非常照明・非常用照明の設置基準と計画

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非常用照明とは

火災などで停電が発生すると、避難方向や周囲の状況を把握できなくなるため避難が困難になります。非常用照明により、停電時に一定の照度を確保し、避難を速やかに行うことができます。建築基準法によって設置基準が定められており、法令に準拠した機器選定と配置をしていくことになります。

非常用照明は、避難するための通路に照度を確保するための設備であり、誘導灯は避難する方向を示す設備です。誘導灯の明るさで非常用照明の照度を確保することは不可ですので、お互いを別の設備として計画します。

非常用照明には内部に電池入っており、電源供給が断たれた際に、自動で電池側から給電されるようになっています。これで、停電時や、火災で電線が焼け落ちた場合でも、避難するための明るさを自動的に確保することができます。

非常用照明設備の構造

非常用照明はミニ電球やハロゲン電球、または蛍光灯が使用されており、省エネルギーの観点からは無駄の多い電球となっています。近年のLED普及により、白熱電球の生産は縮小されている状況ですが、非常用照明の光源としてLED光源を使用することはできません。

白熱電球や蛍光灯は電球寿命が短いため、ランプ交換が必要になります。LEDを使用すれば、寿命が極めて長いためランプ交換の手間がなくなるという利点が考えられますが、LED電球は法的に非常用照明として認められていません。その法的根拠となる国土交通省告示は下記の通りです。

非常用照明にLEDが使用できない理由

非常用照明に関わる告示「平成22年3月29日 国土交通省告示第242号」により、照明器具の構造として下記を求めています。

  • 照明器具は、耐熱性及び即時点灯性を有する「白熱灯」「蛍光灯」とする
  • 白熱灯のソケット材料はセラミックス、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂に限る
  • 蛍光灯は即時点灯回路に接続していないスターター型蛍光ランプを除く
  • 蛍光灯のソケット材料はフェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、メラミン樹脂、メラミンフェノール樹脂に限る

LED電球は「白熱灯」でも「蛍光灯」でもありませんので、非常用照明に採用することはできません。以前の告示では「同等以上の耐熱性、即時点灯性を有する」という記述がありましたが、平成22年3月29日の国土交通省告示で削除されました。また、高圧水銀ランプによる非常用照明の記載も削除されており、実質「白熱灯」「蛍光灯」の2種類でなければ、非常用照明として成立しないよう規制されています。

この改正により、省エネルギー光源であるLEDを用いた非常用照明は、今後この告示が改正されない限り現存することができません。非常用の照明装置の構造方法を定める件等の一部を改正する告示案に関するパブリックコメントの募集の結果についてに、意見募集の結果に関するPDFが公開されていますが、この改正に関わるパブリックコメントは存在していません。

非常用照明設備の仕様

器具本体に電池を内蔵した方式と、別置きした蓄電池設備から電源を供給する方式の二種類があります。

電源内蔵型非常照明の特徴

電源内蔵型の非常用照明は、名称の通り、蓄電池を内蔵した非常用照明で、非常に広く普及しています。機器内に収容されたバッテリーにより、電源供給が断たれた際、自動で非常電源に切り替わります。機器単独で非常電源回路が完結しているため、充電用の配線は耐火性や耐熱性を必要としません。よって、VVFケーブルなどの一般電線で電源供給することができます。

非常用照明器具にはニッケルカドミウム蓄電池が内蔵されており、繰り返し充放電に耐える機器構成となっています。また、機器本体に蓄電池の充電状態が確認できる充電モニターランプが取り付けられており、これを確認することで充電状況を目視確認することが可能です。また、器具本体に引き紐が取り付けられており、これを引っ張ることで強制的に非常時点灯とすることができますから、点検も容易です。

非常用照明の回路構成は、主幹の二次側が停電した時点で点灯するようにします。照明器具の回路と同一にすることで、照明回路が停電した際に非常用照明を点灯させることができます。非常用照明は誘導灯と違い、電源回路の一次側から電源供給すると、ブレーカーが遮断された場合でも電源供給が続いてしまい非常時点灯しないため、必ず遮断器の二次側から電源供給するよう配線します。

電源別置型非常用照明の特徴

電源別置型の場合、蓄電池設備を別に用意する必要があるため、大規模な施設でなければ採用することはありません。停電を検出するため、不足電圧継電器を電灯分電盤に設け、不足電圧継電器からの信号供給でマグネットスイッチを動作させて、蓄電池から給電するといったシステムを構築する必要があります。

電源別置の非常用照明システムの電源は、前述したような蓄電器で非常時に30分以上点灯できる容量を持つもの、または蓄電池と自家発電設備の組み合わせ(40秒始動の選定が可能)となります。なお、「建築設備 設計・施工上の運用指針 1995年版」では10秒始動の自家発電設備が一般建築物に限り認められていましたが、「建築設備 設計・施工上の運用指針 2003年版」では関連部分が削除されており、蓄電池を使用したシステムのみ認められるようになっています。

電源別置型の非常用照明への電源供給の考え方ですが、電源が照明器具から離れた場所にあるため、電源装置と本体を繋ぐ配線には耐火性が求められます。電源装置と器具本体を繋ぐ配線が焼け切れてしまった場合、非常用照明としての機能を果たすことができなくなります。

非常用照明の灯具は安価ですが、蓄電池設備、耐火電線、不足電圧継電器などの機器が必要となりますから、電池内蔵型の非常用照明よりもコストアップすることが多いと言えます。

電源別置とする大きな利点として、非常用照明本体に電池が設置されていないため、蓄電池交換を電源装置のみに対応すれば良い点です。例えば、2,000台以上の電池内蔵型の非常用照明を設置した場合を考えます。

電源内蔵型非常用照明の内蔵電池に寿命が来ると、設置した全ての器具の電池を、一個ずつ交換していくことになります。前述したように、2,000個もの蓄電池を1個ずつ交換していくのは、電池交換の労務が極めて高くなりますから、経済的とは言えません。

対して、電源別置非常用照明の場合、電源装置は一つですから、これを交換するだけです。非常用照明にはランプのみ取り付けられていますので、非常用照明個々に対する交換作業は、電源内蔵型非常用照明よりも簡易になります。

電源別置型非常用照明は、設置のためのイニシャルコストは高いですが、ランニングコストでメリットを得る可能性がありますので、運用シミュレーションを十分に行うことが重要です。

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非常用照明の法的規制

非常用照明で確保しなければならない照度基準

非常用照明装置を点灯させ、30分間非常点灯させた状態で、床面1ルクス以上の照度を確保する必要があります。照明メーカーのカタログを参照し、光の有効範囲を確認しながら器具配置していきます。蛍光灯器具を非常用照明とする場合、2ルクス以上の照度が必要になりますので注意が必要です。

蛍光灯は白熱電球と違い、火災による高温で蛍光灯効率が低下するおそれがあるため、1ルクスを目標に設計してしまっては、実際の火災時に1ルクスを確保できない可能性があるためです。

また、非常用照明器具を30分以上点灯することができる予備電源を有すること、140℃の雰囲気の中で30分以上点灯を維持できる耐熱性を有することなどが規定されています。

非常用照明を設置しなければならない建築物

非常用照明は、前述したように一定規模以上の建築物に設置しなければならない防災設備です。規定されている規模については、下記の通りです。

  • 映画館、病院、ホテル、学校、百貨店などの特殊建築物
  • 階数が3階以上、延床面積が500m2を超える建築物
  • 延床面積が1,000m2を超える建築物
  • 無窓居室を有する建築物

このように、不特定多数の人が出入りする建物や、面積の大きい建物では、停電時などにパニックが発生したり、避難することが困難になったりしますので、非常用照明の設置が義務付けられています。

また場合によって、アラーム弁室や消火ポンプ室などにも、非常用照明を設置するように指導されることがあります。これは、火災による停電が発生した場合、これら消火活動に重要な設備が、すぐに発見できるようにするための措置です。

非常用照明の設置免除

学校や体育館、ボーリング場、スキー場、スケート場などは、火災発生の危険性が少なく、避難活動も容易と判断されているため、非常用照明の設置を免除することができます。

ただし、全ての場視よで免除できることにはならず、例えば、無窓となっている避難経路、体育館が集会場としても利用されているなど、用途が一体となって運用されている場合は、非常用照明の設置を免除することはできません。

建築化照明・間接照明は使用不可

非常用照明は、直接光で避難経路を照らすのが原則なので、光天井、コーブ照明、コーニス照明など、壁や天井に光を当てて、その反射光によって照度を確保する手法は認められていません。どんなに照度が高く、明るく照らす事ができても、これは適法にはなりません。

ただし、ルーバー天井の上部に非常用照明を設置する場合は、適法となります。ただし、ランプ交換が容易であること、非常用照明のランプが視認できることなどの条件を満足しなければいけません。ルーバーを介して照射する場合、照度の低下が懸念されますから、定期的な清掃、設計照度の増強などを考慮する必要があります。

非常用照明の配線方式と機器選定

電源内蔵型非常用照明の場合

非常用照明の内部に蓄電池が内蔵されている場合は、電源供給するための電線は、VVFケーブルなど一般のケーブルで問題ありません。非常用照明に蓄電池が内蔵されており、電線が火災で焼け落ちても、内部の蓄電池に蓄えられた電力によって、一定時間は非常用照明を点灯させることが可能です。

ただし、非常用照明に電源を供給する配線経路内にスイッチを設けると法令違反になりますので、必ず単独配線とする必要があります。誤操作により、非常用照明への電源供給がスイッチで断たれた場合、蓄電池への充電がされず、放電してしまい非常用照明の用を成さなくなるおそれがあります。

ここで言う単独回路は、白 - 共通中性線・黒 - 非常用電圧線・赤 - 常用電圧線 という区分にすることができます。一般の蛍光灯などを含む器具は常用電圧線から供給でき、ここにスイッチを設置することに問題はありません。非常用照明は非常用電圧線から電源供給を行います。こうすれば、単独回路が停電した場合、非常用照明を点灯させることが可能になります。

専用回路の構成

電源別置型非常用照明の場合

電源別置型の非常用照明の場合は、電源内蔵型非常用照明と違い、FPケーブルなどの耐火電線で電源供給する必要があります。非常用照明の電源が、別に設けられた蓄電池から供給されますから、非常用照明本体にはランプしかありません、電線が焼け落ちてしまうと点灯することができません。

このように、電源内蔵非常用照明・電源別置非常用照明の選択によって配線方法が変わりますので、設計時のケーブル選定には注意が必要です。

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