直射日光に曝すことでも、水に含まれる塩素が失われる。塩素が失われた状態では腐敗が急速に進むので、飲用に適さない水となるため注意が必要である。
電気ケトルで大きなシェアを誇るのは、国内で電気ポットの電熱製品を生産販売している「象印マホービン」「タイガー魔法瓶」が国産メーカーとして人気である。日本製の電気ケトルは安全性が高いのが人気の要因である。
海外からの輸入品では、フランスのキッチン用品メーカーである「ティファール」がもっとも広いシェアを誇る人気メーカーである。他にも、ラッセルホブスや morphy richards(モーフィーリチャーズ)など、デザインを重視した海外メーカーの電気ケトルも人気がある。
この3社で、電気ケトルのおよそ70%のシェアを専有している。大手総合電機・家電メーカーでは、パナソニックや東芝も電気ケトルの生産販売を行っているが、各社で5%程度のシェアに留まっている。
電気ケトルには、多種多様な形状やバリエーションカラーの製品が販売されている。単なる「やかん」は、誰でも想像が付く昔ながらのデザインであるが、電気ケトルの場合、多くのメーカーがデザイン性の高い商品を生産している。
電気ケトルの安全性向上のため、メーカーは電気ケトルへの安全装置の組み込みに取り組んでいる。足を引っ掛けて倒すことがないよう接触プラグ式の電源コードを採用していたり、転倒させても湯が排出口から全て溢れないよう、ハンドルを重くして注ぎ口が上を向くように工夫されている製品もある。
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