高圧電磁接触器・電磁開閉器 | VCSとVMCの原理・構造と選定方法

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高圧電磁接触器(VCS)とは

高圧電磁接触器は、主接触子を電磁石の力で開閉する装置であり、頻繁な開閉を行う高圧機器の開閉器として使用される。電磁接触器は「VCS」と表記する。

負荷開閉の耐久性が非常に高く、繰り返し開閉に耐える堅牢性を持っている。6kA程度の比較的低い事故電流の遮断も可能であり、保護装置のひとつとして計画も可能である。ただし10kAを超えるような大きな短絡電流は遮断できないため、建築設備用としては、進相コンデンサなど限られた負荷に対する多頻度開閉に適している。

高圧電磁接触器は進相コンデンサの投入と遮断に使用するのが一般的であり、自動力率調整装置「APFC」の信号を受けて自動制御を行う。深夜や業務終了後など、軽負荷時は負荷が小さく、力率の悪化が少ない。進相コンデンサを多数投入していると、力率の進み過ぎによる電圧異常のおそれがあり、一部のコンデンサ開放が求められる。

対して、多数の負荷を接続している重負荷時は、進相コンデンサを多数投入して無効電力の補償を行い、力率改善を行う。これらコンデンサの開閉は多頻度であり、高圧電磁接触器を用いるのが通例となっている。

負荷電流の開閉寿命は、高圧遮断器が5,000回程度で故障域に到達するのに対し、真空電磁接触器では100,000回~250,000回の開閉に耐えられる堅牢性が利点である。進相コンデンサを開閉する場合、過渡電流の発生により一般負荷よりも大きな電流が流れるため、開閉に耐えられるか十分検討しなければならない。

オープン変電所に設置された高圧電磁接触器の写真

電力ヒューズ内蔵コンビネーションユニット(VMC)

高圧電磁接触器は、負荷開閉のみを行う装置なので、短絡の事故電流遮断ができない。電磁接触器の一次側にLBSを設ける方法もあるが、開閉器が多重化し、経済性は不利となる。

VCSに電力ヒューズを内蔵した「コンビネーションユニット(VMC)」を採用すれば、開閉装置、保護用ヒューズをひとつのユニットにまとめられるため、キュービクルを小型化できる。

コンビネーションユニットの取付は、高圧遮断器と同様の固定方法となる「固定形」のほか、高圧電路から本体ごと切り離せる「引出形」がある。引出型のVMCであれば、本体を高圧系統から容易に切り離せるため、VMCの一次側に断路器を設ける必要がない。

限流ヒューズの溶断による欠相保護

進相コンデンサ保護用に限流ヒューズを設けた場合、ヒューズ動作による欠相を保護しなければならない。ヒューズ溶断時に信号を送信できるように接点を設け、警報を送信した上で、接触器を開放して欠相保護を行うのを基本とする。

進相コンデンサの開閉性能と注意点

進相コンデンサの設計を行う場合、一般的には直列リアクトルが設置されているため問題にならないが、直列リアクトルが設置されていない電路を高圧電磁接触器で開閉すると、過大な突入電流が流れ、電磁接触器の寿命が著しく低下する。

電磁接触器は多頻度開閉に適しているが、一定の時間をあけて開閉操作を行わなければ、残留電圧が重畳して異常電圧の発生につながる。放電コイルは開放~再投入まで5秒以上、放電抵抗は開放~再投入まで5分以上経過後に操作するのが望まれる。

コンデンサに直列リアクトルを併設し、そのリアクトル容量が13%であった場合、電路開放時の回復電圧が過大になり、標準定格の電磁接触器では正常開閉できないおそれがある。メーカーカタログや技術資料により、選定製品によって正常に開閉動作ができるか、十分な確認が必要である。

定格遮断電流と短時間耐電流

高圧電磁接触器の標準的な定格遮断電流は4~6.3kAが多く、高圧遮断器のように8kAや12.5kAといった大きな短絡電流は遮断できない。短絡電流が大きく流れる部分では、限流ヒューズと組み合わたコンビネーションユニットを用いて電路の保護を行うと良い。

過負荷電流は電磁接触器で遮断し、短絡電流は限流ヒューズで遮断するという組み合わせ保護が行われる。

高圧電磁接触器の短時間耐電流は、事故時に流れる短絡電流よりも高い性能の機種を選定する。電磁接触器が設けられた系統で短絡事故が発生した場合、上位遮断器が事故遮断を行う0.5秒程度は、電磁接触器にも短絡電流が流れる。

限流ヒューズで系統保護を行う場合も同様、ヒューズが溶断するまでの間、大電流に耐えられる性能の電磁接触器を選定しなければならない。

常時励磁式と瞬時励磁式の違い

高圧電磁接触器の操作方式には、常時励磁式と瞬時励磁式の2種類がある。

常時励磁式

常時励磁式は、投入コイルが励磁されている間だけ、投入状態を維持する電磁接触器である。投入コイルの励磁が解けると、開放状態になる。多頻度開閉を行う系統に適している。

瞬時励磁式

瞬時励磁式は、投入コイルを励磁し投入した後は、機械的に投入を保持し、励磁が解かれても閉回路を維持する方式である。

電路を開放するためには、引外しコイルを励磁することで保持機構を開放するため、多頻度開閉には適していない。変圧器一次側など、開閉頻度が比較的少ない系統で採用されることが多い。

系統に停電が発生し、復電後すぐに送電をしたい場合の遠隔スイッチとして採用される。

 
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