電気設備の知識と技術 > 自動火災報知・防災設備 > 非常コンセントの設置基準・容量
非常コンセントは、防火対象物に火災が発生した際、消火活動を行う消防隊が有効に活動できるように、専用として使うコンセントである。消防法によって、その仕様が定められている。
消火活動が困難となる「超高層建築物」や「大規模な地下街」では、消火活動のための電源を建築物側から確保できるよう、非常コンセントを設けなければならない。
用いられる電気機器としては、防火対象物の階段室や非常用エレベータの附室など、消火活動の拠点となる場所に、単相交流100V15Aの非常コンセントを設置するのが基本となる。消火や救出のために使用するドリル、照明器具、排煙装置など、消火活動に使用する可搬式の電気機器に、電源供給を行うための重要なコンセントである。
非常コンセントは、地階を除く階数が11階以上、または地下街の延床面積1,000㎡以上の場合に設置義務が発生する。防火対象物の種類に関係なく、基準値を超過した場合には設置を要する。
地上11階以上の階、地下街などに計画することが義務付けられ、設置場所は避難階に直接通じている階段室内・非常用エレベータの附室など、消防隊の活動拠点となる場所に設置する必要がある。非常コンセントは、水平距離50mの円で建物全体が包含できるように計画しなければならない。
非常コンセントの設置高さは、床面や階段面から1m~1.5mに設置する。埋込式の保護箱(非常コンセント盤)内に設け、保護箱表面には「非常コンセント」という表記を行い、赤色の灯火を付設して非常コンセントであることを明確にする。
非常コンセント盤は、W400×H500×D140程度の小型の盤で構成される。コンセント近傍には脱落防止フックを設けられており、消火・救出活動に伴う張力に対して容易に抜けないように考慮されている。
コンセント本体は接地形2極コンセントとし、125V15A定格の製品であることが定められている。専用の非常コンセント用の幹線から、各階で非常コンセント盤分岐する場合は、非常コンセント盤内に分岐用の配線用遮断器を設ける。
階毎に非常コンセントが1個であれば、1回路とできるが、それ以外の場合は各階において2回路以上を敷設する計画とする。1回路に設けられるコンセントの数は10個までと決められているため、20階を超える大規模な防火対象物では、非常コンセント用として複数回路が必要である。
非常コンセントからの供給電源は、単相交流100Vで1.5kW程度を使用できる容量とする。火災時や停電時でも利用可能なように、非常コンセントに供給する電源は、非常用発電機などを主体とした非常電源としなければならない。
非常電源としては、「非常電源専用受電設備」から供給や、非常用発電機、蓄電池設備などいくつかの選択肢がある。非常電源は、30分以上有効に電力供給ができる性能が求められるため、屋内消火栓やスプリンクラーのために非常用発電機が設けられていれば、そのままの性能で特段の問題はない。
非常コンセント盤にはD種接地工事を施すこと、非常コンセントの電源は漏電遮断器で保護しないこと、電圧降下は2%以内(構内の変圧器から供給している場合は3%以内)にすることなど、消防法によって詳細に定められている。
これら消防法による規制事項は、各自治体が定めている「火災予防条例」によってさらに補足され、より厳しい制限を求められたり、特殊な仕様としなければならない可能性がある。非常コンセントを計画する場合、設置する市町村・自治体の定めた火災予防条例を確認し、消防法以外の規制が存在しないかの確認しなければならない。
非常コンセント盤は、単独で設置することが可能だが、消火栓や補助散水栓・送水口ボックスと一体化することも認められている。消火栓や補助散水栓・送水口の表示灯と、非常コンセント用の表示灯の兼用も可能なため、複数の表示灯を設ける必要はない。
非常コンセントを消火栓などに組込む場合、非常コンセントを消火栓ボックスの上部に配置し、箱内は互いが不燃材料で区画されていなければならない。かつ、非常コンセント盤の扉と、消火栓ボックスの扉は別とし、それぞれ別々に開けられるよう計画しなければならない。
非常コンセントと消火栓ボックスを兼用する場合、表示灯は1つで良いが、非常コンセントに電源が送られているかを確認するために通電ランプを設けなければならない。この場合、表示灯は自動火災報知設備の表示灯回路となるが、通電ランプは非常コンセント回路の100V電源となることに注意が必要である。
表示灯が点灯しているからといって、100V電源が送電されているとは限らないため、非常コンセントボックスを選定する場合、通電ランプが設けられている製品とすべきである。
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