電気設備の知識と技術 > 自動火災報知・防災設備 > 非常電話の設置基準
非常電話は、自動火災報知設備における発信機と同様の機能を持つ専用電話兼発信器で、非常警報設備に放送設備を採用した場合に使用可能な防災設備のひとつである。
防災センターや管理室に非常電話の親機を設置し、親機に接続される「子機」「表示灯」「電源」「配線」によって構成される。子機はインターホンと同様の形状をしており、受話器を取り上げることで発信機が押下されたのと同じ状態となり、館内に火災放送が鳴動する。
大規模建築物や超高層建築物では、火災等を発見した場合の通報をP型発信機のみで行うのは防災上不十分であり、火災の位置、状況などを明確に伝える事ができる非常電話を、各所に設置することが求められる。
非常電話は非常警報設備となる放送設備の起動装置となっているため、受話器を取り上げると火災警報が鳴動するので、インターホンなどと勘違いして操作したり、いたずらによって受話器を操作されると、館内に非火災報を鳴動させてしまう。非常電話の計画時には、誤報を防止する方策についても検討を要する。
非常電話には高速道路やトンネル内において、非常事態を通報する設備として設けられていることがあるが、ここでは「消防法に規定された非常電話」を解説する。
非常電話は、受話器を取り上げることで自動的に親機へ発信を行い、10秒以内に必要な階に警報音を放送できる機能を持っている。子機からの通報があった場合、親機側の電話機を取り上げることで、子機側の発信者と同時通話ができる。
2以上の子機から発信があった場合は、任意に通話を選択できる機能を持っているため、同時に通報があった場合でも対応できる。遮断された回線側は、話中音が流れることが消防法で定められている。
非常電話は、非常放送設備が設置されている防火対象物において「地階5,000㎡以上で消防長が必要と認めるもの」「地階を除く階数が11以上かつ10,000㎡以上の特定防火対象物」「地階を除く階数が5階以上かつ20,000㎡以上の特定防火対象物」といった大規模な建築物に設置義務が発生する。
「地階を除く階数が15階以上かつ30,000㎡以上」というような大規模な建築物にあっては、特定防火対象物ではない建築物であっても、設置を求められる場合があるので、所轄の消防機関との打ち合わせが必要である。
この基準に達しない規模の防火対象物であれば、自動火災報知設備における「発信機」による連動で、放送設備を起動させることが可能である。
非常電話は、停電状態でも有効に通報を行うため非常電源から電源供給し、同時に2回線の非常電話を起動しても、30分間作動を継続できるようバックアップされていなければならない。非常電話は所轄消防により独自の指導を受ける場合も考えられるため、設置する場所、機能については綿密に相談することが望まれる。
非常電話設備を接地する場合、親機となる非常電話盤を新たに配置する必要が有るため、面積が十分ではない防災センターや管理室では、設備スペースが圧迫されるおそれがあるので、配置計画には十分な協議が必要である。
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