電気設備の知識と技術 > 自動火災報知・防災設備 > 消防機関へ通報する火災報知設備
消防機関へ通報する火災報知設備は、火災が発生した場合、録音された自動音声によって消防機関に通報する防災設備である。通常の電話回線を用いて消防機関に対し、住所を伝える機能を搭載している。
消防通報装置により消防機関に自動発信し、逆信を受けた建築物の管理者は、消防機関の担当者と直接通話し詳細な状況伝達を行うと良い。消防機関や設備関係者には、名称を省略して「火通(かつう)」とも呼ばれている。
装置内部に電源装置が内蔵されており、停電が発生しても、電話線が開通していれば通信が可能である。使用予定の回線が使われていても、火災通報設備を優先し、既存の通話は強制的に遮断される。消防機関側が話し中であっても再度自動で掛け直すことも自動で行われる。
通報用の録音音声には、施設の住所や名前が登録され、消防機関が消火活動や救急のために必要な情報を、的確かつ迅速に伝えられる。録音する音声の内容は、所轄の消防と十分に打ち合わせを必要とする。
火災通報設備は、消防機関への通報だけでなく、予め登録した関係の電話番号に対して自動的に連絡する機能を有する製品もあり、多機能化が進んでいる。
自動音声を消防機関に対して発信し、消防機関側からの発信を求める「逆信」をするよう要求する設備である。緊急を要する火災発生時に、建物利用者が火災状況を正確に伝えられず、特にホテルや老健施設などでは重篤な被害に繋がるおそれがあるため、消防通報装置の設置が義務付けられている。
消防機関からの逆信は、火災通報設備の専用電話機が鳴動するので、この電話を受けて火災の応答を行う。
消防通報設備は、自火報の発報に連動する機能も備えている。感知器や発信機など、火災の発生が検出された場合に、消防機関に自動通報する機能であり、平成27年までに「養護老人ホーム」「障害者施設」など、消防法施行令別表1の6項ロに該当する防火対象物では、自動通報の設置が義務付けられている。
自動で119番に通報され、消防機関から逆信を受けた建物管理者は、火災が本当に発生しているのかを伝達すれば、消防車や救急車が派遣される。応答がない状態が継続した場合は、火災によって避難が進んでいる可能性を考え、消防機関から出動がなされる。
ホテルや旅館など、不特定多数が宿泊する宿泊施設も消防通報装置の設置が義務付けられているが、誤発報による火災警報が消防へ自動通報されることを嫌い、手動のみとすることが多い。特にホテルでは、ユニットバスの扉を開けたまま入浴することで、室内の煙感知器が作動してしまい発報する事例が多く、自動による通報は消防機関側も強く求めないことが多い。
消防機関へ通報する火災報知設備は「一般電話機」によって代替できる。電話回線を導入しており、一般電話機を施設内に設置している建物であれば、消防機関へ通報する設備を設置する必要はない。ホテルや病院を除くほとんどの建築物は、消防通報設備の代替電話機による計画を行っている。
IP電話や光回線を用いた電話機は、逆信が受けられないため使用不可とされている。公衆電話回線なども、逆信ができないため接続は不可である。
電話機で通報設備を代替する場合において、携帯電話やスマートフォンは消防機関へ常時通報できる電話機と認められていない。電池が常に充電されているとは限らず、有事の際に通信できなかった場合の被害が重篤になるためである。よって、有線による固定電話を設置しなければならない。
旅館(ホテル)、病院、福祉施設などの場合、電話機によって消防通報設備を代替する緩和措置が認められていないため、消防機関へ通報する火災報知設備の設置が義務付けられる。
宿泊室数が少ない診療所、病床数が少ない診療所、通院のみで入院を受け入れていないクリニックなど、小規模の施設であれば設置が免除できる可能性があるため、計画地に消防協議を行うとよい。宿泊を伴う施設であれば、ほとんどの防火対象物で火災通報設備の設置を求められる。
消防機関から10km以上離れた場所にある施設や、消防機関から500m以内の場所にある施設の場合は、消防機関へ通報する火災報知設備の設置を免除できると記載されているが、所轄消防によっては免除を認めないことも多く、十分な事前協議が必須である。
火災通報設備は、防災センター、中央管理室、守衛室など、常時人がいる場所に設置するのが原則である。複数の防災センターや管理室が設けられている複合施設では、常時人がいる場所が複数に渡る。このような環境であれば、代表となる拠点に消防通報装置を設置し、他の場所には遠隔起動装置を設置するよう指導される。
電話回線の接続方法は、電話交換機と局線の間としなければならず、交換機の内線に接続してはならない。電話回線は、利用度が低い発信専用の回線を1回線使用することが望ましい。
新築の建築物では、消防検査と電話開通が前後する事が多く、建物引き渡し後に弱電関連工事を行う事例が多いため、消防検査用として専用回線を先行して1回線開通し、検査を受けられるよう調整することが重要である。
消防通報設備を試験する場合、局線を使用せずに行う専用試験装置を接続するジャックを設け、通報信号が外部に送出されないような切替スイッチを設けると良い。
消防機関へ通報する火災報知設備は、火災報知設備の一種であるため、甲種四類の消防設備士免状所持者でなければ工事を行なってはならない。電源の部分の電気工事は、第二種電気工事士の資格が必要である。
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