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電気設備の知識と技術 > 自動火災報知・防災設備 > カットリレーの仕組みと設置基準

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カットリレーとは

カットリレーは、非常放送設備に含まれる防災設備のひとつで、火災信号の受信により、業務放送設備への電源供給を遮断するための設備である。カットリレーは、電源カットリレー、カットリレーコンセント、電源制御器という名称で呼ばれることもある。

非常放送設備は、感知器の動作や消火栓・スプリンクラーポンプの運転の火災信号を受信すると、非常ベルや非常放送を流す。しかし、業務放送やBGMが大音量で流れていては、これら非常時を知らせる音響がかき消されてしまい、避難が遅れ、人的被害につながるおそれがある。

カラオケボックスやライブハウスなど、大音量で音楽が流れている環境では、非常放送やベルの緊急放送が流れても、音響装置から流れる音が大きいため、非常放送が聞こえず、避難放送が建物使用者に伝わらない可能性があり危険である。

事故を防止するため、非常放送の音響を阻害する業務放送設備類の電源は、カットリレー信号を受信して遮断できるコンセントに接続し、火災信号を受信した際には諸放送設備の電源供給を遮断するように、システムを構築する。

放送用アンプの背面写真

カットリレーの設置基準

カットリレーコンセントに業務放送設備を接続することで、大音量で音楽などを流している時に火災放送が流れたとしても、自動的に業務放送を遮断し、火災放送だけを聞き取ることが可能である。

カットリレーコンセントは一般的な15Aコンセントよりも電源容量が小さく、8A~10A程度の製品がほとんどである。使用できるワット数がカットリレー本体に表記されており、それ以上の電源容量をもつ放送設備を接続できない。

電源容量を超える放送設備を接続すると、接点の融着、異常発熱などが発生し、カットリレーから発火したり、緊急時に正常動作しないといった問題が発生するおそれがあるため、過負荷にならないよう接続しなければならない。

カットリレーの法的規制

カットリレーによる音響停止は、警報音が聞こえないという問題を解決するための一手法であり「カットリレーを設置しなければならない」という規制はない。

消防法施行規則の第二十四条~二十五条には「当該場所において他の警報音又は騒音と明らかに区別して聞き取られるように措置されていること。」と規制されているため、これを満足する方法を所轄消防と協議する。カットリレーを用いる方法は最も安全性が高くわかりやすい手法のため、頻繁に採用される。

カットリレーの設置を定める基準は、消防法施行規則(第24条第5号、第5号の2、第25条の2第2項第1号イ)の改正の通達である(平成15年消防予第170号)の中に、大音響施設(ライブハウスやカラオケ店等)を有する特定一階段等防火対象物については「自動火災報知設備、非常警報設備の地区音響装置等の作動と連動して、地区音響装置等の音以外の音が自動的に停止すること。」と定められている。これがカットリレーの法的な定義である。

非常放送設備は、自動火災報知設備の地区音響装置と同等の機能をもつ設備であり、火災時にはその機能を果たす必要があり、機能しなければ、事故を引き起こす原因となる。

カットリレーのシステム・仕組み

カットリレーコンセントと電源容量

建物利用者が非常放送設備とは別に放送設備を設置する場合、カットリレーコンセントなど、非常時に電源がカットされる系統から電源供給をしなければならない。カットリレーコンセントは、自動火災報知設備からの火災信号を受信すると、電源の供給を停止する動作を行うコンセントである。

カットリレーコンセントは、一般の電源供給用15Aコンセントと違い、許容電流値が低く設定されているため、機器の接続数や容量に注意を要する。多くは、500W~800W程度の電力を必要とするローカルアンプまでが接続可能である。

カットリレーの動作の仕組み

カットリレーは、自動火災報知設備から移報された火災信号により、DC24Vの無電圧A接点(メイク接点)が作動し、コンセントのAC100Vを遮断し、ローカルアンプの電源供給を停止させる制御を行う。

非常放送設備側から制御部に24Vが常時供給されており、接点はメイク状態になる。しかし、火災信号が供給されると電圧が0Vになり、メイク接点の電圧がなくなったことにより接点が開き、電源供給が断たれるという仕組みとなっている。

非常放送設備とカットリレーの関係

不特定多数が利用する建築物の場合、突然大音量でベル報が鳴動すると、パニックを引き起こす可能性がある。大規模で不特定多数が収容される商業施設や病院では、感知器の動作時に「感知器が動作したので確認している」という放送を鳴動させ、本当に火災であることが確認できた場合に「火事が発生したので避難すること」の放送が流れる。

小規模な建築物の場合でも、不特定多数が出入りする場合は、非常警報器具を設置しなければならない。収容人員が少なければ、非常ベルやサイレンを使用した非常警報設備で対応できるが、不特定多数が集まる大規模商業施設、宿泊施設では、非常ベルやサイレンを鳴動させる警報ではパニックを誘発し、避難中の二次災害の原因となる。

大規模施設の場合、自動火災報知設備と連動する非常放送設備が必要である。自動火災報知設備として、感知器が火災を検知した場合は「一定時間経過した場合」「二個以上の感知器が発報した場合」「火災を視認し発信機を押した場合」「スプリンクラーや消火栓のポンプが作動した場合」など、火災であることが明確になった瞬間に火災確定の放送が鳴動する、という方法が採用されている。

しかし、火災を確認している際に流れる感知器確認放送や、火災確定した際の火災断定放送が、業務放送や案内放送、BGMの音響のために聞こえないようなことがあれば、防災設備としての意味を成さない。

非常放送設備が設置されるような大規模施設では、非常放送が鳴動した場合に、非常放送設備以外の音響を強制的に停止させ、非常放送だけが明確に聴こえるような環境を作らなければならないと、消防法によって規定されている。

 
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