雨線
雨線の定義と建築的境界
雨線(うせん)とは、建築物の軒、庇(ひさし)、バルコニーなどの先端から、鉛直面に対して45度の角度で引いた仮想の直線を指す建築・設備用語である。
この線を境界として、建物の内側(壁側)を「雨線内」、外側を「雨線外」と区分する。電気設備の設計において、雨線内は「通常の降雨であれば雨がかからない場所」、雨線外は「雨が直接かかる場所」と定義されるが、これはあくまで無風または微風時の自由落下雨を想定した静的な指標に過ぎないことに留意が必要である。
雨線内外における機器選定基準
電気設備技術基準および内線規程では、設置場所の環境に応じた適切な防水性能を持つ機器の使用を義務付けている。雨線内外での選定基準は以下の通り厳格に区別される。
- 雨線外(直接雨がかかる場所):
原則として「防雨形(JIS保護等級 IPX3以上)」または「防沫形(IPX4以上)」の機器を選定することで雨水侵入を防止する。散水や激しい風雨にさらされる可能性がある場合は、より高度な「耐水形(IPX5)」や「耐塵・耐水形(IP65)」が要求される。 - 雨線内(直接雨がかからない場所):
「防滴形(IPX1~IPX2)」以上の性能が最低限求められる。重要なのは、雨線内であっても「屋外」であることに変わりはないため、非防水の「屋内用器具」を使用してはならないという点である。湿気や塵埃の影響を受けるため、屋内用コンセントやスイッチを設置すると、トラッキング現象や内部腐食による接触不良を招くおそれがある。
施工上の重要管理ポイント:貫通部と配管
雨線が設計実務で重要なのは、ケーブルや配管が建物を貫通する「外壁貫通部」の計画においてである。
外壁貫通部は、可能な限り「雨線内」に設ける。雨線外に貫通部を設けると、止水処理(コーキング)の経年劣化により、雨水が壁体内に侵入するリスクが高まる。雨線内であれば、直接的な水圧がかかる頻度が低いため、漏水リスクを大幅に低減できる。
雨線内であっても、暴風雨時には壁面を伝って水が流れる可能性がある。そのため、貫通部には以下の施工が必須となる。
- 先下がりの勾配:配管やスリーブは、屋外側に向かって下り勾配を設け、浸入した水が屋内へ逆流しないようにする。
- ドリップループ(トラップ):ケーブルを機器に接続する直前で一度U字型にたるませることで、伝ってきた雨水をそこで滴下させ、端子部への浸入を防ぐ。
リスク管理:湿気・結露と塩害
台風や強風時には、雨線内であっても横殴りの雨(吹き込み)が到達する。また、雨が直接かからなくても、屋外特有の激しい温度変化により、機器内部で結露が発生する。
結露水が充電部に付着すれば、絶縁劣化や短絡事故を引き起こす。したがって、雨線内であっても、パッキン付きの防湿型器具を選定し、金属部品(ビスやボルト)にはステンレス(SUS304等)を使用する防食対策が望ましい。特に海岸に近い地域では、雨線内であっても塩分を含んだ潮風が滞留するため、重耐塩仕様の機器選定が必要となる。
雨線の内外で配線敷設が可能な施工方法が違う点についても注意が必要である。詳細は電線管の種類と規格を参照。












