電気設備の知識と技術 > 電気の基礎知識 > オール電化住宅の特徴と比較
厨房、給湯、暖房など、熱を必要とする部分を全て電気でまかなう生活スタイルを「オール電化住宅」とまたは「全電化住宅」と呼ぶ。従来はガス会社から都市ガスやプロパンガスの供給を受け、電気と併用するのが主流であるが、給湯・暖房など全ての熱源を電気にするオール電化スタイルが広く普及している。
オール電化住宅は、熱源をすべて電気で賄う生活スタイルのため、都市ガスやプロパンガスを使用することが全くない。ガス会社からすればオール電化の普及は、売上の減少につながるので、ガス会社は更なるサービスの向上や料金の低減によってガス熱源の良さをアピールする。ガス会社と電力会社との間で、激しい競争が続いている。
オール電化とガス併用の熱源方式の違いは、ユーザーの感覚にどちらが良いかの意見が分かれてしまうものである。互いのメリット・デメリットを十分把握し、オール電化とガスのどちらが生活スタイルにマッチするかを判断するのが重要である。オール電化による割引メニューについては後述する。
広く認識されているオール電化住宅であるが、デメリットと思われる部分はメーカーの新製品開発によって日々改善されている。オール電化住宅とガス併用住宅のどちらが良いかという明確な回答はなく、生活スタイルと個々の生活嗜好によって選ぶべきものである。
住宅において、一度選択した熱源の方式を変更するのは容易ではない。賃貸住宅であれば転居による解決が考えられるが、戸建住宅やマンションを購入した場合、一度決めた熱源方式を変更するのは困難である。
オール電化マンションの場合は、そもそもガス配管が敷地内に引込まれていないこともあり、オール電化からガスに変更することは不可能と言って良い。熱源の選定は、その後の生活に深く関わるので、長期的な視点で生活スタイルを見極めるのが重要である。
オール電化住宅は、建物内で電気以外の熱源やエネルギーを使わない方式である。ガスや灯油などを一切使わず電気のみを使用することによって、どのようなメリットがあるかを解説する。
一般的に、エネルギーは多様性があるほど強靭になるとされており複数のエネルギーを利用できる状態がのぞましい。住宅内のエネルギー利用にあっては、エネルギーの利用に基本料金が必要であるなどコスト面に影響するため、電気に一元化することで数多くのメリットを享受できる。
電気のみを使用することには、メリットの反面デメリットもいくつか存在する。利用者の責任において、電気のみの熱源とするか、ガスなどを併用するかを判断しなければならない。オール電化によるメリットの反面、デメリットについても理解を深め、損をしない選択ができるよう紹介する。
ガス配管を建物に引き込まないことで、基本料金を電気に一本化できるためガス基本料金がゼロとできる。基本料金はガス管を引き込む限り必要となり、ガスを実際に使用しなくても必要となるため固定支出が発生する。オール電化住宅ではガス管自体を引き込んでいないため、基本料金が発生することはない。
建物の新築時にあっては、ガス配管の敷設工事が不要となりイニシャルコストの低減が図ることができる。ガス給湯器は安全離隔が必要であり、一定のスペースを必要とするため、設備面積の低減が図ることができるのも利点である。
マイコンメーターやガス警報器といった安全装置も同様に削減でき、スペース及びコストの削減が可能となる。
東日本大震災の震災を経験した結果、災害でダメージを受けたライフライン復旧については、電気が最も早いことが判明した。水道やガスは重要なライフラインであるが、電気よりも遅れての復旧となった。
オール電化の住宅であれば、もっとも早く復旧する「電気」を使っているため、照明だけでなく暖房や調理熱源の復旧も、早期に使用可能となる。これは電気を主体に利用しているオール電化住宅は「災害に強い」とも解釈できる。
オール電化住宅の場合、キッチンにガスコンロはなく、調理器具はIHクッキングヒーターになる。IHクッキングヒーターは炎が発生しないため、衣類への着火事故を低減できる。
電気エネルギーを用いた加熱のため、室内でガスを燃焼させるといったことがなく、ガス燃焼に伴う空気汚染がない。これは二酸化炭素の発生量を抑えられるというメリットが得られる。
炎の直接的な危険性として、ガスを使用したキッチンコンロは、炎が衣服の袖口に引火して、腕まわりを火傷するという事故の発生が懸念される。オール電化であれば、そもそも炎が存在しないため、火を原因とした直接的な事故を防止できる。
IHクッキングヒーターは火を使わないことは確かであるが、鉄やステンレスの鍋に対して、炎で熱したのと同じだけの熱量を調理器具に与えている。熱せられた調理器具に触ったり、可燃物が接触すれば火傷や発火のおそれは十分考えられるので、やけど事故を完全に防げると考えてはならない。
加熱していることに気付かず調理対象が異常に発熱すると、発煙や発火の危険性があり危険である。オール電化住宅の場合でも、ガス併用住宅の場合であっても、調理対象の加熱による事故の危険性は残るので、オール電化住宅が火災に対して絶対的に優位であると考えてはならない。
オール電化住宅で採用されるIHクッキングヒーターは、従来のガスコンロのように、ゴトクまわりのススによる汚れや、ガス燃焼のために空気が汚れることがないため、キッチンまわりを比較的清潔に保てる。IHクッキングヒーターは平面的な形状のため、調理後の清掃が簡単である。
最近のガスコンロもかなり平面形状に近付いており清掃しやすさも向上しているが、ゴトクが存在しないという点は強く、清掃の容易さではIHクッキングヒーターが有利である。
調理によって発生するレンジフードや換気扇の汚れについては、ガスコンロであってもIHクッキングヒーターであっても、調理対象の脂分によって発生するため、比較することは困難である。
オール電化の場合ガス熱源と違い、住宅内や住宅周辺に燃料を持ち込むことがないため、安全な熱源システムといえる。ガスを使用した住宅の場合、住宅内に都市ガスやプロパンガスが敷設されているため、ガス漏れの心配や不完全燃焼による一酸化炭素中毒の心配を考慮しなければならない。
オール電化住宅では、熱エネルギーとなる電気は電力会社で管理されており、付近に燃料が存在することの危険性を気にする必要はない。ガス漏れによる引火の危険性などが無くなるため、より安全な生活を実現できる。
オール電化住宅では、調理器具はIHクッキングヒーターなどが使われるのは前述した通りである。住宅内でガス燃料を燃焼させないため、室内空気が汚れることがない。室内の二酸化炭素の増加や、不完全燃焼の心配から解放されるのも利点の一つといえる。
オール電化住宅では、貯湯タンクを住宅内に設置することになり、これを災害時の雑用水として水や湯を利用できる。
貯湯タンクは、電気エネルギーで加熱する電気温水器と、CO2などの冷媒を用いたヒートポンプ温水器がある。ヒートポンプを活用した温水器は「エコキュート」として販売されている。
貯湯タンクは、長期に渡って水や湯を貯蔵するため、瞬間的に高温にするガス給湯器などと比べ、汚れについての問題がある。内部の汚れによる衛生面の問題があり、タンクに貯蔵された水は飲用に適していない。手洗い用や入浴用、トイレ洗浄用など雑用水として使用するのが原則である。
貯湯タンクの汚れについては、オール電化のデメリットとも取れるため、後にデメリットとして解説する。
オール電化住宅に居住する人の生活時間帯が「深夜電力利用重視」の生活スタイルであれば、電力会社との契約をオール電化住宅に特化したメニューとすれば多大なメリットがある。
オール電化住宅で採用される電力の契約メニューは、深夜の電気料金を非常に安く使える契約体系であり、一般的な従量電灯契約と比べ半額以下の料金体系となっている。
電気料金が割安な時間帯は、電気温水器だけでなく全ての電気機器を対象としている。電気料金が安くなるため、洗濯機や乾燥機、IHクッキングヒーターなど大きな電力を必要とする家電を夜間に利用する生活スタイルであれば、大幅に光熱費が削減できる。
太陽光発電システムを併用すれば、昼間使用する電力のほとんどを太陽光パネルからの発電でまかない、夜間は安価な電力を使用できるため、最大限の省エネルギーが可能である。従来と比べて、電気エネルギーの消費を約80%低減できる。
太陽光発電システムを併設したオール電化住宅では、夜間の安い電力で電気温水器やエコキュートに貯湯・蓄熱し、昼間の高い電力は太陽光発電システムによってまかなうという、電力消費としては非常に理想的な生活スタイルが構築できる。
昼間にあまり電力を使用しなかった場合でも、電力会社は余剰電力を買取り、買い取った電力量に応じて電気料金を需要家側に支払う。太陽光発電システムによる余剰電力の買取単価は、オール電化住宅契約の場合、従量電灯契約よりも高く設定されるため、太陽光発電の償却期間の低減をより短く設定できるという資産上のメリットが生まれる。
数多くのメリットがあるオール電化だが、コストメリットがあるか十分なシミュレーションが不可欠である。光熱費シミュレーションを行い、メリットが得られるか検討すべきである。
オール電化を採用する場合の、デメリット・欠点について解説する。オール電化住宅は、熱源の一元化を図ることによる多くのメリットが生まれるが、ガス併用より不利な点もいくつかある。
ここで解説する内容は単純に「デメリット」とできない内容もあるが、個人の嗜好によってメリットがデメリットともなり、その逆のパターンも考えられる。十分な比較検討を行うべきであり、これら項目をメリットと捉えるか、デメリットと捉えるかは個人の判断に委ねられる。
オール電化住宅では火を使用しないため、加熱を伴う調理に満足しないユーザーもいる。中華料理など火力を重要視する調理を頻繁に行う家庭では、大火力をユーザーが求めるため、IHクッキングヒーターでは満足しないことが考えられる。
IHクッキングヒーターでも、大容量機種であれば大火力を実現しているが、直火を好むユーザーでは満足しないという意見もあり、個々の嗜好によって評価が大きく左右される要素である。
ガスコンロを使用しないことにより、火を見る機会が減少する。子供の教育のために火を使い「火は熱いもの、危険なもの」という意識を芽生えさせる教育が難しくなり、教育上良くないという意見があり、問題視されることが考えられる。
「火を使わない」というのは高い安全性につながるが、情操教育として「家庭内の火」が存在しないことは、デメリットのひとつとなり得る。
オール電化住宅の場合、エコキュートなど電気温水器を設置するのが一般的である。貯湯量によって違うが、高さ2mを超える大型のタンクを敷地内に設置しなければならず、設置スペースが必要である。ガス併用の住宅であれば、これらは給湯器やマイコンメーターといった機器に置き換わる。
電気温水器は重量が大きく、370リットルの機種であれば450kg程度の重さである。戸建住宅で電気温水器を施工する場合、建物に隣接した場所にコンクリート基礎を打設し、エコキュートや電気温水器を設置する。
マンションのバルコニーやメータースペースに電気温水器を設置するには、柱や梁、床強度を構造的に強化するなど、検討が必要となる。
設置した電気温水器やエコキュートは、地震によって容易に倒壊しないよう、強固に固定しなければならない。メーカーが指定した基礎サイズと強度を確保し、所定のベース金物で固定することになるが、倒壊につながらないよう十分な強度と施工管理が求められる。
特に水槽類は、地震によって内部の水が大きく移動する「スロッシング」という現象ため、特に強固に連結して支持することが重要である。電気温水器は水槽のひとつであり、地震時の水平力を大きく受けるおそれがある。
オール電化住宅の給湯設備は通常、深夜の安い電気代によって湯を作ってタンクに貯蔵し、保温することで熱源としている。使用時には、熱いお湯を水で薄めて適温にし、必要温度で使用する。
昼間に大量の湯を使用すると、熱量を失ってしまい、電気代の高い時間帯にお湯を作ることになり、オール電化住宅のメリットを失ってしまう。オール電化住宅の昼間の電力単価は極めて高く、昼間から夜間に電力需要をシフトするのを基本とすべきである。
昼間にエネルギーを多く使用する生活ではオール電化のメリットを享受できない。オール電化に適応した電気料金契約では、昼間電力の電気料金は深夜電力の4倍も高いため、電気代で損をすることになる。
オール電化住宅は、深夜の安価な電力を活用する電気契約を基本としている。深夜の安い電力を利用する代わりに昼間電力は通常よりも大幅に高く、日中在宅が長い家庭では電気代が著しく高くなるおそれがある。
共働き家庭など日中に在宅しておらず、冷蔵庫など最低限の電力のみ使用している家庭であれば、昼間時間の消費電力を小さく抑えられ、電気代が高くなることはない。
昼間の単価の高い電力を使って、IHクッキングヒーターを長時間に渡って運転させて調理をしたり、テレビや入浴など電気を使う生活をすると、エコキュートの熱量不足だけでなく、電気代のアップにつながるおそれがある。深夜電力が安価な電気契約をしておきながら、昼間に電気を多く使う生活は合理的ではない。
電気温水器やエコキュートはタンクに貯水された状態の水を利用する。長期間貯留した水は水質劣化が進行するため、タンク内部が汚れていれば水質が悪くなる。
貯湯タンクは定期的に清掃するのが原則であるが、貯湯タンクの仕様書や取扱説明書にも記載されている通り、貯めている湯をそのまま飲んではならない。貯湯タンクの湯を飲料用に使う場合は、一度沸騰させてから使うように求められている。
電気温水器との比較であるが、ガス給湯機を使用すれば24時間いつでも、瞬時に湯を得られ、そのまま飲用に使えるため「ガス給湯器の方が衛生的」と評価できる。
IHクッキングヒーターを使用した際、ペースメーカーの設定がリセットされたという事例が報告されている。IHクッキングヒーターから放出される電磁波にペースメーカーに影響するという考察もあるので、使用者の健康状態によっては、オール電化住宅に住めないという場合も考えられる。
ペースメーカーの利用者ではない人に対し、電磁波が人体に悪影響を及ぼすかという点については、「有害である」「無害である」という正式な通達が出ていないため、危険または安全という記載は不可能である。
標準仕様のIHクッキングヒーターでは「ホーロー」「鉄」「ステンレス」の3種類の調理器具を加熱できる。アルミや銅の加熱も対応しているが、前述した3種類の器具よりも熱効率が悪化する。従来の土鍋などは完全に使用不可能であるため、鉄片を組み込んだ特殊仕様の土鍋でなければ使用不可能である。
IHクッキングヒーターに代表される電磁調理器は、電磁波の磁界成分を利用した加熱調理器である。電磁調理器にはコイル状の装置を内蔵しており、25[kHz]の高周波電流を流すことで渦電流が発生し、ホーロー・鉄・ステンレスなど、磁化されやすい金属に電磁誘導が生じ、金属体の電気抵抗によって熱に変化する。
渦電流が流れなければ熱が発生しないため、電気が流れない絶縁体は加熱不可能である。土鍋、ガラス容器は絶縁体であり、渦電流が容器を通らないため熱が発生しない。土鍋を使用する場合は土鍋底部に鉄製プレートや電磁誘導体が織り込まれた、電磁調理器用の土鍋を使用すると良い。
電磁調理器は、銅やアルミニウムを使用すると効率が悪くなる。銅やアルミニウムは、電気抵抗が低すぎるため導電性能が非常に高く、渦電流が金属体内部に入り込まず金属体の表面を抜けてしまう。電気抵抗が極めて小さいため、熱の発生が弱くなるというデメリットがある。
銅やアルミニウムの容器を電磁調理器で加熱するためには、高周波電流が大きくなるよう設計された、銅・アルミニウム容器対応の製品であれば可能である。電磁調理器を購入する際には、これらの容器に対応しているかの確認も大切である。
IHクッキングヒーターを使用した調理では、周辺空気を熱することがないため、上昇気流が発生しない。通常のレンジフードの誘引力では換気効率が低下するため、IHクッキングヒーターに対応した専用のレンジフードの設置が推奨される。
ガスのような直火ではない電磁調理では、レンジフード内部が効率よく温められないため、調理対象物から発生する水蒸気によりフード内部に結露が発生しやすいという問題点もあり、解決の議論がなされている。
オール電化は電気エネルギーに依存した熱源システムのため、停電に弱いという大きな欠点がある。停電が発生した場合、全ての熱源機器を電気に頼っているため、熱源がまったくない状態になる。
照明、エアコン、冷蔵庫など住宅内には数多くの電気機器があるが、電気がなければまったく使えない。これはガス併用住宅でも同様であるが、現代の暮らしにあって、電気を失えば生活することは極めて困難となる。
換気ファンが運転できないため危険を伴うが、住宅の熱源を電気だけでなくガス併設としていれば、ガスコンロや給湯器を使用できる可能性があり、停電時でも調理の一部の家事ができる。ただし、100V電源を供給する給湯器を使用している場合、停電になれば電源が供給できないため着火できず、給湯器を運転できないのでこれは電池式の給湯器に限られる。
ガスコンロは、乾電池を使用するタイプであればコンロに着火できるが、レンジフードや換気扇が運転できない環境では、二酸化炭素や一酸化炭素を屋外に排出できないため危険が伴う。本来、換気扇が運転できないならば、ガス給湯器やコンロを使うべきではない。
電気を使用しないガスカセットコンロなどを常備していたとしても、換気が不十分では危険を伴う。ろうそくなどを照明の代用として、不注意により火災になった事例は多くあり、オール電化で火を使わない生活に慣れた住人が、使い慣れないガスコンロやボンベの使用により火災を起こす二次災害も懸念される。
換気が不十分な状態では、酸欠事故のおそれのほか、発生した蒸気や油によって室内を汚損してしまうおそれも考えられるため、換気設備なしでのガスコンロ使用には特段の注意が必要である。できる限り使用しないことが望まれる。
オール電化住宅であっても、エコキュートや電気温水器など水槽内に貯湯するシステムを採用していれば、自然放熱で冷めてしまうまでの間、湯が利用できるので、これを利用すると安全である。安定した電源を求めるのであれば蓄電池の併設が考えられるが、建築用の蓄電池は非常にコストが高い。電気自動車によるV2Hなどを併設すれば、比較的安価な停電への備えが可能となる。
太陽光発電設備や風力発電など、自然エネルギーを利用した発電設備のうち、自立運転機能を搭載した設備を併設しているオール電化住宅であれば、停電時でも電気が使える可能性がある。
太陽光発段設備によって供給できる電気は、パワーコンディショナーに付属している専用コンセントからの供給に限られ、建物全体への電源供給はできない。
自然エネルギーを用いた発電設備は、環境によって発電量が大きく変動する。太陽光発電は夜間にまったく発電せず、風力発電は風が吹かなければ発電することはない。
これら自然エネルギーを由来とした発電設備を設けていたとしても、安定した電力供給を行うことはできず、蓄電池を併用しなければ安定した電力とならない。
蓄電池は非常に高価であり、蓄電池を設置できたとしても家電ほどの電力を消費する機器を動かすのは難しい。電気自動車を活用できれば良いが、小型の可搬蓄電池では、「携帯電話の充電」や「ノートパソコンの利用」といった限られた利用しかできない。
オール電化とガス併用を比較検討する場合、光熱費の差額をまず考える。オール電化・ガス併用ともに契約メニューが均衡しているため、どちらかが確実に安いということはいえないのが実情である。
オール電化住宅を採用する場合、給湯用の熱源が電気温水器になるため、深夜電力を有効活用する前提で契約プランが決められている。電気温水器やエコキュートの利用時間に合わせて洗濯機や乾燥機を利用したり、湯沸しや調理を深夜電力にシフトできれば、電気代が非常に安くなり、大きなメリットが生まれる。
昼間の電気料金が高い時間帯に多くの電力を使用すると、電気代が非常に高くなる。生活スタイルの変化を強いられる場面もあるため、熱源の選定には、慎重な検証が必要である。
オール電化契約を行う場合、全ての機器が電気主体となるため、使用する電力が大変多くなる。IHクッキングヒーターやエアコンを使う家庭では、契約アンペアの設定に注意が必要である。
ガス併用住宅とオール電化住宅の契約アンペア値を計算で求める方法については、契約アンペア変更と基本料金計算で解説しており参照。
オール電化住宅のメリットを享受するためには、電化住宅に適した料金体系の電気供給契約を締結することが重要である。東京電力管轄であれば「電化上手」や「おとくなナイト」という契約メニューが用意されており、深夜に多くの電力を使用し、かつ昼間に電力をあまり使用しない家庭であれば、金額面に大きなメリットがある。
エコキュートの電気温水器が設置されている場合や、IHクッキングヒーターやエアコンを深夜に多く使用する場合、深夜電力の有効活用により電気代が優遇される。
電化住宅契約、おとくなナイト契約は共に深夜電力の電気代を優遇する。電化住宅契約はPM11:00~AM7:00が深夜電力時間として設定されているが、おとくなナイト契約では「深夜電力時間を何時間適用するか」によって割引率が変化する。
「8時間」「10時間」の2つに分類され、PM10:00~AM7:00を深夜とする契約と、PM11:00~AM8:00を深夜とする契約に分けられる。深夜時間を長く設定したメニューは、割引率が悪くなるため注意を要する。
オール電化住宅としていなくても深夜電力優遇メニューに契約できるが、電力会社ではすべての熱源を電化することで、全電化による特別割引を用意している。一般的に5%程度の電気料金の優遇を受けられる。
通常の「従量電灯」契約では、電気を使用する時間帯に応じた料金体系ではなく、どの時間に電気を使用しても同じ電気代が掛かる。「電化上手」のオール電化専用メニューでは「朝晩時間」「昼間時間」「夜間時間」の3つに単価を分け、昼間の電気料金を高く、深夜の電気料金が安くなる設定としている。かつ、夜間蓄熱型の電気機器を設置している場合、その電気容量に応じて1kVAあたり150円程度の割引を行う。
「昼間時間」は「夏季(7月1日~9月30日)」「その他季(10月1日~翌6月30日)」に分類し、夏季のエアコン稼働率が極めて高くなる時期の電気料金が非常に高いことに注意が必要である。夏季の昼間はエアコンを最も稼働させる時間帯になるため、電気代が非常に高くなる可能性がある。
太陽光発電設備は、オール電化住宅と相性が良いとされている。夏季のエアコン運転は非常に大きな電力を必要とするが、夏期の晴天時には、太陽光発電設備によって多くの電力が発電される。
エアコンによって使われる電力が太陽光発電で発電されれば、太陽光発電で発電した電力で空調機を運転しているのと同じになり、電力会社から高い時間帯の電気を買う必要がない。
天気が悪く暑い日にはメリットを享受できないが、高い電気代の時間帯に消費電力を大きく削減できるのは魅力的といえる。
オール電化住宅の熱源として「エコキュート」と呼ばれる、自然冷媒を利用したヒートポンプ方式の給湯システムが普及している。「エコキュート」という名称は関西電力の商標であり、正式名称は「自然冷媒ヒートポンプ給湯機」とされ、オール電化住宅の多くに用いられる電気温水器のひとつである。
エコと称されるネーミングが省エネルギーをイメージさせていることもあり、オール電化のイメージアップに貢献している。空調機とほぼ同様の熱サイクルで動作する「ヒートポンプ」を活用した電気温水器で、高いエネルギー効率により省エネルギーが図ることができる。
エコキュートはエアコンと同様、コンプレッサーを内蔵した室外機を給湯器に併設し、自然冷媒を電気の力で圧縮・膨張させる。自然冷媒がガス・液体と変化し、気化と液化による熱交換を利用するシステムである。エアコン室外機はフロンを冷媒にしているが、エコキュートは二酸化炭素を冷媒としているという違いがある。
フロンは、冷媒としての性能が非常に高い特徴があるが、オゾン層の破壊が懸念されるため、その利用は削減に向かっている。フロンに替わり、代替フロンと呼ばれる環境破壊の係数が低い冷媒が普及したが、これも地球温暖化につながるおそれがあるとして、使用が制限されつつあり、環境負荷の小さな冷媒が求められている。
二酸化炭素冷媒はオゾン層破壊係数がゼロ、地球温暖化係数も代替フロンより著しく小さいという利点がある。二酸化炭素冷媒の欠点として、冷房用途では効率が低下するという欠点があるが、エコキュートは電気温水器の一種であり冷媒の使用目的は昇温のみのため、効率低下にはつながらない。
これは消音のみを目的とするエコキュート用の冷媒として合理的であり、フロンを用いない冷媒の採用が可能となった。
二酸化炭素冷媒を用いたヒートポンプでは、90℃という高い温度での給湯が可能となり、コンパクト化を推し進めることも可能となった。
多くの利点を活かし、エコキュートでは二酸化炭素冷媒が広く採用されている。エコキュートを使用することにより、従来の電気温水器と比較して消費電力を1/3に抑えられるため、単純に電気エネルギーで昇温する電気温水器と比較して、月々の電気代を1/3にまで低減可能である。
エコキュートを使用した浴室暖房、床暖房、浴槽の追い焚き、3階までのポンプアップなど、ガス給湯器のように熱を利用できる製品も開発されており、選択の幅が広くなった。
自然冷媒を利用していない従来の電気温水器では、電気エネルギーをそのまま熱エネルギーに変換しているのみなので、発生熱量は消費電力と同じである。エコキュートは冷媒によるヒートポンプによって熱交換するため、消費電力を1/3程度まで削減できる。
エコキュートは非常に高価な設備で、初期の設備投資が大きい。電気温水器と比較した減価償却については、シミュレーションを十分に行い、無理のない計画とするのが良い。
オール電化の住宅を採用した場合、調理用コンロを除き、大きく変化するのは給湯熱源である。ガスを併用した住宅であればガス給湯器が設置されており、水はガスの炎で瞬時に温められ、湯となって供給される。
電気エネルギー用いて水を瞬間的に熱湯にするのは難しく、非常に大きな電力が必要であり一般家庭では使用できない。電気式の瞬間湯沸器は、家庭用で用いられない三相200Vが必要で、ガス給湯器と同様の湯量を確保するには、20~30kWという極めて大きな電力を必要とする。住宅用で20~30kWの電力を得るのは不可能で、このような機器は業務用機器に限られている。
電気温水器やエコキュートは、長時間に渡って電力を与えて昇温する必要があり、大きな消費電力を必要とする。オール電化住宅では、電気料金の安価な深夜電力を活用して水を湯に昇温するのが一般的であり、深夜電力が活用できなければ、電気料金の低減は不可能である。
320L、370L、460Lなど、家族構成に合わせたラインナップがある。必要なタンク容量に応じて、貯蔵された水は熱交換器を経由して高温に昇温される、タンク内部は常に満水状態であり、下部に冷たい水、上部に熱い湯が層状に貯蔵され、必要な温度で利用することとなる。
夜間の電力のみを利用して昇温し、昼間は最低限の保温程度とするのが最も合理的な運用となる。昼間に出湯量が多すぎると、単価の高い昼間電力で昇温しなければならず、電気料金が割高となるため注意を要する。
IHクッキングヒーターとは、電磁誘導を加熱原理にした調理器具である。ガスなど直火を用いず、電気エネルギーを鍋に直接伝える仕組みのため、安全性が高く清掃がしやすいクリーンな調理器具として人気がある。
調理器具に対してエネルギーを直接伝達するため非常に効率が良く、従来から普及しているシーズヒーターと比べて高効率なため、消費電力を低く抑えられ、電気代の低減にも寄与する。
オール電化住宅ではガスコンロを設置できないため、コンロとしては「シーズヒーター」か「IHクッキングヒーター」を選択するが、ほとんどがIHクッキングヒーターとなる。
IHクッキングヒーターは、誘導加熱コイルから発生する磁力線を鍋の底部に伝え、渦電流(うずでんりゅう)の発生によって熱を生み出す。スイッチを入れ、誘導加熱コイルに通電すると、20~30kHzの高周波電流が流れ、鍋の電気抵抗が熱に変化する。
鉄やステンレス、ホーロー製の鍋であれば、渦電流が効率良く流れるため問題なく加熱できるが、銅やアルミなど電気抵抗が小さな鍋では20~30kHzの高周波電流が流れても発熱しないため、60~90kHzという高い周波数を持つ電流を流さなければならない。周波数を高めることで、銅やアルミニウムでも電気抵抗を増大させられ、効率の良い発熱が可能である。
銅やアルミニウムの鍋を発熱させられるかは、IHクッキングヒーターのひとつの機能となるため、取扱説明書や仕様書に使用可否が記載されている。鉄やステンレスを加熱する場合と比べ、発熱効率は20~30%低下する。
IHクッキングヒーターの主要な構造部材として、加熱コイル、トッププレートがある。それぞれの役割と特徴を説明する。
クッキングヒーターの加熱コイルは、銅線をより合わせたコイル形状となっており、渦巻状に構成されている。IHクッキングヒーターによって鍋を加熱させるための、最も基本的で重要な部分である。
20kHz~30kHz、銅やアルミニウムを加熱できるオールメタル対応製品では、90kHzという高周波を発生させ、導体損失を抑えて鍋に対して効率良く渦電流を伝達させる。コイルを分割して加熱ムラを防ぐなど、工夫がなされた製品もある。
トッププレートは鍋を乗せる部分であり、鍋に渦電流をムラなく伝えるためフラットな仕上がりとなっており、ガスコンロのゴトクと比べて清掃がしやすいという特徴がある。トッププレートは一枚ガラスにステンレス製の枠が取付けられており、耐熱性はもちろんのこと、耐水性・衝撃性も高く、吹きこぼれによる水損にも耐える。
グリルは、クッキングヒーター特有の「渦電流によって熱を伝える」という仕組みではなく、上下にシーズヒーターを内蔵して、直接赤外線を与えることで、調理対象の両面焼きができるよう製作されているのが一般的である。一般的なガスコンロと同様、受け皿や焼き網などが内蔵されており、ガスの炎の代わりにヒーターからの熱を伝える。
グリル部分の温度調整は、シーズヒーターのオンオフによる仕組みが一般的で、多数のヒーターに通電することで強運転、通電本数を少なくすることで弱運転といった調整をしている。
安全性がガスコンロよりも高いといわれるIHクッキングヒーターであるが、高温を取り扱う調理器具で有ることに違いはなく、使用方法を誤ると火傷事故につながる。
IHクッキングヒーターの近くに金属体を置くのは危険である。渦電流は電気抵抗の発生する金属体を発熱させるので、フォークやスプーンはもちろん、腕時計なども発熱させる。ガスコンロと違い、直火を見ることがないため、トッププレートが熱いのか冷めているのか直感的な判断が難しく、不用意に触ってしまうとやけどのおそれがある。
アルミは本来、IHクッキングヒーターではあまり加熱できない材料であるが、高周波電流を強化したオールメタル対応IHでは容易に加熱するので、思いがけぬ部分で発熱・接触し、火傷事故になることが懸念される。
IHクッキングヒーターは大きな電力を使用する機器であり、大出力の製品では5kWを超える製品も存在する。卓上型の簡易な製品でも、100V15Aを最大限使用する製品が多く、単独回路のコンセントを使用するのはもちろんのこと、テーブルタップを用いた電源供給は厳禁とされている。
テーブルタップは許容電流が小さな製品もあり、かつ他のコンセントから電源を確保している状態では、過負荷による発火等の原因となるため注意が必要である。感電防止のため、調理器具に接地(アース)を確保すると、より安全性が高まる。
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