非常用発電機の設置基準

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非常用発電機の概要

電気設備が常に正常稼動するためには、品質の良い電源供給が不可欠です。日本国内の電力事情は非常に良好で、停電することはほとんどなく、雷撃や地震など、自然現象による停電の場合でも、長期に渡る停電が発生することは殆どありません。

しかし、火災などが発生し、電力会社からの電源供給が途絶えた場合、設置している防災設備が動作できないことが考えられます。一定規模の建築物には、火災を消火したり、人が煙に巻かれないように、スプリンクラー、屋内消火栓、排煙機などの防災設備が設置されます。これら防災設備は「火災で停電になったので使えない」という事にならないよう、防災設備専用の非常電源が必要になります。

予備電源の種類と関連法規

非常用に使用する電源は、電気設備技術基準、消防法、建築基準法の3種類に分類されます。

電気設備技術基準に定められた保安用電源

電力会社からの電源供給が途絶えた場合、需要家内にある電気設備の機能を維持するための「保安用電源」や「業務用電源」です。避難や消火活動に使用する予備電源ではなく、業務の継続や、保安用としての位置付けになる予備電源です。

消防法における非常電源

消防用設備への電源供給が途絶えた場合に使用する「非常電源」です。消火栓、スプリンクラー、消防排煙設備などに接続し、商用電源が遮断されても、消防用設備が適切に動作できるよう、電源を供給する設備です。消防法により、それぞれの消防設備に供給しなければならない時間が決められています。定格負荷で60分以上連続運転できること、燃料油は2時間以上の容量を持つこと、40秒以内に電圧確立することなどが定められています。

建築基準法における予備電源

非常用照明、排煙機などの電源として使用する「予備電源」です。消防用設備の非常電源と同様、商用電源が遮断されても、一定時間は非常用照明などが動作するように計画されます。

防災設備に30分以上電源供給できること、30分以上連続運転できる容量を持つこと、40秒以内に電圧確立することなどが定められており、消防法における非常電源と併用することが可能です。併用する場合、消防法と建築基準法のどちらの基準も満足できるような機種選定が必要になります。

建築物の電気設備として使用する非常用発電機は大きく分けて、ディーゼルエンジンとガスタービンエンジンの二種類があります。原動機を使用した内燃機関は、切り替え時の始動が速く、動作の信頼性が高く、保守点検が容易といった多くの利点があり、発電機駆動用の機関として幅広く使用されています。

防災設備として使用される非常用発電機設備の場合、消防法により「ディーゼル」「ガスタービン」または同等以上の始動性能を有するものと規定されています。

ディーゼルエンジン非常用発電機の特徴

ディーゼルエンジン非常用発電機は、20kVA前後の小型機種から1,000kVAを超える大型機種まで、多様なラインナップがあります。断続的な燃焼による爆発ガスの熱エネルギーを、ピストン往復運動に変換し、クランク軸によって回転運動に変換するという機構で運転を行います。

非常用発電機の分野では非常に広く普及しており、発電機の周辺装置を簡素化するため、一般的にはラジエーター水冷方式が選定されます。ディーゼル発電機は燃焼空気の排気に黒煙が多い、運転時の振動や騒音が大きいという問題がありますが、比較的安価なため頻繁に採用されます。周囲の空気環境によって、出力が調整させることは少なく、常に一定の出力を確保できる堅牢さも利点です。

ただし、ガスタービン発電機などと比較し、潤滑油消費量が多い、軽負荷運転の効率が悪い、往復運動のため振動が発生するといった欠点があります。また、冷却装置の附置、据付面積が必要ど、建築的な負担が大きくなるというデメリットもあります。

特に、ディーゼルエンジンを選定する場合、軽負荷運転に注意する必要があります。負荷が軽い場合、燃料噴射圧力が低くなるため燃料が上手く燃焼せず、黒煙が多くなります。また、シリンダーやピストンの潤滑オイルが燃焼できる温度まで上昇せず、排気管からオイルが滴ることがあります。

軽負荷運転を長時間行い、黒煙が多量に発生し、排気管がオイルが滴るような状況において、突然高負荷・全負荷で運転を行った場合、内部機構が故障することがあります。ディーゼルエンジンを選定する場合、常に全負荷に近い運転が出来るよう、余裕を持たせ過ぎない選定をすることも、重要なポイントです。

直接噴射式と予燃焼室式

直接噴射式は、燃料を燃焼室に直接噴射して燃焼させる方式で、始動性が良く、燃焼効率が良いという特徴があります。主に、低速〜中速の非常用発電機に採用されています。

対して予燃焼室式は、予燃焼室に噴射した燃料し、内部圧力を上昇させ、残部を主燃焼室に噴出することで燃焼効率を高める方式です。騒音振動を小さく抑えるため、高速の非常用発電機に採用されます。

冷却方式

内燃機関外部からの冷却水で冷却する水冷方式と、機関に直接駆動するファンで冷却する空冷方式があります。ファンによる空冷は、小容量の発電機でのみ適用され、大規模な発電機では水冷方式となります。

水冷方式には、放流式、クーリングタワー式、水槽式、ラジエーター方式があります。放流式は冷却水の系統が簡素で設置が簡単ですが、給水が多量に必要で、水がなくなった場合は発電装置が焼損してしまうため、断水した場合使用不可能になります。

クーリングタワー方式は、冷却水の消費量が少なく、水道水が断水しても一定時間は運転させることが可能ですが、クーリングタワーを動作させるための動力や、クーリングタワーを設置するためのスペースの確保などに問題が残ります。あまり採用実績はありません。

冷却水槽式は、水道水が断水しても、水温が上昇するまでの間、運転を継続することができます。運転時間によりますが、大きな水槽を別途用意しなければならず、建設コストが増加します。水槽も定期メンテナンスが必要で、常時水源を用意しなければならないため、同様に採用実績はあまりありません。

ラジエーター方式は、非常に採用実績の多い方式で、冷却水配管が不要で冷却水の消費もほとんどありません。ラジエーターファンを運転させるため、出力が若干低下することや、排風量が大きくなることに注意が必要です。

ガスタービンエンジンの特徴

ガスタービンエンジン非常用発電機は、ディーゼルエンジンと比較して黒煙が少なく、振動や騒音が小さく抑えることができ、機器本体もコンパクトにすることができます。また、発電した電力の品質が良く、軽負荷運転でも良好な発電を保つことが出来ます。

燃料を多量の空気と混合して完全燃焼させるため、排気に含まれる一酸化炭素やNOxの量を大きく低減することができます。また、ディーゼルエンジンのような往復運動機構ではなく回転運動機構のため、建築躯体に伝わる振動が小さく、躯体伝搬による騒音が小さいという利点もあります。

しかし、機器本体が高価であること、給気と排気風量がディーゼルエンジンよりも大きいことによる建築対応の必要性が問題となるため、採用実績はディーゼルエンジンに劣ります。

他にも、燃料消費量がディーゼルエンジンに比べて倍程度大きく、大型機種においては燃料タンクが大きくなりがちになり、建築的制約も大きくなります。また、高熱になる排気処理も問題であり、特に植栽などが近くにある場合、幹や葉が廃熱の排出方向を向いていたりすると、植栽を焦がしたり、燃やしたりしてしまう原因となります。

消火設備で注意する点として、ガスタービン発電機に対して、新ガス(窒素)消火を適用できないということが挙げられます。32条特例申請を提出することで認められることがほとんどですが、早いうちに協議・申請業務を進めておくことが望まれます。

非常用発電機の耐用年数

非常用発電機の耐用年数は、法定耐用年数15年、BELCAまたは国土交通省官庁営繕基準30年の耐用年数となります。法定耐用年数とは、設備機器の税法で定められた耐用年数のことで、減価償却を算出しLCC(ライフサイクルコスト)を判断するための基本となる数値です。

非常用発電機は、停電時に防災設備を稼働させるために必要な重要な機器であり、耐用年数が超過している場合は運転不良となる可能性が高まるため、保全が特に重要です。製造メーカーは発電機の修理部品を一定期間保管していますが、耐用年数を超過しているような場合、補修部品の入手が不可能となり、故障時の対応が出来ないという事も考えられます。

発電機の予防保全と事後保全

電気設備の耐用年数を伸ばす方策として、予防保全と事後保全を理解することが重要です。予防保全とは、故障発生前に対策を行い故障が発生しないよう運用する方法です。事後保全とは、故障発生後に対策し復帰するよう運用する方法です。

例えば、蛍光灯の端部の黒ずみが濃くなってきているが、完全に切れる前にランプを交換するのは予防保全に該当します。対しランプが完全に切れてしまった後で交換するのが事後保全です。

非常用発電機に対しては、使用頻度が著しく低い設備ではありますが、緊急時に事故が発生し電源供給が行えないのは問題であり、予防保全を行うのが基本となります。

発電機の法的規制と届出

非常用発電機の使用をするためには、各種法的書類の届出を行い、規制条件をクリアする必要があります。主に、騒音と振動の規制、ばい煙施設としての届出が必要となります。

ばい煙施設の届出

非常用発電機は、ばい煙施設に該当する場合、その着手において事前に工事計画の届出を行う必要があります。電気事業法に規定される「発電所」としての施設は、出力1,000kW以上のガスタービン発電機、出力10,000kW以上の内燃力発電機など、特に大規模の発電機に限定されていますが、大気汚染防止法により、1時間あたり50リットル以上の燃料燃焼能力がある発電機や、ガスまたはガソリン機関において1時間あたり35リットルの燃焼能力があるものは、ばい煙発生施設としての届出が必要となります。

騒音規制法と公害防止条例

非常用発電機を設置する場合、騒音規制法に規制されるか、所轄行政に確認する必要があります。非常用発電機に関係する騒音規制法の条例の文面としては「設備に付帯する補機で空気圧縮機及び送風機の原動機について定格出力7.5kW」という部分が該当します。

屋内設置の大型非常用発電機においては、補機の容量が大きいために該当する場合もありますが、一般的なパッケージ式の非常用発電機設備では、該当しないのを前提として、行政協議を進めるのが良いでしょう。注意が必要なのは、騒音規制法では規制されていなくても、自治体ごとに定めている公害防止条例によって規制されることがあるという点です。

例えば、東京都の公害防止条例においては、非常用発電機の騒音は騒音規制の対象外であることを明確に述べています。よって、非常用発電機については騒音規制対象から除外して考えることができます。

非常用発電機でも、騒音規制を厳格に行う自治体もありますので、行政指導に従う必要があります。着工寸前になって慌てない様に、事前に関係例規を確認し、前もって対応しておくことが望まれます。

ただし、騒音規制の対象から外れたとしても、道路・隣地境界に非常用発電機が設置されていた場合、騒音クレームになる可能性があります。プライミングなど、定期的なメンテナンス運転を月に数回、数十分間実施しなければならないため、非常用といっても全くの無音状態を維持できるものではありません。隣地や道路境界に近い場所に非常用発電機を設置する場合、低騒音型や超低騒音型の非常用発電機を選定することを考慮しましょう。

危険物取扱所の届出

一定量以上の燃料を保管する場合、危険物としての規制を受けます。A重油を使用する場合、400リットル以上2,000リットル未満の場合、少量危険物取扱所としての規制を受けることになります。また、長時間発電機を運転させる場合は、2,000リットル以上のA重油を備蓄することがありますが、その場合は危険物取扱所としての規制を受けることになります。

非常用発電機の騒音と発生原因

ディーゼル発電機の騒音は、機械音、排気音、固体伝搬音に分類されます。

機械音における騒音

機械音は、ディーゼル発電機では、シリンダ内部で燃料が燃焼しますので、その燃焼の衝撃がシリンダ壁面を振動させます。また、ピストンや燃焼ポンプなどが衝撃や振動が発生します。機関部分をパッケージとして覆うことで、騒音を軽減することが可能で、105db、85dB、75dBの三種類が、広く採用される低騒音仕様となっています。

排気音における騒音

排気音は、発電機本体に消音器を内蔵することで軽減することができますが、重量や寸法が大きくなります。また、機器単価も上昇するため、コストの観点からすれば普通騒音型発電機が望まれます。ただし、法令や条例によって、騒音値が規制されている場合があるので、条例の確認が必要になります。

一般的に、非常用発電機は常用ではないため、騒音規制法から除外されていることが多いですが、自治体によっては非常用発電機も騒音源であるとしている場合があるため、計画している地域の条例を確認しなければいけません。排気音は、シリンダ内部から発生する高圧の廃棄によって発生する騒音です。排気は高圧であり、衝撃と共に外部に放出されるため、これも騒音となります。

固体伝搬音における騒音

固体伝搬音は、機関が運転する際に発生する振動が、基礎や躯体を伝わって構造体を振動させ、その振動よって発生する騒音です。主に高周波となって発生する騒音です。コンクリート量を増やし重量を大きくすることで個体伝搬を軽減する方法や、防振ゴムを挟むことで振動伝搬を止める方法が採用されます。

発電機に接続されている給油・返油管が振動することで騒音が発生しますので、伸縮管を配管に設け、振動を吸収することも計画の中で配慮すると良いでしょう。

騒音の距離減衰計算

非常用発電機の騒音は、「本体から1m離れ、高さ1.2m」の点の騒音が基準となります。騒音は敷地境界線や道路境界線における部分が規制対象ですから、発電機室を設ける事ができない場合、敷地境界から離隔することで法規制上の騒音対策とします。

騒音値は Nr = 20log r1 / r [dB] という計算式で示しますが、風や周囲状況に影響されるため、減衰量は80%として計算します。よって、騒音の減衰計算は Nr = 0.8 × 20log r1 / r [dB] とします。r1:音源から計測点までの距離 r:騒音源の測定距離(1m)

例として、敷地境界から発電機までの距離が30mで、発電機の騒音が85dB(低騒音)の場合の、敷地境界での騒音値を計算します。

Nr = 0.8 × 20log 30 / 1 = 16log 30 = 23.6 [dB]

よって敷地境界の騒音値は、N = 85 - 23.6 = 61.4 [dB] となります。

非常用発電機の設置計画と設計

非常用発電機を計画する場合、本体と燃料タンク、または建築物との離隔距離の確保、本体やタンクの重量を支えるための構造検討、高熱かつ有害な排気の放出方法など、多くの検討が必要となります。

非常用発電機の離隔距離

非常用発電機を配置する場合、消防法や火災予防条例によって、保有距離が定められています。制御装置等を全て内蔵したキュービクル式非常用発電機設備の場合、操作面で1m以上、点検面で0.6m以上、換気面では0.2m以上の空間を確保しなければいけません。

キュービクル式以外の場合、自家発電装置本体は周囲から0.6m以上、相互間は1m以上の離隔を確保する必要があります。また、操作面は1.2m以上、点検面は1m以上確保するなど、規制が厳しくなります。また、建築物からは3m以上の離隔を確保する必要もあります。3m未満の範囲に建築物が存在する場合、建築物側を不燃材料とし、開口部を防火戸等にすることで、規制を回避することができます。

基礎計画と重量

非常用発電機は、自重だけでなく、機関運転によって加振され、建物の躯体に振動を与えます。これは有害な騒音の原因となるため、騒音を小さくする措置が求められます。振動騒音を低減させるためには、固定基礎の重量を大きくし振動を減衰させる方法と、防振基礎を設置して伝達する振動を減衰される方法の二通りがあります。

固定基礎の場合、基礎質量 = (1.5〜2.5)× 発電ユニット質量 という計算式で、基礎の重さを算出することができます。防振基礎を設置する場合、本体だけでなく接続配管への影響もあるため、フレキシブル継手などを使用し、振動の縁を切る必要がありますので注意しましょう。

排気計画

非常用発電機を運転すると、温度が高くススを含んだ燃焼排気が放出されます。ディーゼル発電機の場合でも排気温度は300℃以上となり、ススを含んでいるため建築物などに排気が当たると黒く汚れてしまいます。排気の騒音も重なり、近隣への公害問題となることがあるため、排気計画は慎重に行う必要があります。

排気管は高速・高音の排気が流れますので、管内の圧力損失が非常に大きくなります。排気管はできるだけ短くし、曲がり箇所が少なくなるように設計するのが基本となります。圧力損失が大きくなると、発電機の性能を落とす恐れがあるため、出来る限り短く計画します。

排気管は300℃を超える高音の排気ですから、建物の内部を通す場合は煙突専用のダクトシャフトを設け、排気管は断熱する必要があります。燃料小出槽や燃料移送配管に熱の影響がないよう、配管と煙突を近づけない計画を行います。また、煙突は熱によって伸縮しますから、排気伸縮継手を適宜設けます。排気管10mで1箇所程度の伸縮継手があれば良いでしょう。

非常用発電機の燃料計画

非常用発電機を運転させるには、燃料が必要です。一般的に、軽油またはA重油が使用されており、周辺への環境性を考慮した場合軽油の使用が推奨されます。ただし、大型の発電機を採用する場合、燃料の備蓄量が多くなってしまうため、危険物としての規制により燃料種別が制限されることがあります。

発電機燃料の指定数量

非常用発電機の燃料は、A重油または軽油が使用されています。公害規制地区では灯油を使用することもありますが、灯油で運転する発電機はメーカーが制限されることに注意が必要です。また、燃料を計画する場合、指定数量について配慮しなければいけません。

指定数量は消防法に定められており、危険物の危険性毎に数値が決められています。指定数量を超える量を貯蔵・取り扱う場合に、危険物取扱者の免状を持つ者が管理しなければならないことになっています。また、指定数量未満であっても、少量危険物取扱所として管理しなければならないなど、法令によって厳しく規定されています。

燃料搭載型の非常用発電機は、少量危険物取扱所にならないよう、指定数量の1/5未満の燃料設定が標準仕様となっています。燃料を別に貯蔵したり、長時間運転させるために大容量タンクを設置したりする場合、少量危険物取扱所になる指定数量を超過しますので、貯蔵する燃料種類と量には、注意を払う必要があります。

少量危険物取扱所の規制を受ける発電機を設置する場合、所轄消防署に届出を行い、各種規制値以上の性能を満足するよう計画する必要があります。

非常用発電機の燃料に使用される軽油や重油は、第4類危険物として規制されます。危険物はその危険性の度合いによって、基準となる数値が定められており、指定数量が区分されています。下記は、第4類危険物の指定数量一覧です。

  • 特殊引火物(エーテル等) - 50L
  • 第1石油類(非水溶性液体:ガソリン等) - 200L
  • 第1石油類(水溶性液体:アセトン等) - 400L
  • アルコール類(エタノール等) - 400L
  • 第2石油類(非水溶性液体:灯油・軽油等) - 1,000L
  • 第2石油類(水溶性液体:酢酸等) - 2,000L
  • 第3石油類(非水溶性液体:重油等) - 2,000L
  • 第3石油類(水溶性液体:グリセリン等) - 4,000L
  • 第4石油類(ギヤー油等) - 6,000L
  • 動植物油類(ヤシ油、ナタネ油等) - 10,000L

非常用発電機の燃料として広く使用されているものとして、軽油とA重油があります。軽油は第2石油類の非水溶性液体ですから、指定数量は1,000Lとなります。A重油を採用する非常用発電機であれば、2,000Lが指定数量となります。

軽油とA重油の使い分け

軽油はA重油よりも高価ですが、ガソリンスタンドでも取り扱っているため、入手が容易です。軽油は粘度がA重油よりも低いため、高速運転する発電機でも支障なく使用することが出来ます。逆にA重油は粘度が高く、高速運転する発電機には向いていないと言われています。ディーゼル発電機は比較的低速運転のため、軽油・A重油ともにどちらを選定しても問題ありません。

危険物の指定数量の観点から、A重油は400リットル以上保管すると、少量危険物取扱所の扱いとなります。軽油の場合は規制が厳しくなり、200リットル以上を保管すると少量危険物取扱所の扱いになります。大容量のパッケージ型非常用発電機の場合、A重油でなければ少量危険物取扱所となってしまいますので、A重油を採用する事例が多くなります。

なお、A重油と軽油を混合して使用すると、互いの燃料は完全に混合されず、回転速度の制御不良となったり、異常黒煙の発生に繋がります。燃料の混合をしてはいけません。また、軽油仕様として納入した非常用発電機にA重油を入れること、または逆に、A重油仕様として納入した発電機に軽油を入れても運転可能なことがあります。発電機の運転特性をメーカーに問合せ、燃料の置換が可能かを確認すると良いでしょう。その場合、完全に燃料を抜き取った事を確認することが重要です。

地下タンクの構造と計画

地下埋設する場合、地中にタンクを埋設するための構造躯体を構築し、タンクを据え付ける必要があるため、構造設計との調整が重要です。特に地中の水位に注意が必要で、水位が高い場合、地中躯体が浮き上がる事が考えられるため、基礎の下部に杭が必要かどうか、検討が必要になります。

水位が高いと浮力も強くなりますので、タンクに燃料が満載の場合には問題がなくても、タンクが空になったときに浮力によって浮き上がるおそれがあります。十分な構造的検討が不可欠です。

燃料小出槽の構造と計画

発電機を数十時間運転する必要がある場合、本体搭載の燃料タンクでは容量が追いつかなければ、別に燃料タンクを設置する必要があります。燃料タンクの容量が小さな場合、燃料小出槽と呼ばれる小型のタンクに燃料を備蓄し、燃料供給を行います。

数千から数万リットルの大容量の燃料が必要な場合は、主燃料槽として燃料タンクを設置しますが、直接主燃料槽から発電機に燃料を供給することはなく、一度燃料小出槽に燃料を供給し、そこから重力によって発電機に送油します。

燃料が1,000L程度であれば、燃料小出槽のみで発電機の配管計画を立てることが可能ですが、それ以上の燃料を必要とする場合は、燃料小出槽と主燃料槽を組み合わせます。主燃料槽を燃料小出槽よりも高い場所に設置する場合は、緊急遮断弁や燃料移送送ポンプなどを考慮する必要があります。

燃料小出槽は、設置対象となる発電機を2〜3時間程度運転することができる燃料を備蓄するのが一般的です。燃料移送ポンプは発電機の全負荷運転時の燃料消費量よりも大きな能力を持つものとし、かつ燃料小出槽を30分程度で給油できるものとします。

燃料移送ポンプを設置する部屋については、所轄消防の指導によりますが、防爆仕様とすることを義務付けられる可能性がありますので注意しましょう。計画の事前に協議を申し入れ確認すると良いでしょう。

非常用発電機の容量計算

非常用発電機の容量計算は「消防用設備等の非常用電源として用いる自家発電設備の出力の算定方法について(通知)(昭和63年8月1日消防予第100号)」による計算式に当てはめて算出する必要があり、負荷容量を単純に合算し、直近上位の発電機を選定する、という方法ではありません。

設置する非常用発電機の特性、始動装置の特性、負荷が電灯負荷なのか、動力負荷なのか、あらゆる要素によって大きく数値が変動します。また、負荷を同時始動させるか、順次始動させるかによっても、容量が変動します。

これらの情報を全て収集し、手計算することはもちろん可能ですが、極めて煩雑かつ非効率的です。専門メーカーに計算依頼をするのが一般的で、負荷設備の特性と始動方式を提示することで、発電機の容量計算を行います。

または、日本内燃力発電設備協会が出力算定ソフトウェアを販売しており、これを利用することでも容量計算を行うことができます。

燃料タンクの容量計算方法

非常用発電機を長時間運転させるため、燃料タンクを別置きする計画を行うことがあります。一般的に、大容量のタンクを地上や建物内に設置した場合、危険物取扱所として規制され消防設備や建築構造に制約が発生するため、地下埋設とするのが多い計画となります。燃料タンクの容量は、発電機の連続運転時間、運転の頻度、燃料消費率を確認し、必要な燃料の容量を決定します。

燃料タンク容量の算出計算(ディーゼルエンジン)

ディーゼルエンジン発電機の燃料タンクは、下記の計算式によって容量を算出します。

Q = b × E × H / w

Q : 燃料必要量[L]、b : 燃料消費率[g/kW・h]、E : 原動機出力[kW]、H : 運転時間[h]、w : 燃料密度[g/L]

燃料消費率は原動機出力によって左右され、下記のような関係性があります。

  • 22kW以下 : 310[g/kW・h]
  • 22kWを超え184kW以下 : 300[g/kW・h]
  • 184kWを超え331kW以下 : 270[g/kW・h]
  • 331kWを超え552kW以下 : 250[g/kW・h]
  • 552kWを超えるもの : 230[g/kW・h]

燃料密度wは、軽油の場合830[g/L]、A重油の場合850[g/L]となります。

ここで、軽油を使用したディーゼルエンジン発電機で、原動機出力120kW、必要運転時間3時間の燃料タンク容量を算出します。

Q = b × E × H / w より、Q = 300 × 120 × 3 / 830 = 130[L] となります。130Lの軽油を燃料とすれば、指定数量1/5以下となりますし、非常用発電機のパッケージ商品で選定が可能です。燃料が多くなった場合、パッケージ商品は少量危険物取扱所にならない範囲までの製品が主のため、別に燃料小出槽を設けるか、地下タンクなどを設置することになります。

燃料タンク容量の算出計算(ガスタービンエンジン)

ガスタービンエンジン発電機の燃料タンクも、ディーゼルエンジン発電機と同様の計算式によって容量を算出します。

Q = b × E × H / w

Q : 燃料必要量[L]、b : 燃料消費率[g/kW・h]、E : 原動機出力[kW]、H : 運転時間[h]、w : 燃料密度[g/L]

燃料消費率は原動機出力によって左右され、下記のような関係性があります。ディーゼルエンジンよりも燃料消費率が高く、2〜2.5倍の消費量となります。

  • 184kW以下 : 680[g/kW・h]
  • 184kWを超え331kW以下 : 660[g/kW・h]
  • 331kWを超え552kW以下 : 590[g/kW・h]
  • 552kWを超えるもの : 520[g/kW・h]

燃料密度wは、灯油の場合780[g/L]、軽油の場合830[g/L]、A重油の場合850[g/L]となります。

軽油を使用したガスタービンエンジン発電機で、原動機出力350kW、必要運転時間3時間の燃料タンク容量を算出します。

Q = b × E × H / w より、Q = 590 × 350 × 3 / 830 = 746.4[L] となります。

非常用発電機の特殊仕様

非常用発電機は、超長時間運転可能型、寒冷地対応型など、オプションによって様々な環境で運用することができます。特殊環境で使用する場合、その環境に適用した非常用発電機を選定しなければ、非常時にその能力を発揮できず人的被害につながるおそれがありますので、綿密な計画が不可欠です。

非常用発電機の長時間運転

非常用発電機を長時間運転させる場合、長時間対応形の非常用発電機を採用します。法的には2時間以上の運転時間が一般的ですが、4時間・8時間など、特に長い継続運転時間を指定された場合は、別に燃料タンクを設ける対応が必要です。

燃料貯蔵量によっては危険物取扱所になってしまう可能性があるので、指定数量の考え方を理解し、指定数量を超過しない燃料を選定するのが良いでしょう。または、地下タンク貯蔵所とすれば、指定数量を超える貯蔵でも、法規制はそれほど厳しくなりません。

非常用発電機は通常、72時間連続運転が標準的メーカー保証時間となっています、それ以上の連続運転をしたい場合、超長時間運転対応としての改造が必要になることがあります。採用予定の発電機メーカーに、運転時間による能力補正の必要有無を確認するのが良いでしょう。

発電機を運転するためには、潤滑油の存在が重要です。潤滑油が喪失すると、駆動部が異常発熱し、回転することができなくなります。通常、運転を継続したまま潤滑油を補給することができないため、潤滑油の容量が連続運転時間に直結します。連続運転を行う場合は、潤滑油の容量を確認することが重要です。

寒冷地仕様

非常用発電機を選定する場合、気温・高度・運転時間について考慮する必要があります。首都圏以南など、比較的温暖な地域であれば標準仕様とすることができますが、首都圏以北、山岳地帯など、準寒冷地や寒冷地に該当する地域では、スペースヒーターなどを用い、ラジエータ等の凍結防止を図る必要があるため、特殊仕様の発電機となります。

周囲温度10℃以上であれば、機関に特別の対策をする必要はありませんが、5℃を下回ると、機関のジャケットなどを保温しなければ動作不良となる可能性があります。

高高度使用

発電機の設置高度は、出力に関する重要要素となります。標準仕様の非常用発電機では、メーカー保証の範囲として、150mまたは300m以下の場所に設置するのを前提条件としており、設定以上の高度に非常用発電機を設置する場合は、高高度対応として容量計算をしなければいけません。高高度対応とした場合、5%〜10%の能力低下が発生すると言われています。

非常用発電機の常用運転

非常用発電機は、火災時・停電時など有事の際に使用することを前提に製作されていますので、常用発電機のようにピークカット等に使用することに向いていません。連日フルロードで運転させたり、繰り返し運転・停止を繰り返すような過酷な運転も、非常用発電機の設計上想定外のため、機器の故障を引き起こす原因となります。

発電機でピークカットなどを考慮する場合、非常用発電機ではなく、専用の常用発電機を使用し、非常用発電機はあくまでも非常用として運用することが望まれます。また、燃料が失われた状態で火災などが発生すると、本来目的としている消防用設備の電源としての機能を果たすことができず、消火活動や避難活動に支障をきたすことが考えられます。常用運転を行わなければならない場合、メーカーへ常用運転可能かどうか確認を行い、特殊なメンテナンスや点検の有無を確認しましょう。

REH蓄電池とMSE蓄電池の比較

REH蓄電池は高校率放電が可能な蓄電池で、小型のパッケージで12Vの公称電圧を得ることができます。UPS用蓄電池としての利用のほか、非常用発電機の起動用蓄電池として幅広く採用されています。

非常用発電機のバッテリーはセルモーターを運転させることが主目的ですから、高効率な蓄電池が求められます。REH蓄電池が一般的に使用されますが、寿命が1〜2年程度長い、MSE蓄電池を採用することも多くなっています。

しかし、MSE蓄電池は公称電圧2Vであるため、24Vの電圧を得るためには12セルを連結しなければならず、REH蓄電池の倍程度の設置スペースが必要になります。また、REH蓄電池と比較し、MSE蓄電池は納期が非常に長くなる傾向がありますので、搬入据付時期によっては採用が困難になる可能性がありますので、計画時には注意が必要です。

REH蓄電池・MSE蓄電池ともに、周囲温度25℃を超えると寿命が著しく低下する性質があり、周囲温度30℃では約70%、周囲温度40℃では約40%という大幅な寿命低下を引き起こします。MSE蓄電池を採用し、REH蓄電池よりも1〜2年の寿命を引き伸ばしたとしても、実際は数ヶ月程度しか寿命が伸びていないということも考えられます。計画時には周囲温度がどのように推移するかを確認し、期待寿命を確認するのが良いでしょう。

発電機の立会検査と動作試験

非常用発電機を正常に運転させるには、各種試験を行い動作確認することが重要です。始動渋滞や過回転が発生した場合の機関緊急停止や遮断器開放の動作確認、停電・復電時の動作時間確認、温度上昇試験など、発電機の性能・能力を確認するための試験が規定されています。

発電機本体の性能を確認するための各種試験を行い、非常時でも適正に発電機が運転し、防災負荷に電源が供給されることを確認することが重要です。

保護回路動作試験

非常用発電機に異常が発生した場合、警報を発信し、異常が継続した場合に機関故障が発生するおそれがある場合は強制的に機関停止を行い、遮断器を開放するなどの保護を行います。代表的な発電機故障項目は下記の通りです。

  • 緊急停止ボタン押下
  • 過回転
  • 過電流
  • 始動渋滞
  • 潤滑油油圧低下
  • 冷却水温度上昇

他にも異常電圧・異常周波数の発生などで、機関停止や遮断器開放を行うことも可能です。必要に応じて、保護回路の種類と項目を追加すると良いでしょう。

自動運転シーケンス試験

系統が停電し、発電機が自動起動、プライミングを経て電圧確立するまでの時間を測定します。発電機の仕様として、10秒始動仕様と40秒始動仕様がありますが、指定した仕様よりも早い時間で電圧確立し、負荷を発電系統に切り替えられるか確認します。

セルモーターを回転させ発電機が起動し、潤滑油を流動させ、定格電圧まで電圧上昇する時間を測定します。40秒始動の製品でも、概ね20秒以内で始動するのがほとんどです。

合わせて、系統電源の復電時には発電系統から商用系統に負荷切替が行われ、発電機停止指令、機関停止までの一連の流れが自動で行われますが、この時間を計測します。復電から概ね3分程度で停止完了となるのが一般的です。

温度上昇試験

発電機は負荷に電力を供給することで発熱します。所定の温度異常に上昇してしまうと、発電機本体が焼損してしまいますので、適正に放熱機構が働いていることを確認します。100%負荷を行い、発電機排風温度、継鉄温度、固定子温度を測定します。長時間対応型の発電機では、110%負荷運転を30分行い、その温度上昇を確認すると良いでしょう。

エンジンの油温、水温、油圧、排気温度も合わせて測定します。温度上限値はメーカーやJEMの規格を確認し、異常が発生しない数値であることを確認します。

燃料消費量試験

発電機は運転により燃料を消費しますが、これが仕様通りであるか確認します。全負荷運転を行い、メーカーが提示する燃料消費量以下であることを確認します。燃料消費率は前述タンク計算で示したように、

  • 22kW以下 : 310[g/kW・h]
  • 22kWを超え184kW以下 : 300[g/kW・h]
  • 184kWを超え331kW以下 : 270[g/kW・h]
  • 331kWを超え552kW以下 : 250[g/kW・h]
  • 552kWを超えるもの : 230[g/kW・h]

という関係性があるため、原動機の出力に対して、この消費率が数値以下であることを確認すれば良いでしょう。

蓄電池始動試験

非常用発電機の始動には、蓄電池が使用されます。蓄電池に異常があると、緊急時にセルモーターを回すことができず、発電機を始動させることができないという致命的な事故につながります。

蓄電池の始動試験では、「セルモーター駆動時間10秒、休止5秒の間隔」で、連続3回以上行えることを確認します。連続3回以上セルモーターを回転させ、4回目に正常起動させることが出来れば試験は合格です。

騒音測定

発電機本体の騒音を測定します。普通騒音(105dB以下)、低騒音(85dB以下)、超低騒音(75dB以下)に区分されていますが、「本体から距離1m・高さ1.2mの周囲4点で測定した平均値」が、仕様の値よりも小さいことを確認します。

負荷遮断・投入試験

発電機に接続された負荷が、突然0になった場合、または突然投入された場合に、異常なく電力供給できることを確認します。100%負荷運転時に突然負荷が0となった場合、または負荷0状態から突然50%負荷となった場合に、電圧と周波数がどれだけ変動し、整定状態となるまでの時間を測定します。合わせて負荷特性試験として、負荷100%、110%、順次0%まで負荷を変動させた時、電圧と周波数が変動しないことを確認します。

非常用発電機の法定点検

非常用発電機の機能を維持し、非常時に適切に運転させるためには、保守管理を適切に行わなければいけません。発電機の保守点検は、建築基準法、消防法、電気事業法によって規定されていますので、これに準拠しつつメーカーが示す必要な点検・修繕を行う必要があります。

建築基準法による規定

建築基準法では「建築士」「建築設備点検資格者」により、6ヶ月〜1年の周期で点検を行い、特定行政庁への報告が必要です。外観、性能の確認を行います。定期報告違反をした場合、罰金を課せられることがあります。

消防法による規定

消防法では、「消防設備士」「消防設備点検資格者」により、特定防火対象物の場合1年周期、それ以外の場合は3年周期で 点検を行い、点検結果報告書と点検票を作成しなければいけません。点検報告違反をした場合、同様に罰金を課せられることがあります。

電気事業法による規定

電気事業法では、非常用発電機を設置するものが、電気主任技術者が作成する保安規定に準じて点検を行います。一般的には、建築基準法や消防法、または変電設備の点検に合わせ、1年に1回程度の点検に含むこととします。電気設備を適正に運用するための点検なので、日常点検、定期点検、精密点検を実施し、異常がないことを確認しながら使用することになります。保安規定違反をした場合は、経済産業省より技術基準適合命令が罰則として課せられるおそれがあります。

非常用発電機のメーカー

発電機製作メーカーとして代表的なのは、東京電機、ヤンマーなどが代表的です。どのメーカーも、消防負荷を運転させるための防災用パッケージ発電機を製作しており、20kVA〜500kVAの低圧仕様、または500kVAを超える高圧仕様をラインナップしているため、設計における選定がしやすくなっています。

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