誘導灯の設置基準と計画

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誘導灯とは

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誘導灯とは、避難口と呼ばれる屋外に避難するための扉や、避難口に通じる通路に設置する箱型の照明器具です。建物から避難する方向を示すピクトグラム、予備電源、照明器具を内蔵している防災設備で、非常時には誘導灯を辿っていくことで、安全な屋外に避難することが可能です。

誘導灯を設計する場合は、防火対象物の使用者が非常時に安全に屋外避難できるよう、誘導灯を消防法に準拠して配置する必要があります。誘導灯の設置基準、選定するべきサイズ、輝度など、消防法・施行令・施行規則によって厳しく定められていますので、法に合致した計画が不可欠です。

誘導灯と防火対象物の関係

劇場や病院、百貨店など、不特定多数が出入りする建物には、原則として全ての建物に誘導灯を設置する必要があります。共同住宅や工場など、特定の人が使用する建物の場合、地階・無窓階・11階以上の階で、誘導灯を設置する義務が発生します。

事務所や工場など、防火対象物を使用する人が建物構造を理解している場合(特定防火対象物に該当しない場合)は、避難する方向や避難扉の位置などを理解しているものとされますので、誘導灯の設置基準が緩和されています。所轄消防の協議によっては、本来設置しなければならない室に誘導灯を設置しなくて良いということも考えられます。

しかし、ショッピングセンターや劇場・ホテルなど、防火対象物が不特定多数に使用される用途の場合、施設利用者は非常時避難する方向を詳しく理解していないため、災害が発生するなどして建物から避難する場合、避難時間が長くなる傾向にあります。無窓階の場合はさらに要件が厳しくなります。

また、誘導灯は設置対象となる防火対象物の用途によって、必要になる面積基準が変わります。不特定多数の人員を収容する百貨店や店舗等は設置基準が厳しくなっていたり、逆に事務所などは百貨店等と比べて基準が緩いなど、建物用途による違いがあります。

誘導灯の電源計画

誘導灯を停電時点灯させるには蓄電池が必要です。これには、誘導灯の本体に蓄電池を内蔵する方法と、蓄電池を別置して耐火ケーブルで電源供給する方式の二通りがありますが、誘導灯の場合は電源別置にする計画が採用されることは稀です。

電源別置型の誘導灯は、器具本体から蓄電池を取り外し、別に置いた大型蓄電池から電源を供給する方式ですが、蓄電池を取り外しても誘導灯本体の単価が高い傾向にあり、別置きのコストメリットが発揮できず、大型施設であっても電源別置型誘導灯が採用されることはほとんどありません。

誘導灯の電源仕様

誘導灯は、火災・停電などによって電源が遮断されても、避難が完了するまでの間は点灯していなければいけません。誘導灯本体内部には蓄電池が内蔵されており、20分間以上の点灯を継続することができるようになっています。誘導灯を設置する建物が大規模施設の場合には、避難に時間が掛かるため、60分以上の点灯を継続できる長時間型誘導灯が設置されます。

誘導灯の種類と区分

誘導灯には避難口誘導灯、通路誘導灯、客席誘導灯の3種類があります。それぞれの設置基準は消防法によって規定されています。

避難口誘導灯の設置基準

避難口誘導灯は、直接外部に通じる扉、階段に通じる扉など、避難口の上部に設置し避難口を指し示す誘導灯です。避難上有効な避難口の位置を明示するために使用します。

屋内から直接地上に通じる出入口、直通階段の出入口、不特定が利用する100m2を超える居室の出入口、特定の人が使用する400m2を超える居室の出入口など、出入口に設置する誘導灯として規定されています。

避難口誘導灯における、種類と表記による有効距離の違いは下記の通りです。誘導灯には、避難口を示す表示と、避難方向とともに避難口を示す表示の二種類があります。方向表示が併記されている誘導灯は、有効距離が短く設定されています。なおC級誘導灯は避難方向を示す避難口誘導灯がありません。

  • A級 避難方向を示すシンボルがないもの:60m
  • A級 避難方向を示すシンボルがあるもの:40m
  • B級 避難方向を示すシンボルがないもの:30m
  • B級 避難方向を示すシンボルがあるもの:20m
  • C級:15m

通路誘導灯の設置基準

通路誘導灯は、廊下や階段、通路などに設置する誘導灯で、避難方向を明示するために使用します。通路にあっては曲がり角などに設置し、避難方向を明示します。

居室と廊下をつなぐ出入口や、廊下等に設けられた防火扉のくぐり戸などでは、避難口誘導灯の有効範囲と、通路誘導灯の有効範囲を合算して有効とすることが可能ですが、屋内から直接地上に通じる出入口、附室の出入口、直通階段の出入口など重要度の高い出入口では、避難口誘導灯の有効範囲内に通路誘導灯を設置する必要があり、有効範囲の合算をすることができません。

通路誘導灯における、種類と表記による有効距離の違いは下記の通りです。

  • A級:20m
  • B級:15m
  • B級:10m

誘導灯の形状・大きさ

誘導灯は、A級・B級・C級の3種類で大きさが区別されています。従前の誘導灯の形状は、大型・中型・小型の3種類に分類されています。旧式の誘導灯は内蔵している照明器具が直管蛍光灯なので、大きな横長形状の誘導灯となります。

対して、コンパクト形の誘導灯は寸法が小さく、C級は10cm角、B級は20cm角、A級は40cm角の大きさとなっており、意匠的にすっきりとしたデザインとなっています。

また、旧式の誘導灯は長期間使用していると、緑色のピクトグラムを示したパネルが熱で焦げたり、赤茶けた色になり見苦しくなるため、意匠性を損なう可能性があります。

現在では、輝度が高い小型正方形のコンパクト形誘導灯が普及しており、誘導灯が目立たなくなっています。新築物件において、横長の従来型の誘導灯を採用することはなく、既存改修においてもコンパクト形の誘導灯に交換する動きがあります。

コンパクト形誘導灯は冷陰極管というランプを使用しています。冷陰極管はランプ寿命が40,000時間以上と極めて長く、消費電力も蛍光灯と比較して1/3程度まで削減できます。消費電力の削減、ランプ交換頻度の削減によって、誘導灯設置におけるランニングコストを、大幅に削減することが可能です。

さらに、最近では冷陰極管の代替品として、LED照明による誘導灯が普及しています。LEDは冷陰極管と同等以上の寿命を持ち、かつ冷陰極管よりも消費電力が小さいため、CO2の削減など、省エネルギーに貢献できることが注目されています。一部の照明メーカーでは冷陰極管による誘導灯の生産を中止し、全ての誘導灯をLED誘導灯に切り替える動きもあります。

誘導灯の免除

特に小規模の建築物で、居室の各部分から避難口が容易に見渡せ識別できるような場合は、誘導灯の設置を免除することができます。この場合、消防法の防火対象物における「無窓階」「地階」ではないことを前提条件とし、各部分から下記の距離以内であれば、誘導灯を免除できるとされています。

  • 避難口誘導灯 避難階:歩行距離20m
  • 避難口誘導灯 避難階以外:歩行距離10m
  • 通路誘導灯 避難階:歩行距離40m
  • 通路誘導灯 避難階以外:歩行距離30m

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特殊な誘導灯仕様

誘導灯は、照明器具によって避難口を指し示すものですが、照明以外の機能を付加した特殊な誘導灯も存在します。誘導灯の消灯、誘導音、点滅機能、長時間点灯など、通常の誘導灯と違った機能があり、それぞれ設置基準が定められています。

例えば、病院や百貨店など不特定多数が使用する施設の場合は、避難誘導をさらに円滑に行うため、誘導灯本体に音声装置が付属しているものや、誘導灯本体に点滅装置が付属している製品を選定します。このような付帯機能のある誘導灯は、日常的には一般的な誘導灯と同様に点灯していますが、火災発生時などの非常時には避難誘導を促す音声放送を流したり、点滅装置を作動させ、有効な避難誘導を図る事が可能です。

誘導灯の消灯機能

階段室に至る避難扉に設置する誘導灯においては、階段内に設置されている煙感知器と連携させることで誘導灯を消灯させることができます。階段室内に煙が充満しており、その階段は避難不可能である場合には誘導灯を消灯し、避難することができないということを示します。誘導灯を消灯させるには、階段室内の煙感知器信号を誘導灯信号装置に取り込み、感知器動作信号によって誘導灯の消灯を行います。

また、誘導灯は24時間常時点灯させることを義務付けられていますが、建物が完全に無人になる場合、自然光が十分に入るような開口部がある建築物の場合、映画館やプラネタリウムなどで特に暗さを要求する場合などでは、誘導灯を消灯することができます。

誘導灯を消灯するためには、誘導灯信号装置を利用し、火災信号など外部信号の受信によって制御を行います。例えば、最終退出口の施錠によって電気錠から信号を供給し、誘導灯を消灯するなど、多様なシステムを組むことが出来ます。また、誘導灯信号装置では手動による強制点灯なども可能です。

誘導灯を消灯する場合、火災信号を受けて点灯できるように信号線を敷設しなければいけません。非常時には全ての誘導灯が点灯し、避難に支障がないようにする必要があります。また、映画館などでは、誘導灯を消灯することを客に周知する放送や案内画面を表示し、緊急時には誘導灯が点灯が点灯する旨を案内しています。

誘導音装置付き誘導灯

地下街や百貨店、ホテルなど、不特定多数の人員が多数来訪する建築物では、自動火災報知設備の火災発報と連動し、音声によって避難口の位置を知らせる誘導灯を設置することがあります。

ただし、誘導灯からの避難音声よりも、非常放送設備の鳴動の方が優先順位的に上位にありますので、非常放送が流れた場合には、音声を停止させる必要があります。

点滅型誘導灯

百貨店やホテルなど不特定多数が出入りする建築物で、雑踏やサインなどによって誘導灯の視認性が悪くなる恐れがある場合や、病院などで視力や聴力が悪い人が出入りする建築物では、点滅付の誘導灯設置を求められます。全ての誘導灯ではなく、各階の避難階段の出入口や、最終退出口に設置するように指導されます。

各階の避難階段に設置する場合は、階段室内の煙感知器と連動させ、階段内が危険状態になっている場合は点滅を停止させるようにします。階段内に煙が充満してその階段が避難用に使えなくなっている場合に、危険な階段に避難誘導させないようにするためです。

長時間型誘導灯の設置

延床面積50,000m2以上や、15階建て以上かつ30,000m2以上の建築物などは、停電時に誘導灯を60分以上点灯できる長時間型誘導灯を設置する必要があります。大規模建築物では避難時間が長くなるため、一般の誘導灯に内蔵されている30分程度の電池では、避難完了前に誘導灯が消えてしまうため、60分以上の点灯を維持できる長時間型誘導灯が求められます。

長時間型誘導灯を採用する以外にも、非常用発電機などから電源を供給することで、60分以上の点灯時間を確保する方法もあります。ただし、非常用発電機からの電源供給の場合、その電源配線が焼けてしまっては長時間点灯させることができないため、電源線を耐火仕様とする必要があります。

客席誘導灯の設置

映画館などでは、足元に常時わずかな照度を確保するため、客席誘導灯を設置することが義務付けられています。映画上映中とはいえ、足元まで全てを真っ暗にするのは危険であり、避難に使用する最低限の照度を確保するのが目的です。

客席誘導灯の基準は、避難のために使用する椅子と椅子の間の通路で、0.2ルクス以上を確保出来なければならないことになっています。ただし、客席誘導灯は非常に光が弱いので、0.2ルクスを確保するためには、大量に客席誘導灯を設置しなければいけません。

客席誘導灯の設置については、器具台数を所轄消防と十分打ち合わせする必要があります。椅子1列飛ばしで客席誘導灯を設置すると、部分的に0ルクスのポイントが発生します。所轄消防によって、この照度のむらを認める場合と認めない場合があります。

階段通路誘導灯

階段または傾斜路に設置する誘導灯として規定されています。階段の天井や壁に設置することで、避難するために必要な最低照度を確保し、安全な避難を促す設備です。デザイン的に優れた製品が多いのが特徴です。

誘導標識の設置基準

誘導標識は、誘導灯と同様に、避難口や避難方向を明示するための緑色の標識です。非常用照明設備と一体に設置することで、避難口誘導灯を免除することができるため、防火扉のくぐり戸などに使用されることが多い防災設備です。

誘導標識は、廊下や通路の各部分から、誘導標識までの歩行距離が7.5m以下となる箇所や、曲がり角に設ける必要があります。

蓄光式避難口誘導標識の定義・基準

JIS-Z8716の常用光源蛍光ランプD65から、照度200ルクスの光を20分間照射し、その後20分経過した後の表示面が24ミリカンデラ/m2以上、100ミリカンデラ/m2未満の平均輝度を有するものを、蓄光式避難口誘導標識と定義されています。

壁設置型の誘導標識は、120mm×360mmの横長の長方形です。避難口誘導標識は緑地に蓄光シンボル、通路誘導標識は蓄光地に緑シンボルで構成されています。

なお、日本消防設備安全センターが、認定登録機関として活動しています。

誘導灯設置計画で考えるべきこと

誘導灯の配置は、消防的な視点からすれば、より目立つところに設置した方が良いものです。対して、意匠デザインからすればあまり目立たせたくないもので、できるならば隠したい設備です。よって、電気設備設計をする場合は、消防的観点と、意匠性のどちらも満たせる方法を提案しなければいけません。

誘導灯本体のデザインも薄型や埋込型などがあり、いくつか選択することが可能ですので、意匠設計者や施主の意向に合うかを確認するのが大切です。消防的観点だけを優先し、デザイン性の無い配置や器具選定をするのは避けなければいけません。

意匠的な見映えを考えると、最大の大きさであるA級誘導灯は、できるだけ採用しないことが望まれます。40cm角というサイズは非常に圧迫感があり、誘導灯の主張が強すぎます。B級誘導灯は20cm角ですので、B級までを使用する計画にすることが望まれます。

意匠性だけではなく、誘導灯を設置する場所の納まりについても、よく確認しておくことが大切です。例えば、扉の開き勝手や扉高さを把握していないと、扉を開けた際に誘導灯が扉に接触するなどの事故が発生することがあります。

天井が高い場所に誘導灯を設置する場合

所轄消防によっては、高天井部分に誘導灯が付くのを嫌い、吊り下げることを要求することがあります。誘導灯を天井面に近い部分に設置した場合、火災時の煙が天井に滞留すると、誘導灯が煙に巻かれて見えなくなることがあります。

長く吊り下げ過ぎると不恰好ですし、空調機などの風で誘導灯本体が揺らいでしまいますから、誘導灯に振止めワイヤーなどを施すことになってしまいます。

誘導灯を吊り下げ長さを一定寸法で統一するなど、振れ止めが不要かつ煙に誘導灯が巻かれない高さに計画することが望まれます。天井に誘導灯を直付して良いという所轄消防の解答を得れば問題ありませんが、場合によっては高さ2.5mの位置まで下げることを指導されることもあります。

無理に天井を使わず、誘導灯を壁付けにしてしまうのも一案です。または床埋込型誘導灯を使用するという提案もありますが、床の開口補強など、構造体補強によるコストアップが発生するため、構造設計者への確認も必要になります。

廊下に誘導灯を設置する場合

細い廊下であれば、誘導灯は左右どちらかの壁側に寄せて片面型器具を設置します。細い廊下の中央に誘導灯を付けても、フチしか見えないので矢印方向がわかりません。また廊下は天井が低くなりがちなので、運搬物をぶつけられて破損することがあります。端に寄せておいた方が無難です。

店舗に誘導灯を設置する場合

吊り下げサインやブレードサインが来る位置を予測します。例えば、陳列棚で区画された通路の交差点位置など、案内サインが想定される部分を把握しないと、サインと干渉してお互いが見えなくなることがあります。ショップファサードサインやオーバーヘッドサインを隠すように誘導灯が付いたりすると、誘導灯でサインが見えないという不具合が発生しますので、特に注意が必要です。

工場に誘導灯を設置する場合

工場内に誘導灯を設置する場合、製作機械などを置いていない状態で計画・検査となるため、誘導灯個数が少なくなりがちですが、実際に機械を据え付けた途端に誘導灯が影に隠れてしまい、見えなくなることがあります。他にも、ロッカーや棚・ラックの位置も含めて、誘導灯の配置を事前に確認し、若干多めに計画しておくと安心です。

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