発信機・地区音響 | P型とT型の違い・地区音響の音圧(音量)と鳴動区分

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発信機

発信機は、自動火災報知設備を構成する部材のひとつで、人が火災を発見した際に、ボタンを押すことで火災信号を受信機に伝送する装置である。発信機を押下すると、発信機から火災受信機に対して信号が送られ、受信機側はこの信号を「火災が発生した」と判断する。この信号を受け、「非常ベル」や「非常放送設備」が鳴動し、建物使用者に火災の発生を知らせ、避難誘導が行われる。

非常放送設備が設けられている防火対象物の場合であれば、発信機のボタンを押すことで「女性声による確認放送」または「男性声による避難放送」が即時鳴動する。感知器による火災検出も同様の機能であるが、感知器は誤動作も非常に多く、すぐに火災断定に切り替えるのは運用上好ましくない。

一般的な感知器による火災検出は、複数の感知器が発報した場合や、単体の感知器による検出であっても、そのまま検出状態を数分維持し、一定時間が経過した場合に、火災断定に移行するのを原則としている。また、蓄積機能と呼ばれる「一定時間、煙や熱に晒され続けなければ信号を送信しない」という機能も搭載している。

これに対し、「人が発信機を押す」という行為は、いたずらを除いて「目の前に火災が発生している」という状態であるから、確認放送などを省略して火災断定に切り替えるのが基本となる。

壁面に埋め込まれた発信機一体の消火栓ボックスの写真

発信機の設置計画

発信機は、火災発見時にできるだけ早く押さなければならないため、多数の人の目に触れやすく、操作が容易に行える場所に設置しなければならない。

発信機は赤く塗装された比較的大型の押しボタンであり、意匠上見栄えのする設備ではない。意匠設計者や建物所有者は、発信機を目立つ場所に設置したくないと要求することがあるが、防災上重要な設備であり、設計者は「意匠上」「防災上」の両面から、建物所有者、所轄消防のどちらも納得できる場所を検討し、提案するのが重要である。

P型発信機を設置する場合は各階、どの場所からも「50m以内」で発信機の場所にたどり着けるように配置する。誰でも容易にボタンを押せるよう、床面から0.8m以上、1.5m以下となるように設置することが義務付けられているため、高さにも注意を払う。

発信機は単独に設置するほか、消火栓ボックスに組み込んだり、表示灯・地区音響を一体に組み込んだ「総合盤」として設置することも可能である。

消火ポンプ起動スイッチとしての利用

発信機は、消火ポンプの起動装置としても使用可能である。発信機を消火ポンプ起動スイッチとして使用する場合、消火栓ボックスの上部に表示灯とともに設置するのが一般的である。

消火栓ポンプが起動したことを示すため、表示灯をフリッカー(点滅)させることを消防機関から求められるため、必要に応じてリレーを組み込んで対応する。

P型発信機とT型発信機

発信機は、操作方法により「P型」と「T型」に分類されており、建物規模により使い分けて計画する。

P型発信機

P型発信機は、プッシュ型発信機であり、押しボタンを押下することで信号を発信する。数多くの建物で利用されている発信機であり、「発信機」と言えば基本的にP型を示す。

発信器には表示灯を併設し、離れた場所から発信機の位置が確認できるよう考慮しなければならない。

発信機本体にはインターホン用の接続ジャックが付属しており、携帯式の電話装置を使用すれば受信機との通話できるため、メンテナンスや保守点検で活用されている。

押しボタン式の発信機

T型発信機

T型発信機は、テレホン式発信機であり、押しボタンではなく受話器操作によって信号を発信する。発信機本体は電話用の受話器と同様の形状となっており、これは「非常電話」と呼ばれている。受話器を取り上げることで、P型発信機のボタンを押したのと同様の操作となり、火災受信機に信号を伝送する。

接触や衝撃によって受話器が外れ、信号が送信されることを防ぐため、受話器を外してボタンを押すというツーアクション方式を基本とする。行政により「受話器を取り外した瞬間に火災信号を伝送すること」を義務付けていることも多く、消防機関に対する協議を要する。

地区音響装置

地区音響装置は、地区ベル・非常ベルという名称でも呼ばれる大音量音響装置である。感知器や発信機が作動し、火災受信機に信号が報知されると、受信機から「地区音響を鳴動させる」という信号が送られベルが鳴動を始める。この大音響によって、感知器や発信機が動作したことを建物利用者に知らせ、避難が開始される。

地区音響装置は、防火対象物の全域に渡り、火災を有効に報知できるように配置する。非常ベルの場合、各階水平距離で「25mの円で包含」するように配置することが消防法によって定められている。

大規模な建物では、感知器や発信機の信号を受けたとしても、一斉に全館に対して地区音響を鳴動させることはパニックを誘発し、かつ避難口に多数の在館者が殺到して二次災害となるおそれがある。

地階を除く階数が5以上で、延べ面積3,000㎡を超える場合、出火階とその直上階のみを鳴動させ、一定時間後または複数の感知器が発報した場合に全館鳴動させるという規定があるので注意を要する。

出火階と直上階の鳴動例

出火階が2階以上の階の場合、出火階と直上階となる「2階」と「3階」の地区音響装置を最初に鳴動させる。出火階と直上階の鳴動ののち、数分間はそのままの状態を維持し、数分経過後に全館鳴動に切り替える。

もし出火階が1階の場合、出火階と直上階だけでなく、地階も含めて鳴動させなければならない。地下からの避難は1階しか存在しないため、直上だけでなく地下を利用している人を優先的に避難させるよう規定されている。

もし出火階が地階であった場合は、出火階である地階と、その直上階、さらにその地階を全て鳴動させ、避難を促さなければならない。

地区音響装置の音圧規定

地区音響装置は大音量で火災を報知する設備であるが、周辺の雑音や暗騒音によって、重要な刑法が聞こえないといった事態にならないよう、消防法で定められた音圧規定がある。

地区音響装置から発せられる音圧は、その音源の中心から1m離れた位置で、90dB以上確保されるものと定められている。

非常放送設備など、音声によって地区音響装置とする場合には、92dB以上の音圧が確保できるようにスピーカーを配置しなければならない。

92dBの音圧を確保するため、非常用スピーカーは「10mの円で包含」するという仕様規定がある。通常、10mの円を建物内のすべての場所が包含できるよう配置すれば、法的に支障ない配置となる。

非常放送用のスピーカー本体には「L級」「M級」「S級」という3種類のスピーカーが規定されている。L級のスピーカーを選定すれば100㎡を超える大規模空間においても、所定の音圧が確保できるが、M級やS級は、L級よりも音圧が小さい。小型スピーカーで1Wの結線を行うと、L級が確保できないおそれがあるため、注意を要する。

 
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