ウォールウォッシャー
鉛直面照度による空間の明るさ感
ウォールウォッシャーは、壁面全体を均一に照射し、垂直方向の明るさ(鉛直面照度)を高める照明手法である。人間の視覚は、床面の明るさよりも、視野に入りやすい壁面の明るさを「空間の明るさ」として認識する傾向があるという、照明における「物理的な光の強さ(輝度・照度)」と「人間が感じる明るさ(感覚量)」の関係(ウェーバー・フェヒナーの法則)を利用している。そのため、床面照度を抑えても壁面を明るくすることで、省エネルギーでありながら開放的で広い空間という印象を与えることができる。
エントランスホールやロビーなど、質の高い空間演出が求められる場所で多用される。壁面の仕上げ素材や色を際立たせたり、空間の重心を壁側へ誘導したりすることで、落ち着きや高級感を演出する効果がある。
器具配置と離隔距離の目安
均一なウォールウォッシュ効果を得るためには、光源と壁面との距離(オフセット)および器具間の配置ピッチが重要となる。一般的なダウンライト形状のウォールウォッシャー器具を用いる場合、壁面から900mm程度離し、器具間隔も同様に900mmから1,200mmピッチ(壁面距離に対して1:1から1:1.2程度)で配置するのが基本となる。
壁に近すぎると上部だけが強く照らされ、下部まで光が届かない。逆に遠すぎると、床面に光が落ちてしまい、壁面を照らす効率が低下する。天井高さや器具の配光特性(広角・中角)に合わせて、適切な離隔距離を計算や照度分布図で確認する必要がある。
スカラップとグレアの制御
ウォールウォッシャーの失敗例として最も多いのが、壁面に「スカラップ」が発生することである。意図的に光の輪郭を見せる演出もあるが、均一な明るさを求めるウォールウォッシャーにおいては、スカラップは「ムラ」であり、施工精度が低いと思われるおそれがある。
特にユニバーサルダウンライトを無理な角度で壁に向けたり、配置ピッチが広すぎたりすると、光の重なりが失われて不規則なスカラップが目立つ。また、反射板の設計が不十分な器具では、居住者や歩行者の目に直接光源が入る「グレア(まぶしさ)」を引き起こすため、遮光角の深いグレアレス器具や、壁側のみに光が出る偏光タイプの器具を選定すると良い。
展示物や凹凸壁面への照射
壁面に絵画や掲示物を展示する場合、ウォールウォッシャーの光が額縁の上部に当たると、下部に強い影が落ち、作品が見えにくくなることがある。この場合、より壁面から離れた位置から照射するか、あるいはピクチャーライトのような局所照明を検討する。
また、タイルや石張りなど凹凸の激しい壁面に対して、壁際から鋭角に光を当てる手法を行うと、影が強調されすぎて素材感がきつく見える場合がある。ウォールウォッシャーはあくまで「面を明るくする」手法であり、素材の陰影を強調する手法とは区別して計画する必要がある。
アッパーライトによる演出
天井からの照射だけでなく、床面に埋め込んだアッパーライトによって下から壁を照らす手法もある。柱や壁の立ち上がりを強調できるが、器具のガラス面温度上昇による火傷リスクや、歩行者の視線に光源が入るグレアのリスクが高い。
また、床埋込器具は清掃時に水や洗剤が浸入しやすく、漏電や内部結露による不点灯トラブルが多発するおそれがある。防水性能(IP67以上)の確保や、ガラス面の定期的な清掃管理が運用上の課題となる。雨が直接当たる場所に設置すると、防水器具であっても内部浸水のおそれが飛躍的に高まるため、軒下に限って設置するなど、浸水リスクを低く抑える設計も検討すべきである。
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