電磁調理器・電子レンジの仕組み | 電気代と消費電力・事故例の紹介

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電磁波を利用した調理器具

電磁波は通信媒体として利用が始まったものであるが、電磁波が持つエネルギーを熱に変換することが考案され、調理器具として広く使用されている。電子レンジ、IHクッキングヒーターなどが代表的である。

電子レンジは、調理対象に直接の熱を与えることをせず、飲食物を加熱できる。電磁調理器は金属製の鍋を加熱し、熱を発生させることで調理が可能である。

調理をするための熱といえば、ガスを使用することが一般的であるが、現在では電磁調理器を使用した住宅も数多く、オール電化住宅の調理器具として普及している。電子レンジについては、普及率95%ともいわれるほど広く使用されている電気機器である。

消費電力は大きめであるが、運転時間が短いため消費電力量は比較的小さく抑えられ、同じ熱量の加熱をガスコンロ等でおこなうよりも、省エネルギーかつ効率的ともされている。

電子レンジの写真

電子レンジの仕組みと加熱原理

電子レンジやアメリカが発祥の電気調理器具で、日本では1961年に販売が開始されている。電子レンジというのは日本国内での呼び方であり、アメリカではマイクロウェーブオーブンという名称であり、電子レンジという名称は一般的ではない。

電子レンジは電磁波の電界成分を利用した加熱装置で、飲食物に含有している水分子を摩擦熱で加熱する。水分子は水素と酸素がV字形で結合している分子であり、これに電磁波を当てることで、水分子が向きを変化させる。この向きの変化が、電磁波の周波数が高くなるほど高速化し、分子内に大きな摩擦熱が発生する。

電子レンジに内蔵されている真空管(マグネトロン)により、2,450MHzの高周波が発生させている。2,450MHzの高周波は、1秒間に24億5000万回プラスとマイナスが入れ替わる周波であり、水分子が同じ回数分振動する。この高周波は金属体を反射し、プラスチックやセラミックスを透過する性質があるので、反射・透過を繰り返し、食品の水分子に電磁波がぶつかり、振動発熱を行う。

摩擦熱は水分子を電磁波によって方向変換させており、外から熱する場合とそもそもの原理が違う。加熱対象物の内部も外部も一様に加熱できるので、所定の温度まで加熱する時間が短く済むのが特徴である。

庫外へのマイクロ波の流出保護

電子レンジは、その筐体内部のみを高周波に曝し、対象物を過熱するが、電子レンジの庫外に高周波が漏れ出すことはなく安全である。電子レンジの操作面は透明の樹脂製となっており、プラスチックやセラミックスを透過する高周波の特性上、外に漏れ出すのではと考えてしまうことがあるが、マイクロ波流出防止には、表面に見える小孔の開いた鉄板が関係している。

マイクロ波の波長は、約12cmの振幅をもって伝送されているため、これ以下の金属体の小穴は、透過できない。電子レンジの操作面には、遮蔽用の金網が取り付けられており、12cmよりも小さいため、庫外に電磁波が漏れ出すことはない。

自動(おまかせ)運転の仕組み

電子レンジは、弱・強の出力選択と、動作時間を組み合わせる手動運転と、加熱メニューに応じた自動運転がある。自動運転では、電子レンジに内蔵された各種センサーにより、庫内温度、湿度、加熱対象の重量、赤外線発生状況などを検出して動作する。

温度センサー

温度センサーは、庫内の温度を検出することで、加熱時間や庫内温度の調整を行う機能である。電子レンジの自動運転においては、最も基本的な機能のひとつである。

湿度センサー

湿度センサーは、レンジ庫内の加熱状況に応じ、食品から発生する水蒸気によって高まる湿度を検出し、その食品状態を判断して加熱時間を調整する。

重量センサー

食品の重さを検出し、重さに応じて加熱時間と出力を調整する機能である。加熱メニューを選択したとき、その量によって加熱時間を調整することで、加熱し過ぎや加熱不足を避けられる。

赤外線センサー

食品から発生する赤外線量を検出することで、食品の状況を判断し加熱時間や出力を調整する機能である。

電子レンジの加熱原理と機能

電子レンジには、単純な加熱機能だけがある単機能レンジと、レンジによる加熱以外にオーブンやスチーム、グリルなど各種加熱方式を組み合わせた複合レンジがある。

単機能レンジ

マイクロ波を用いた誘導加熱だけを行う機能を持つ電子レンジである。水分を振動させて加熱する方式なので、食品や飲料の温めが可能であるが、ヒーターやグリルを内蔵しているものではないため、焦げ目を付けたりするような使い方は不可能である。

インバータ式のレンジでは、マグネトロンの動作電圧を調整することで出力を調整できるが、インバータ式ではない場合、強弱の切替は「マグネトロンの放出有無」によって調整される。強運転では一定出力のマイクロ波を照射するが、弱運転ではマイクロ波を間欠的にオンオフし、総合的な出力を弱めるという方式を採っている。

グリル機能

トーストやグリルなど、ヒーターによる強い放射熱で焦げ目をつける事ができる機能である。グリルやトーストは単品でも販売されているものであるが、電子レンジに複合させることによって利便性を向上させている。

スチーム加熱機能

レンジ内に高温のスチームを発生させて、食品に吹き付けることで蒸し上げられる機能である。スチームは庫内に発生容器をセットする方式などがあるが、加熱原理はどれも同一である。

オーブン加熱機能

ヒーターで庫内全体を加熱し、熱の伝導によって庫内の食品を加熱する方式である。電子レンジの特徴である誘導加熱を利用せず、ヒーターによって温める方式なので、電磁波を反射する材料であっても加熱できる。

ファンを用いて熱風を循環させ、庫内全体の温度を高める「コンベクション方式」と、庫内上下に取付けられたヒーターによって庫内を温める「上下ヒーター方式」に分類される。

過熱水蒸気加熱方式

飽和した水蒸気に対し更に加熱を行うことで、100~430℃という高温を作り出し、これで食品を加熱する方式の電子レンジである。水蒸気は過熱水蒸気発生装置によって加熱され過熱水蒸気となり、ファンで循環されて食品に当たる。過熱水蒸気による加熱は、空気加熱の十数倍という高い熱量を持っているため、食品の急速加熱が可能である。

過熱水蒸気加熱方式では、食品に対する「ビタミンC破壊抑制」「油脂酸化防止」「脱油」「減塩」の効果があるとされ、食品の調理に対する幅広い活用が期待できるものである。

過熱水蒸気で満たされた電子レンジ庫内は酸素濃度が極めて低くなるため、酸素と反応しやすいビタミンCの破壊が抑制される。これは油脂の酸化も同様で、酸素が少ない環境での加熱により、酸化が抑制されると考えられている。過熱水蒸気による高い温度は、食品の油分が早期に放出されること、凝縮水発生により塩分が洗い流されることなども効果が期待できる。

電子レンジの事故例

電子レンジは高周波を扱い、高い熱を発生させる電気機器であり、使用方法を誤ると火災や火傷事故につながるおそれがあり危険である。いくつかの事故例とその原因・原理を紹介する。

アルミホイルの加熱

金属体は電磁波を反射する性質があるため、アルミホイルなどは透過できず、電磁波が反射する。アルミホイルで全体を包んだ食材を電子レンジに入れても、加熱できない。アルミでできている食器や弁当箱なども、蓋をしたままでは内部に電磁波が侵入できないため、これも加熱できない。

アルミホイルは電磁波を反射してしまうので、熱を発生させられないばかりか、火花を発生させる。突起部を作っていたり、シワが発生している場合にはその可能性が高くなる。突起部を持つ金属体は、自由電子が先端部に集まっているため、高周波を与えることで金属体の外部に電子が飛び出し、放電と発熱をもって近接する金属体に移動する。

スチールウールなど、金属の先端部と近接する金属の塊で構成されているものは顕著に発生する。スチールウール全体に自由電子が飛びかい、放電と発熱を発生させ、燃え上がってしまう。放電による熱で火花となった金属体は、電子レンジの内部に接触して樹脂部を溶かし、機器を焦がす。アルミホイルを電子レンジに入れるのは、機器寿命を短くする原因となる。

突沸事故の危険性

電子レンジで生卵を加熱するのは危険であることは、比較的周知されている。卵の黄身が加熱され圧力が非常に高くなり、殻を割った瞬間に圧力が一気に外へ逃げ、破裂するという事故例が代表的である。これは卵だけでなく、たらこやソーセージなど薄膜に包まれた食材であれば、同様に発生するおそれがある。

飲み物についても、電子レンジによる加熱は危険を伴うことがある。お茶やコーヒーなどは純水な水と比べても対流が発生しにくく、蒸気が逃げずに静かな沸騰状態となっていることがあり、取り出した瞬間の衝撃で沸騰が突然発生し、手元や周囲に吹き上げる。スープやカレー、生クリームなど、対流が発生しにくい食材ではより危険性が高くなる。加熱した水に粉末コーヒーや粉末のお茶を入れた場合、粉末が沸騰石の役割を果たし、突沸による吹き上げが発生する。

密閉したパックなども同様で、内圧の上昇により破裂事故が発生する。アルミで作られているレトルト食品をそのまま封を切らずに加熱することは、内部に電磁波が到達せず、マグネトロンを故障させる原因となるため禁止されている。

電子レンジの空焚き

電子レンジに何も入れず、いわゆる空焚き状態とした場合、内蔵されている電磁波発生装置であるマグネトロンに大きな負担を与える。加熱物が入っていない電子レンジは、電子レンジ庫内で電磁波が全反射状態となるため、入力した電力のほぼ全てが熱エネルギーになってしまい、マグネトロン本体に熱による損失が集中する。

マグネトロン本体を構成する部品に全入力電力が集中すれば、多大な熱衝撃を受けることになり、電子部品を痛め、正規の寿命を確保できないばかりか、焼損事故につながるおそれがある。電子レンジを使って加熱する場合、水分子を含むものを庫内に入れ、空焚きにならないよう注意が必要である。

漏電等による感電事故

電子レンジは水分を含む食品に対し、熱を与えるのが目的の電気機器であり、その環境は他の家電製品と比べて過酷であり、絶縁不良等による漏電も発生しやすいといえる。電子レンジは、漏電時に安全に電流を大地に逃がすよう接地(アース)を施す必要がある。

電子レンジ用として計画されたコンセントはアース端子が付属している。電子レンジ本体とアース端子を接続することで、漏電発生時には大地に電流が逃げ、漏電遮断器が動作するため人体に対して安全である。しかし、電子レンジのアースを接続せずに使用しているケースが多く、非常に危険なため避けなければならない。

例外的にアースを省略しても良いのは「水による影響がない場所」に限られており、水を含む食品を取り扱い、かつキッチンなど周辺に水が数多くある場所において、アースを省略できない。

電子レンジに使用する容器の選択

電子レンジはその加熱特性により、容器の種類によってはまったく加熱できないもの、加熱できるが容器を損傷してしまうものなどがあるため、その選択には細心の注意が必要である。

使用できる加熱容器

ガラス容器、陶磁器、プラスチック容器は電子レンジによる誘導加熱が可能である。ガラス容器は急激に加熱したり、急激に冷却することで割れることがあるため、耐熱ガラスを使用することが原則で、耐熱性のないガラスやクリスタルガラスは使用してはならない。

陶器や磁器は問題なく加熱できるが、装飾として金箔や絵付けなどがされている場合、これが電子レンジの加熱によって火花となる。耐熱性プラスチック容器は、油ものを加熱した際の高温で変質する可能性があるので、140℃以上の耐熱性がある容器を使用すべきである。ラップなどを容器に被せることが多々あるが、これにも140℃以上の耐熱性が求められる。

使用できない加熱容器

ステンレス、アルミの金属容器は、電磁波を全て反射してしまうので使用できない。アルミホイルも同様に、電磁波が反射するため使用不可とされている。料理の手法として、部分的にアルミホイルを被せることが日常的に行われているが、アルミホイルで包むことで突起部分が発生し、ここで火花が発生する。

前述しているが、耐熱性のないガラス容器、クリスタルガラスなどは熱によって割れることがあるため使用できない。耐熱性のないプラスチック容器も同様である。木製や竹製の容器は、加熱によって焦げたり焼けたりすることがあるため、同様に使用できない。漆塗りの容器は塗りの剥がれやひび割れが発生する。

グリルやスチーム、オーブンなど、直接的な熱による加熱を行う場合、ラップなどプラスチック製品は耐熱性を持っていても使用禁止である。これらは焦げ目を付けることを目的としているため、140℃程度しか耐えられない樹脂容器では簡単に溶けてしまう。

電磁調理器・IHクッキングヒーターの加熱の仕組み

電磁調理器は、電磁波の磁界成分を利用した加熱調理器である。電磁調理器にはコイル状の装置が内蔵しており、25kHzの高周波電流を流すことで磁力線が発生し、磁力線によって渦電流が流れ、ホーロー・鉄・ステンレスなど磁化されやすい金属に電磁誘導が生じ、金属体の電気抵抗によって熱に変化する。IHクッキングヒーターはこの原理を利用した調理機器である。なおIHとは「Induction Heating(誘導加熱)」の頭文字を取った略称である。

電磁調理器は、リッツ線と呼ばれる加熱用コイルが使用されている。リッツ線とは、細い導体をまとめた構造をしている加熱用電線で、高周波電流特有の表皮効果が発生しても、導体全体に電流が流れるようにした高周波用電線で、効率良く加熱できるようになる。

加熱電線に渦電流が発生しなければジュール熱が発生しないため、調理器具を過熱できない。土鍋、ガラス容器などは絶縁体であり、渦電流が容器を通らず熱が発生しない。土鍋を使用する場合は、鉄製プレートや電磁誘導体が内蔵されている電磁調理器用の土鍋を使用する。

銅やアルミニウムは、渦電流が金属体内部に入り込金属体の表面を抜けやすい性質がある。電気抵抗が極めて小さいため、熱の発生も弱くなる。銅やアルミニウムの容器を加熱するためには、高周波電流を大きくする、銅・アルミ容器対応製品とする対応により可能である。機器購入の際にはこれらの容器に対応しているかの確認が重要である。

電子レンジ・電磁調理器の消費電力と電気代計算

電子レンジは600W~1,200W、電磁調理器は2,000W~5,000Wといった大きな電力を使用するが、使用時間が短いため電気料金はそれほど高くならない。1,200Wの電子レンジを2分間使用した場合 1,200 × 2 / 60 = 40[Wh](0.04kWh)の電力量となる。32円/kWhの単価で換算した場合、32円/kWh × 0.04kWh = 1.28円の電気代となる。

同様に、5,000Wの電磁調理器の消費電力から電気代を算出する。5,000Wの電磁調理器を20分間使用した場合 5,000 × 20 / 60 = 1,666[Wh](1.66kWh)の電力量となる。32円/kWhの単価で換算した場合、32円/kWh × 1.66kWh = 53.12円 が電気代となる。

電子レンジや電磁調理器は、使用時の消費電力が非常に大きいため、瞬間的に発生する大電力で停電しないよう使用方法に注意が必要である。キッチンに常設されている電磁調理器の電源は専用回路となっているが、可搬式の小型電磁調理器を使用する場合は、コンセントに他の負荷を接続すると電流が大きく超過してしまい危険である。

電子レンジの場合も同様で、通常1,200Wという大きな電力が発生するため、他の負荷を接続してはならない。電子レンジ用コンセントには、電子レンジのみを接続するよう注意を要する。通常、電子レンジを設置する予定の位置では、コンセントが単独回路で設計されている。

 
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