電動機の始動方式と始動電流

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電動機の始動電流について

電動機を始動させる場合、小型の電動機であれば電圧をじか入れ(電源を単純に投入)するだけで、問題なく立ち上げ可能です。このとき、定格速度まで電動機が加速する間、定格で運転するときよりも負荷が大きくなっているため、電流値が定格電流よりも大きく流れます。

始動時に大きく流れる電流は、定格電流の5倍から7倍の電流値になることがあり、この電流を始動電流と呼びます。

例えば、7.5kW程度の電動機の定格電流は26A程度とされていますが、始動電流は150Aもの大電流になります。26Aが定格電流だからと、直近上位である「30Aの配線用遮断器」を選定すると、電動機始動時に遮断器が動作してしまい、電動機が運転開始できないという不具合につながります。

50A程度の配線用遮断器を選定すれば、始動電流が低減して定格電流に至るまでの間、遮断器は動作せず持ちこたえます。小型の電動機であれば問題ありませんが、30kWといった大型電動機をじか入れで運転させようとすると、始動電流は700Aから800Aとなりますので、本来125A程度の定格に対して、400Aという過剰サイズの遮断器を設置しなければいけません。

これは遮断器への過剰な投資となり、コストに見合った設計ではありません。大型の電動機を使用する場合、スターデルタ始動器やコンドルファ始動器といった「始動電流を小さく抑えるための装置」を付加することで、過剰になりがちな遮断器容量を小さく抑え、コスト低減を図ります。

一般的に、200V回路であれば11kW以上の電動機に対して、始動器を用いて始動電流を低減させるとコストメリットがあるとされています。

電動機は、電圧を印加した瞬間から始動電流が流れ始めますが、電動機の回転負荷が大きく、長時間に渡って電動機の回転数が上昇せずにいると、始動電流が長時間発生します。配線用遮断器だけでなく、電動機に接続されている部品や電装品に対して過剰な電流が流れ、異常発熱による焼損につながりますので、適正な始動器を選定し、事故を防止するのも設計者の役割のひとつです。

始動方式の種類と特徴

電動機に対し、単純に全電圧を印加するのは最も単純で原始的な始動方式です。前述したように始動時に大きな電流が発生し、保護継電器や遮断器、ケーブルに負担を与えますが、最も大きな加速トルクを生み出すことが可能なため、ケーブルや配線用遮断器を大きくしても良いのであれば、全電圧を印加する方式を採用すべきです。

しかし、大型電動機を全電圧で始動するのは現実的ではありません。電動機を始動させるための方式として、前述した「全電圧始動」のほか、「スターデルタ始動」「リアクトル始動」「コンドルファ始動」「一次抵抗始動」があり、設備の規模や条件によって設計者が選定します。

かつ、スターデルタ始動方式は「オープンスターデルタ始動」と「クローズドスターデルタ始動」に分類されます。それぞれの特徴は下記の通りです。

全電圧始動

始動装置を設置せず、電動機に対して電圧を直接印加して始動させる方式を全電圧始動といいます。最も単純な始動方法であり、始動装置も無いため安価ですから、コスト面からすればできる限り全電圧始動を採用するべきです。十分な電源容量と遮断器容量があれば、大きな加速トルク特性を確保できるので、大型の電動機をスムーズに加速できます。

電動機の容量や電流特性にも若干左右されますが、全電圧始動では定格電流の5倍から7倍の始動電流が流れるため、大きな電圧降下が発生します。

場合によっては、同一系統に接続されている他の電気機器への供給電圧が低下し、水銀灯などの立ち消えや、半導体製品への悪影響を及ぼすことがありますので、電圧降下が発生しないようケーブルサイズを大きくする検討も必要です。

また、大きな始動電流によって配線用遮断器が動作してしまう可能性があるため、より大容量の遮断器を選定するか、電動機専用に特性が調整された「電動機用遮断器」を採用することになります。

7.5kWを超えるファンやポンプへの電源供給において、全電圧始動では不経済になるとされています。全電圧始動では賦形剤となる場合、スターデルタ始動方式を採用するのが一般的です。

オープンスターデルタ始動

オープンスターデルタ始動方式は、全電圧始動よりも低い始動電流で電動機を運転できる始動器のうち、最も普及している始動方式です。

一次巻線をスター結線にすることで始動電流1/3まで抑え、電動機が定格速度まで加速した時点でデルタ結線に切り替えて定格運転とする方式です。単に「スターデルタ始動けといった場合、オープンスターデルタ始動を示します。

電動機の固定子巻線の両端から3本ずつ、計6本の口出し線を引き出し、始動時にはモーター巻線をスター結線として電源電圧を1/√3に低減させて始動電流を小さく抑えます。モーターが安定回転し、電流が小さくなった頃を見計らいデルタ結線に切り替えることで、始動電流を小さく抑えたまま、通常の運転状態とできます。

スター結線とデルタ結線の切替には、電磁開閉器を用います。スター結線用の電磁開閉器と、デルタ結線用の電磁開閉器がタイマーによって制御されます。この一連の動作において、始動電流を低減できるため配線用遮断器を小さくでき経済的です。

オープンスターデルタ始動は11kWから45kW程度まで、比較的小型の電動機で採用可能ですが、大型の電動機を始動するには限界があります。始動電流が全電圧と比べて1/3となりますので、遮断器サイズを小さくできるものの、電圧を低く抑えているため加速トルク特性が悪く、大型の電動機を回転させるための電流が不足し、加速トルク不足で電動機が定格運転できないことがあります。

また、スターデルタ結線は切替時にショックが発生します。スターデルタ始動の場合、スター結線からデルタ結線に切り替わる瞬間に電圧が0になるため、電動機が空転状態になります(これはオープン状態と呼びます)。

空転している間はトルクも電流も0になっており、デルタ結線に切り替わった瞬間にトルクと電流が再度発生しますので、突入電流によるショック現象を起こします。

ショックを許容できるのではあれば支障ありませんが、このショック現象を防止したい場合は、クローズドスターデルタ方式の採用を検討します。

クローズドスターデルタ始動

クローズドスターデルタ始動は、オープンスターデルタ始動の欠点である「ショック現象」を低減させた始動方式です。

スターデルタ始動と始動の仕組みは大きく変わらず、始動電流を1/3とできる始動方式ですが、抵抗器を含んだマグネットスイッチのセットを、オープンスターデルタ方式よりもひとつ多く組み込んでいます。

スター結線からデルタ結線に切り替えた瞬間の突入電流は、抵抗器付き回路によって吸収され、ショック現象が低減されます。

クローズドスターデルタ始動方式は、電路に対して常時電圧が印加された状態が継続します。電源開放状態(オープン状態)が存在しないことから、クローズドスターデルタ始動という名称が付けられています。

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切替時のショック現象が品質に影響するような系統や、頻繁にオンオフすることによるショック現象の軽減に効果的ですが、抵抗器と電磁接触器の個数が増えるためコストアップとなります。

リアクトル始動

リアクトル始動方式は、45kWを超える大型機械に採用される方式で、始動電流を1/2程度まで低減可能です。大容量の電動機を始動できる始動器ですが、採用実績はあまりありません。

電動機の一次側にリアクトルを入れることで始動電流を緩衝させ、電動機の回転速度が定格速度近くまで上昇した時点でリアクトルを短絡させて始動状態を維持します。

リアクトル始動はスターデルタ始動よりもトルク特性が良く、リアクトルタップによって25%~81%まで多段的にトルクを発生できます。スターデルタ始動方式よりも大容量の電動機を立ち上げ可能です。

コンドルファ始動

コンドルファ始動方式は、電動機の一次側に単巻変圧器を入れ、低電圧で始動開始することで始動電流を低減させる始動方式です。低電圧のままではいつまでも回転速度が上がらず定格速度に到達しないため、継電器を用いて抵抗回路を切り離し、全電圧に切り替え、定格速度まで電動機を加速させます。

各種ある始動方式中でも非常に高価な設備ですが、始動電流を最大で25%程度まで低減できる上、始動トルクも良好なため大容量の電動機もスムーズに立ち上がります。スプリンクラーポンプなど大型になりがちな電動機において、100kW以上といった大容量電動機に採用されます。

コンドルファ始動装置は単巻変圧器が必要なため、動力制御盤に組み込む場合、盤の奥行きが通常の動力盤よりも大きくなります。消火ポンプ室や機械室など狭い室内に設ける場合、制御盤の設置スペースが確保できるよう計画しましょう。

一次抵抗始動

リアクトル始動方式と同じ構成ですが、リアクトルの代わりに抵抗を用いたものです。電源電圧を下げて電動機に電圧印加する方式で、トルクの増加が大きく加速も円滑ですが、コンドルファ始動方式が普及しているため採用実績はあまりありません。

始動補償器指導

始動補償器という三相単巻変圧器を使用し、スター接続にして電源電圧を下げて電圧印加する方式です。一次抵抗始動と同様、コンドルファ方式が普及しているため、採用実績はあまりありません。

電動機の規約電流

規約電流は、誘導電動機の遮断器・配線設計を行うために、全負荷電流値として定められたものです。下表は、三相かご形誘導電動機の規約電流です。使用回路の電圧が220Vの場合は、電流値が若干小さくなりますので、規約電流値を0.9倍した数値を使用します。

出力(kW) 規約電流(A)
200V 400V
0.2 1.8 0.9
0.4 3.2 1.6
0.75 4.8 2.4
1.5 8.0 4.0
2.2 11.1 5.6
3.7 17.4 8.7
5.5 26 13
7.5 34 17
11 48 24
15 65 33
18.5 79 40
22 93 47
30 124 62
37 152 76
45 190 95
55 230 115
75 310 155
90 360 180
110 440 220
132 500 250

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