防火対象物の用途区分と収容人員 | 特定防火対象物の種類と規制

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防火対象物とは

防火対象物は消防法により「防火対象物とは、山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物若しくはこれらに属する物をいう。」と定められている。

消防法の目的は「火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害に因る被害を軽減する」という条文に示されているように、火災を予防すること、発生した火災を鎮圧することを目的としている。

建物使われ方や、建物を使用する人の性質に建物を十数項目に分類化し、建物の用途毎に設置すべき消防設備の規模を定めている。映画館や百貨店、病院の防火対象物は、倉庫やその他の事業所(事務所ビルなど)と比べて、消防設備の規模が大きくなる。

高所からの消火活動をしている写真

特定防火対象物とは

災害発生時に大きな被害が発生するおそれがある建物を「特定防火対象物」と呼ぶ。百貨店やホテルなど不特定多数の人が使用する建築物や、病院や福祉施設など避難に際してハンデを背負った人が多数使用する建築物は、一般の防火対象物よりも安全性を高める必要があるため、消防設備のグレードを高く計画しなければならない。

保育園や幼稚園、養護学校なども、避難にハンデがある人が使用する建築物に該当するため、特定防火対象物となる。計画している建築物が特定用途防火対象物に該当した場合、消防用設備等の設置基準が厳しくなり、かつ防火管理者によって管理する建築物の要件も厳しく設定される。

複合用途防火対象物

防火対象物のうち、2以上の異なる用途が存在するものは、複合用途防火対象物の「16項」に区分される。単一の用途となる防火対象物と違い、特定防火対象物を含む場合は「16項イ」、含まない場合は「16項ロ」となる。

単体の防火対象物と判定されるか、複合用途防火対象物として判定されるかの判断は、主に下記の内容となる。

防火対象物の主従関係

防火対象物のそれぞれの用途が、主従関係にある場合には、単一防火対象物として判定される。

15項に該当する事務所を例として紹介する。執務空間を主たる用途とし、従属する用途としては「売店」「食堂」「駐車場」などが考えられる。事務所のために使用する用途であり、他に開放していない売店や食堂、駐車場であれば、従属する用途として扱われるため、複合ではなく単一用途の防火対象物となる。

防火対象物の管理権限が同一であること、利用者が同一であること、利用時間が同一であることの3点を全て満足し、所轄行政の協議により、単一用途の防火対象物とみなして良いか判定を受ける。

独立した用途が防火対象物内に混在

独立した用途部分が混在している場合、複合用途防火対象物として判定されるが、主用途部分の床面積に対し、別の用途となる部分が10%未満かつ300㎡を越えない場合は、主用途について単一用途の防火対象物と判定できる。

廊下や階段、管理室、倉庫など、どちらの用途でも使用する共用部分の面積については、それぞれの床面積を按分して算出するのが原則となる。

防火対象物の用途毎の分類

防火対象物には、特に危険性が高い用途を「特定防火対象物」として区分している。特定防火対象物とは、不特定多数の人が出入りする用途の建築物で、火災時に大きな被害が発生する可能性が高い防火対象物である。

1項イ(特定防火対象物)

劇場、映画館、演芸場、観覧場の用途は、1項イに該当する。

収容人員は、従業員数、客席部の固定椅子の数、立見席面積0.2㎡毎に1人、その他部分0.5㎡毎に1人を合算した数値とする。

客席部分の収容人員は、入口や便所、廊下を含まずに計算して良い。

1項ロ(特定防火対象物)

公会堂、集会場は、1項ロに該当する。収容人員の計算方法は1項イと同じである。

2項イ(特定防火対象物)

キャバレー、カフェ、ナイトクラブは、2項イに該当する。

収容人員は、従業員数、客席部の固定椅子の数、その他部分3㎡毎に1人を合算した数値とする。

椅子の数 = 人数として計算をするが、椅子が長椅子で複数人座れる場合、幅0.5m毎に1人として計算する。

2項ロ(特定防火対象物)

遊技場、ダンスホールは、2項ロに該当する。ビリヤード場、ゲームセンターなども遊技場のひとつである。

遊技場の場合、従業員の数、機械器具を使用して遊技を行える者の数、観覧・飲食・休憩用固定椅子の数を合算した数値とする。2項イと同様に、固定椅子が長椅子の場合、0.5m毎に1人で計算する。

3項イ(特定防火対象物)

待合・料理店などが該当する。収容人員は、従業員数、客席部の固定椅子の数、その他部分3㎡毎に1人を合算した数値とする。

固定椅子が長椅子の場合、幅0.5m毎に1人として計算する。

3項ロ(特定防火対象物)

飲食店などが該当する。収容人員は、従業員数、客席部の固定椅子の数、その他部分3㎡毎に1人を合算した数値とする。

固定椅子が長椅子の場合、幅0.5m毎に1人として計算する。

4項(特定防火対象物)

百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗、展示場が該当する。収容人員は、従業員数、従業員以外が使用する部分の飲食・休憩用部分は3㎡毎に1人、その他部分4㎡毎に1人を合算した数値とする。

5項イ(特定防火対象物)

旅館、ホテル、宿泊所などが該当する。収容人員は、従業員数、宿泊室のうち、洋式ではベッド数、和式では6㎡毎に1人、簡易宿泊所の場合は3㎡毎に1人、集会・飲食・休憩用部分の固定椅子の数、その他の部分は3㎡毎に1人を合算した数値とする。

固定椅子が長椅子の場合は、0.5m毎に1人とする。ダブルベッドが設置されている場合、収容人員は2人として計算する。

5項ロ

寄宿舎、下宿、共同住宅が該当する。収容人員は居住者の数として良く、来客者などは合算しない。

6項イ(特定防火対象物)

病院・診療所・助産所が該当する。収容人員は、医師・看護師・その他従業員の数、病室内の病床数、待合室3㎡毎に1人を合算する。

6項ロ(特定防火対象物)

老人福祉施設、有料老人ホーム、介護老人保健施設、救護施設、更正施設、児童福祉施設、身体障害者福祉センター、障害者支援施設など、福祉関係施設が該当する。収容人員は、従業員の数、老人・乳児・幼児・障害者数を合算する。

6項ハ(特定防火対象物)

幼稚園、盲学校、聾学校、養護学校が該当する。収容人員は、教職員の数、幼児・児童・生徒の数を合算する。

7項

小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、高等専門学校、大学、専修学校などが該当する。収容人員は、教職員の数、児童・生徒・学生数を合算する。

8項

図書館、博物館、美術館が該当する。収容人員は、従業員の数、閲覧・展示・展覧・会議・休憩各室の床面積の合計3㎡毎に1人を合算する。

9項イ(特定防火対象物)

公衆浴場のうち、蒸気浴場・熱気浴場などが該当する。収容人員は、従業員数、浴場・脱衣場・マッサージ室・休憩用部分の面積の合計3㎡毎に1人を合算する。

9項ロ

公衆浴場のうち、9項イに該当しないものである。収容人員は9項イと同様、従業員数、浴場・脱衣場・マッサージ室・休憩用部分の面積の合計3㎡毎に1人を合算する。

10項

車両停車場、船舶・航空機の発着場で、旅客の乗降や待合に使用する建物が該当する。収容人員は従業員数となる。

11項

神社・寺院・教会などが該当する。収容人員は、神職・僧侶・牧師その他従業員数、礼拝・集会・休憩用の部分の面積3㎡毎に1人を合算する。新興宗教も11項に該当する。

12項イ

工場や作業場が該当する。収容人員は従業員数となる。

12項ロ

映画スタジオ、テレビスタジオが該当する。収容人員は従業員数となる。

13項イ

自動車車庫・駐車場が該当する。収容人員は従業員数となる。

13項ロ

飛行機又は回転翼航空機の格納庫が該当する。収容人員は従業員数となる。

14項

倉庫が該当する。収容人員は従業員数となる。

15項

前各項に該当しない事業場が該当する。事務所ビルなどは15項である。収容人員は従業員数、従業員以外が使用する部分の面積3㎡毎に1人を合算する。官公署や銀行なども15項に含まれる。

16項イ(特定防火対象物)

複合用途防火対象物のうち、特定用途を含むものが該当する。収容人員は用途毎に分割して収容人員を計算し、合算する。

16項ロ

複合用途防火対象物のうち、特定用途を含まないものが該当する。収容人員は用途毎に分割して収容人員を計算し、合算する。

 
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