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電気設備の知識と技術 > 電気の基礎知識 > エアコンの能力と消費電力・電気代の関係とは

 2024.3.31

エアコンに使われるエネルギー

エアコンは、非常に大きな電力を必要とする電気機器であり、長時間に渡る電力利用は電気代に直結する。

住宅の場合、建物で使われるエネルギーの比率は、エアコンによる空調エネルギーが30%前後を占めている。エアコンによって発生するエネルギーを節約することで、大きな省エネを図ることができる。住宅におけるエアコンは、電気エネルギーで圧縮機(コンプレッサー)を動作させる「EHP方式」である。

業務用エアコンあれば、ガスの燃焼によって発生するエネルギーで動作する「GHP」や、灯油の燃焼によるエネルギーで動作する「KHP」が普及しているが、家庭用エアコンでは、電気熱源以外が採用される比率は非常に少ない。

大きなエネルギーを必要とする動力電源のエアコンも使われることはなく、コンセントに接続して稼働する100Vまたは200Vのルームエアコンが一般的である。

ここでは、家庭用エアコンの性能や機能、特徴に絞った解説を行う。EHPやGHPを含む、業務用パッケージエアコンの記載は少なく、電気設計に必要な基礎知識程度に留めている。

エアコンの消費電力と冷房能力の違い

エアコンの能力表示として、「冷房能力」「暖房能力」や「消費電力」があるが、これらはどれも「kW」という単位を使用しており、空調性能と消費電力のどちらを示しているのか、まぎらわしい表示となっている。

電気設備設計の分野でも、「エアコンは何ワットか」と発言すると、冷房能力か、暖房能力か、消費電力かを判別できない。ワットという表現は熱と電気の両分野で用いられるため、十分な確認が必要である。

冷房能力や暖房能力として記載されている「kW」という数値は、エアコンが必要とする消費電力ではなく、冷房や暖房を行なう際の性能表記であり、ここでは空調の能力と消費電力の関係について解説する。

成績係数(COP)による消費電力と空調能力の違い

エアコンが必要とする消費電力に対して、発揮する空調機の冷房能力、暖房能力は大きい。空調機の性能は消費電力1kWに対して、冷暖房の能力は5kWというように、4~5倍の大きな数値を示している。

必要とする消費電力に対し、冷房能力や暖房能力がどれだけの倍率で得られるかについては、「COP」と呼ばれる基準で示される。

エアコンの仕様書には、Coefficient of Parformance(COP)という数値が記載されている。COPは、入力した電力の何倍の出力を得られるかを数値で示しており、数値が大きいほど高効率なエアコンと判断可能である。

消費電力1kWに対して、冷暖房能力5kWであれば「COP5.0」と表現する。一般的なルームエアコンであれば、COPは5.0を超える高い数値を示す。100Wのエネルギーで500Wの空調効果を得られるため、エアコンは総じてエネルギー効率が高い。

業務用のマルチエアコンでは、COP3.0~3.5程度、エアハンドリングユニットのセントラル空調システムでは、COP2.0~2.5といった低い数値になるのが一般的である。対して、電気ヒーターを使用し、1kWの電力で1kWの熱量を発生させた場合、COPは1.0である。エアコンは、電気暖房の4~5倍もの効率を持っており、省エネルギーに貢献している。

ZEH・ZEB対応のエアコン選定

脱炭素、CO2削減の観点から、エアコンを要因として発生する消費電力の低減が求められている。より小さな消費電力で大きな冷暖房効果を得ることができる。

エアコンの能力と効率の比率である「COP」を3つの区分に分類し、区分(い)に適合しているエアコンは、最も電力効率が高いものとして評価される。

定格冷房能力の区分 定格冷房エネルギー消費効率の区分を満たす条件
区分(い) 区分(ろ) 区分(は)
2.2kW 以下 5.13 以上 4.78 以上((い)未満) 4.78 未満
2.2kW を超え 2.5kW 以下 4.96 以上 4.62 以上(同上) 4.62 未満
2.5kW を超え 2.8kW 以下 4.80 以上 4.47 以上(同上) 4.47 未満
2.8kW を超え 3.2kW 以下 4.58 以上 4.27 以上(同上) 4.27 未満
3.2kW を超え 3.6kW 以下 4.35 以上 4.07 以上(同上) 4.07 未満
3.6kW を超え 4.0kW 以下 4.13 以上 3.87 以上(同上) 3.87 未満
4.0kW を超え 4.5kW 以下 3.86 以上 3.62 以上(同上) 3.62 未満
4.5kW を超え 5.0kW 以下 3.58 以上 3.36 以上(同上) 3.36 未満
5.0kW を超え 5.6kW 以下 3.25 以上 3.06 以上(同上) 3.06 未満
5.6kW を超え 6.3kW 以下 2.86 以上 2.71 以上(同上) 2.71 未満
6.3kW を超え 7.1kW 以下 2.42 以上 2.31 以上(同上) 2.31 未満

小能力時高効率型コンプレッサーによる省エネ

ZEHの検証をする際に、エアコンの機能として選択できる項目に「小能力時高効率型コンプレッサー」がある。エアコンが非常に小さな負荷運転をする場合に、定格能力の1/10以下で運転することができる製品であることを条件としているものであり、定格冷房能力2.2kW以上の空調機に対し、最低負荷運転時に0.2kWといった微小な能力で運転することで、低負荷であっても高い効率を維持している。

エアコンメーカーが収集している運転状況の出現記録によれば、エアコンをオンにした瞬間の立ち上がり状態や、中間期や冷暖房完了後の間欠的なコンプレッサー起動は出現率が低く、10%~30%の低負荷状態が多いというデータもあり、低負荷状態での効率が高いほど、省エネに寄与するものと考えられている。

小能力時高効率型コンプレッサーを搭載しているエアコンメーカーは限られており、「搭載している」として検証するためには、どのメーカーのどの型番を使用するのかを確定する必要がある。メーカーフリーとして計画している案件で、この機能を有り前提とする場合には、エアコンを複数メーカーで検証することができない可能性があるので、選定には注意が求められる。

実際に、ZEH検証に際して評価対象とする場合、「JISに基づく自己適合宣言書」にて小能力時高効率型コンプレッサーの搭載があることを宣言している製品を選定すると良い。

エアコンの定格電力とインバーターによる電力変動

6畳用の冷房能力2.2kWのエアコンであれば、定格運転状態の消費電力は440W程度を示す。これは「定格電力」と呼ばれ、JISで定められた基準状態での消費電力と能力が示されている。

定格電力は、コンプレッサーが運転している状態で発生する電力であるが、最大能力で運転している状態ではない。外気温が高く、室内温度も高い状態で冷房をすれば、インバーターによって能力を高めて運転するため、定格電力よりも大きな消費電力が発生する。

十分に空調が行われ、設定温度まで調整された後であれば、インバーターによって能力を低下させ、送風運転や弱運転に切り替わるため定格電力よりも消費電力は小さくなる。

エアコンの消費電力は外気温、室内温度、室外機の温度、フィルターの汚れ、冷媒配管の距離など多くの要素で変動するため、空調の消費電力算出は極めて困難であるが、外気温度が低く、室内温度も低い状態から室内を暖房するというパターンが、最も消費電力が高くなる傾向にある。

このことから、エアコンの仕様表には「低温暖房」による消費電力が示されており、2.2kWの小さな能力のエアコンの定格消費電力が500W程度であっても、低温暖房時には1,500W~2,000Wの消費電力になることもあるため、ブレーカーの選定には十分な注意が必要である。

寒冷地仕様エアコンの消費電力

通常ルームエアコンは外気温-15℃程度が利用可能な温度範囲であり、それ以下となる東北や北海道では。-15℃を下回った状態でも暖房能力が低下しない仕様が求められる。

外気温がより低く、室内も冷え切った状態から一気に暖房する必要があるため、寒冷地仕様のエアコンは室内機の吹き出し温度が高く設定されており、凍結防止ヒーターや、-25℃といった厳しい寒さでの稼働、雪の吹込み防止としてファンが長時間運転するなど、消費電力が極めて大きくなる。

低温暖房時の消費電力は一般仕様のエアコンと比較して2倍以上であり、2.2~2.8kWの小型なエアコンであっても、4,000Wもの電力が発生する可能性がある。

部屋面積に応じたエアコン能力の一覧表

部屋の大きさに応じたエアコン能力の目安は、下記の通りである。

震災以降、需要家の節電によって電力供給を安定化する施策が各地で行われている。電力会社が必要とする節電目的は、瞬間的に最大となる消費電力を低減させ、発電設備や変電設備、送配電線に過剰な負荷が掛からない。

夏場の暑い時間帯には、多くの需要家で空調機が運転される。エアコン消費電力のピークは、室内温度が高い状態や、外気温が高い状態で発生しやすい。冷房による最大の消費電力は、外気温が上昇する夏場の12時~15時頃に発生しやすい。

日本国内では、北海道や東北の一部を除き、電力ピークは「冷房を使用する夏場」に発生する。この瞬間的に流れる大電力が処理できるように、電力会社は発電や送配電設備を計画しているため、中間期や冬季は設備利用率が小さくなる。この時期に、一部の機器を停止してメンテナンスなどが行われている。

エアコン電気料金算出の困難性

外気温が低下した状態での冷房や、室温が設定温度まで調整された状態であれば、エアコンは送風運転に近い運転となり消費電力は低く抑えられる。

エアコンの電源を投入した瞬間など、室温の差が非常に大きい場合、コンプレッサーの稼働率は100%となり、大きな電流が流れる。室温の調整が完了すれば、コンプレッサーの運転が停止し、ファンの回転速度も遅くなるため、消費電力は小さくなる。

照明や電熱機器と違い、エアコンの消費電力は外気温や室内温度といった空気環境に大きく左右され、運転状態が常に変化するという特徴がある。「運転時間 × カタログ消費電力」といった単純な計算式が成立しないため、エアコンの消費電力や電気代を算出するのは非常に難しい。

エアコンの消費電力と電気代の関係

エアコンは「圧縮機(コンプレッサー)の動作」「ファンの回転駆動」に電力が使われる。室内機、室外機の両方に搭載されているファンは、エアコンが運転している間、どちらも回転駆動し続けるため、これを停止させることはできない。

エアコンの使用に対して省エネルギーを図るためには「コンプレッサーをどれだけ停止できるか」というのが基本となる。

エアコンを自動運転モードとすれば、室内の温度や湿度をセンサーが検出し、コンプレッサーの運転時間が自動的に調整されるため、省エネルギーとなる。

エアコンは、照明器具のような単純な熱負荷と違い、外気温・室温・温度設定・カーテンやブラインドの有無・在室人数・照明の数など、エアコンを設置している部屋の使い方、外気温度によって運転状態が激しく変化するため、消費電力を算出するのが非常に難しい。

定格電力500Wのエアコンで、最小100W、最大800Wの機種を想定し、下記にそれぞれの消費電力における電気代を示す。通常の電力契約は「従量料金」の方式であるため、フラット単価を27円として算出する。電気料金はkWを基準としているので、1000で除して単位を整合させている。

最小運転であれば1時間あたり2.7円、最大運転であれば21.6円と、8倍もの差がある。24時間連続運転状態を考えると、最小64.8円、最大518.4円である。

熱の出入りがないように断熱された部屋で、室内に発熱体(人、動物、電気機器等)がまったくない状態であれば、ほとんどの時間が最小電力となり、1日あたり100円以下の電気代でエアコンが使用できる可能性がある。

対して、多くの人が使用している部屋、電気機器が多数稼働しているサーバールームのような部屋では、最大電力か長時間に渡って発生する可能性があり、1日あたりの電気代が500円に近くなる可能性がある。直射日光が入り続ける部屋などは、極めて条件が悪い。

室温が設定温度と同じになった瞬間から、コンプレッサーは運転停止し送風運転のみが行われる。部屋が狭かったり、温度設定が室温と大差なければ、すぐに設定温度まで温度が調整され、以降は送風運転になり消費電力は格段に小さくなる。

断熱が十分に行われている住宅等であれば、外部からの熱の移動が少ないため、空調された空気は外部へ伝わりにくく、長期間に渡って空調温度が維持できるため、省エネルギーとなる。

電圧や能力によって電気代は変わらない

100Vのコンセントに接続するエアコンと、200Vのエアコンは、どちらを選択しても電気代が変化することはない。大型の機種ほど大きな電力を使うと思われがちだが、エアコンの電力は「空調するためにどれだけコンプレッサーとファンが動いたか」に左右されるため、大型のエアコンで短時間に一気に空調し、長時間に渡って停止状態にすれば、電気代は少なく抑えられる。

能力が不足したエアコンを選定し、適した室温に調整できずにいつまでも最大運転をしていれば、小型のエアコンでも電気代は高くなる。

エアコンの電気代は、暖房や冷房を行なう部屋の断熱性能や、空調を行なう部屋にある熱に左右される。消費電力が同じであれば、電圧や能力がどれだけ違っていても、電気料金は変わらない。

24時間連続運転は省エネルギーか

24時間エアコンを連続運転し続けたとしても、外部から熱の出入りが少なく、室温が設定温度と同じで維持できるのであれば、コンプレッサーの運転は行われず、電気代が高くなることはない。

風通しが良く、外部温度影響を受けやすい建物で24時間連続運転をすると、コンプレッサーが停止する時間がほとんどなく、大きな電力を長時間必要とするため、電気代が大きく上昇するのが予測できる。

「24時間連続運転すると省エネルギーになる」と単純に考えることはできない。断熱が十分に行われている建物で、かつ出入りや換気がなく、直射日光が入らない部屋であれば、24時間連続運転であっても電気代が高くなることはない。

頻繁に出入りする部屋、直射日光が入り、カーテンやブラインドで遮光していない部屋など、熱条件が悪い空間を24時間空調すると、驚くほど電気代が高くなるため注意が必要である。

エアコンの省エネルギー運転

省エネルギーにつながるエアコンの運転方法や、節電の手法を紹介する。エアコンの消費電力を低減させるためには、コンプレッサーの運転時間が最小になるように制御することが重要であるが、コンプレッサーを頻繁に運転させない方策として、一工夫するだけで大きな省エネルギーにつなげられる。

温度設定を返るだけで数%の省エネになるというのは有名であるが、温度設定以外にも多くの省エネルギー手法があるため、その手法と効果を紹介する。

エアコンの温度設定を変更する

エアコンの温度設定は、消費電力に大きな影響を及ぼす。冬場の暖房は22℃~23℃、夏場の冷房は26℃~27℃に設定することでコンプレッサーの運転時間を短くし、エアコンの消費電力を大きく抑えられる。

エアコンの温度設定による消費電力の変動は、室内・室外の空気温度環境によるが、温度設定を1℃調節することで5~10%程度変動する。行政機関や電力会社では、夏は冷房を28℃設定、冬は暖房を20℃設定にして業務を行うという節電努力を行い、省エネルギー対策を励行している。

節電につながる運転方法(冷暖房共通)

エアコンの消費電力を少しでも小さく抑える方法として、6種類の手法を紹介する。エアコンを最新機種に買い換えるのは最後の手段として、日常的に行える簡易な手法を中心に記載した。

エアコンの風量を自動運転にする

ファン風量を自動設定にすることで、エアコン室内機に内蔵されているセンサー室温検知が有効活用され、室温が設定値に近づけば微風運転に切り替え、コンプレッサーを止めるといったきめ細かな制御が可能である。

外部から取り入れる空気が室温と同一であれば、コンプレッサーの停止時間が長くなり、消費電力が低減されて大幅な省エネとなる。

エアコンの自動運転機能は高性能である。手動風量調整では、設定により段階的にファンを強制運転するため、室温や外気温が快適温度になっても運転を弱めない。

手動で大風量設定にしていた場合、室温が適温まで調整されたとしても、常に大風量でファンを回し続ける。快適温度になってもコンプレッサーが運転してしまい、エネルギーを無駄にしてしまうこともある。できる限り、風量を自動設定とするのが推奨される。

フィルターの清掃をこまめに行う

エアコンは、室内空気を室内機で給気し、熱交換の原理で放出温度を調整している。室内機の給気部分に設置されているフィルタを清掃せず、ほこりが蓄積している状態で運転させていると、目詰まりによって風量が減少する。ファンの圧力損失を引き起こすので、結果として冷暖房効率が低下する。

圧力損失によってファンの運転に負担が発生すると、エアコンは回転数や効率を維持しようと高出力運転が行われる。エアコンに多くの電流が流れ、消費電力が大きくなり、電気の無駄につながる。

フィルタの汚れでエアコン能力が15%~20%も減少するとされ、定期的な清掃が欠かせない。エアコンの能力を低下させるだけでなく、ファンやフィルタに付いたほこりを部屋中にまき散らしてしまい、ハウスダストによるアレルギーの原因にもなる。最低でも2週間に1回程度は、掃除機等によってフィルターのほこりを取るのが良い。

室外機の前面を開放する

エアコンの冷暖房運転は、エアコン室外機によって外気を取り入れ、内蔵されている冷媒配管を通じて熱を交換する。冷房運転では、室外機前面から熱い排気を放出し、室内機からは冷たい風を室内に吹き出す。

室外機の前面にフェンスや壁があり、排気が跳ね返って室外機に戻るような構造では、自ら排出した熱い排気を再度吸い込んでしまい、エアコンの熱交換能力が非常に悪くなる。

給気と排気が近接し、お互いが影響してしまう状態を「ショートサーキット」と呼ぶ。ショートサーキットはエアコンの能力を大きく落とす原因になるため避けなければならない。

ショートサーキットを防止するためには、室外機の前面を十分に開放するのが原則であるが、狭い室外機スペースでは格子状フェンスの前に設置したり、風向調整を行うといった対策が必要である。

2台以上のエアコン室外機をバルコニーに設置している場合も、お互いの室外機同士が放出する排気を吸い込む原因となるため、注意が必要である。

換気扇やレンジフードを過剰に運転しない

換気扇やレンジフードは、部屋の空気を新鮮空気に置き換える重要な設備であるが、外気を強く室内に誘引するため、空調している室温が外気に近くなる。

24時間換気、トイレの換気、レンジフードなど、生活に必要な最低限の換気設備を使用し、過剰に換気を行わないことが省エネルギーにつながる。

扇風機やシーリングファンで室内空気をミキシングする

エアコンから放出される暖気は上部に、冷気は下部にたまりやすい性質がある。エアコンの自動風向調整を用いて空気をミキシングさせると、空調効率が向上する。扇風機やシーリングファンを併用して運転すれば、冷気と暖気が混合され、より快適な温度空間を実現できる。

暖房運転の場合は風向板を下向きに、冷房の場合は風向板を水平に向けることで、暖気と冷気の混合が効率良く行われる。

シーリングファンはスイッチによって回転方向を変更できる。冷房時・暖房時に合わせて設定を変えると良い。夏季は、下方向に風を送ることで直接冷気を身体に当て、清涼感を高められる。

冬季は上方向に風を送ることで、冷気を上部に、暖気を下部に誘引して部屋全体の温度分布を均一にする。シーリングファンは5~15W程度の消費電力であり、長時間運転しても電気代の大きな増加にはつながらない。

シーリングファンの回転方向を変える場合、ファン運転中に強制的にスイッチを切り替えると、モーター故障につながる。回転方向を変える場合は停止状態で切り替えるようにすべきである。

旧式のエアコンを買い替える

エアコンは技術開発により省エネルギー化が進んでおり、エネルギーの消費効率は年々高くなっている。

経済産業省 資源エネルギー庁の報告によると、2.8kWクラスのルームエアコンでは、2004年型(13年前)の製品の期間消費電力量は945[kWh]であるが、2014年型(3年前)は837[kWh]となり、約10%の省エネルギーが図られている。

数十年前の古いエアコンを使用しているのであれば、最新機種に更新することで極めて高い省エネルギー効果を得られる。15年前のエアコンでは1,000[kWh]を超える期間消費電力量であるが、最新型の高級機種であれば700[kWh]を下回るため、古いエアコンからの買い替えにより300[kWh]ものエネルギーが削減できる。

日本国内の一般的な家庭において、月に消費する電力量は300[kWh]程度とされている。旧型のエアコンの更新により、1ヶ月分の消費電力が削減できる可能性があり、安価なエアコンであれば10年以内で電気代の削減による減価償却が可能とも考えられる。

冷房、暖房の違いや、小型、大型の違いなく、新型のエアコンは省エネルギーが図られており、エネルギー消費効率を示す「APF」は5.0~6.0という高い数値となっている。COPは瞬間的に発生する電力、APFは年間を通じた消費電力量の効率と考えれば良い。

節電につながる運転方法(夏期:冷房時)

カーテンやブラインドを使用する

直射日光など外部からの熱負荷は、カーテンやブラインドで遮ることで低減可能である。最も効率が良いのは、室内に日射を導入しないことであり、外部に日除けやブラインドを設置する方法である。

学校の公共建築物では、窓の外に横向きルーバーなどを設けて日射量を制限するなど工夫されている。住宅も同様、ベランダやバルコニーに日除けスクリーンを設ければ熱負荷の低減が可能である。室内のカーテンやブラインドよりも遮蔽効率が高いのが特徴である。

室内に熱の侵入がなければ、設定温度に室温を維持できるため、コンプレッサーの運転を少なくでき省エネルギーである。

マンションでは防災上の問題から、建物管理者に対して日除けスクリーンを設けても良いか確認をしなければならない。避難通路を兼ねているバルコニーやベランダでは、日よけによって避難障害になるおそれがあり危険である。

強風にあおられて日除けが吹き飛び、車や人に接触するという懸念もあり、損害賠償の問題に発展することもある。設置方法や設置場所には十分注意を要する。

エアコン室外機への直射日光を遮蔽する

エアコン室外機は熱交換を行っているため、冷房時は室外機から熱を放出する。室外機が熱くなっていると熱交換の効率が悪くなり、消費電力が大きくなり、室内の冷房能力が低下する。

室外機への直射日光を遮蔽することで、熱交換効率が向上する。遮蔽によって室外機の排気を遮ることは、排気方向が変わりショートサーキット状態とならないよう、遮蔽の設置場所に注意が必要である。

室外機本体を冷却する

室外機に水を掛けて冷却すると熱交換効率が向上する。外気温度が30℃を超えるような猛暑の場合、空調機周辺の温度は40℃近い高温となり、熱交換の効率が悪化する。室外機に放水して冷却することで熱交換効率が10~15%ほど向上し、消費電力を5%程度低減できる。

室外機本体に水をかけることで、フィンに水垢が付着したり室外機本体のサビを誘発するなど、エアコンの故障原因となることが考えられ、注意が必要である。

 
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