電気設備の知識と技術 > 自動火災報知・防災設備 > 住宅用火災警報器の種類と設置基準
住宅用火災警報器は住宅内の火災を検知し、警報によって住人に知らせる設備である。住宅には感知器や警報機を設置する義務はなく、多くの戸建住宅では、火災を事前に検出する装置は存在しなかった。
現在では、自動火災報知設備の設置義務がなかった戸建住宅や小規模集合住宅にも、設置が義務付けられることになった。
消防法上は「寝室」と「寝室がある階の階段」に警報機を設けるよう定められているが、市町村の火災予防条例によって、より厳しい基準を定めており、台所などが含まれる場合がある。
「義務」という言葉が使われているが、自己責任分野のため設置しなくても(2009年1月現在)罰則規定がない。中規模・大規模集合住宅などで、すでに感知器が設置されている場合は、住宅用の火災警報器を設ける必要はない。
住宅用火災警報器には、熱感知器と煙感知器の二種類があり、それぞれに適合した取り付け場所が定められている。
熱感知器では、感知器本体が炎や等であぶられて温度が上昇した場合に動作するという特性を持っている。この特性から、階段や高天井の部屋などに設置しても、なかなか本体温度が上昇せず、検出不良の原因となる。
寝室などにも熱感知器は適しておらず、炎の温度を感知器本体が検出する頃には、既に火災が広がっていることかが考えられ、手遅れとなるおそれが高い。寝室などでは煙を検出する方式の火災警報機を設け、早期検出を行うのが良い。
台所の場合、煙を検出する機構は適していない。煙を検出する火災警報器では、調理によって発生する煙を火災として検出するおそれがあり、かつ湯気によって検出機構に結露が発生し、誤動作するおそれがある。
住宅用火災警報器の基本的な性能や特徴は、自動火災報知設備としての感知器と大きく変わらず、熱や煙を検出して警報を発信するという防災設備のひとつである。しかし、火災警報器を取り付けるための資格は必要なく、消防設備士のは求められない。家電製品のひとつとしてホームセンターで購入し、建物所有者自らが取り付けるといったことも可能である。
自動火災報知設備の設置工事は、消防法に定められた「甲種四類消防設備士」の資格者でなければ禁じられている。電池式の住宅用火災警報器であればも取付に対して資格を必要としない。ドライバーやビスを使用して簡易に取り付けられるので、壁内にある既存電気配線を傷付けないように注意すれば良い。
配線式の住宅用火災警報器の場合、取り付けには「第二種電気工事士」の資格が必要である。警報機への電源は、照明回路やコンセント回路などから分岐させるべきではなく、単独回路とするのが望ましい。
分電盤に呼び回路があれば良いが、予備回路が無い場合はブレーカーを増設するといった工事も伴う。通常、住宅用であれば電池式の警報機を設けるのが良い。
電気工事士資格を持たない者が配線工事をするのは法律違反であり、罰則規定もあるため絶対に行ってはならない。日常生活において、行政から立入検査を受けることは考えられないが、火災や事故を起こした際には、何を原因として火災が発生したかを調査されるため、無資格の工事で取り付けた設備が火災の原因であれば、その責任を問われることとなる。
消防法に準拠した自動火災報知設備の感知器と同様に、住宅用火災警報器にも設置基準があり、適切な取付方法でなければ正常な検出ができない。
煙を検出する方式であれば、壁から600mm以上離隔し、感知器全体に煙が行き渡るように配置しなければならない。壁面に近くなり過ぎると、煙が感知器全体に行き渡らず、検出が送れるおそれがある。
警報機は、空調や換気の吹出口から1500mm以上離隔した位置に取り付ける。空調の吹き出し口などが付近にあると、煙を風で押し出してしまい有効に検出できないばかりか、警報機本体が過剰に冷やされて温度上昇を阻害したり、本体が結露して誤動作する原因となる。
換気などの給気口が付近にあれば、その付近への設置が推奨される。給気口は室温に近い空気を引き込むため、誤検出のおそれが軽減され、かつ煙や熱を有効に検出できる。
壁面に警報機を設置する場合、天井面から150mm以上500mm以内の距離に配置する。天井に近すぎると感知器全体に煙や熱が回らず、有効な検出を阻害してしまう。
天井から離し過ぎると、熱や煙が感知器に当たらなくなり、検出が遅れる原因となる。
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