銅損
抵抗に起因する負荷依存型の電力損失
銅損とは、変圧器や電動機の巻線(コイル)が持つ電気抵抗によって発生する電力損失のことである。電気エネルギーが導体を通過する際、導体内部の抵抗成分によって熱エネルギー(ジュール熱)へと変換されて失われる現象を指す。
銅損の大きさは、導体の抵抗値をR、流れる電流をIとした場合、P_c = I^2R(ワット)の式で表される。この式が示す通り、損失は負荷電流の二乗に比例して増大するため、電気機器の負荷率によって変動する「負荷損」の主要素として扱われる。これに対し、負荷の大小にかかわらず一定の損失となる鉄損(ヒステリシス損や渦電流損)は「無負荷損」と呼ばれ、機器の効率を評価する際は、これら銅損と鉄損の合計が全損失となる。
温度上昇と高周波による影響
銅損によって発生する熱は、電気機器の性能と寿命に直接的な悪影響を及ぼす。電動機や変圧器において、過負荷運転により電流が増大すると、銅損は加速度的に増加し、巻線の温度を急激に上昇させる。これが絶縁材料の許容最高温度を超過すると、絶縁劣化を引き起こし短絡事故や焼損に至る原因となる。
また、交流電流においては「表皮効果」と呼ばれる現象を考慮する必要がある。周波数が高くなるほど、電流は導体の表面付近に集中して流れる性質があり、導体の有効断面積が減少することで実効抵抗値が増加する。これにより、単純な直流抵抗計算よりも銅損が大きくなる傾向がある。特に、インバーター制御による高調波成分が含まれる回路では、この表皮効果による銅損の増加が顕著となるため、設計段階での軽減係数の考慮が不可欠である。
導体材料の選定とトップランナー基準
銅損を低減するための最も直接的な手法は、導体の電気抵抗を下げることである。変圧器の巻線材料には、一般的に導電率の高い「銅(タフピッチ銅など)」が採用されるが、コストダウンや軽量化を目的として「アルミニウム」が使用される場合もある。
アルミニウムは銅に比べて比重が軽く安価であるが、導電率が銅の約60%程度と低いため、同じ電流容量を確保しようとすると断面積を大きくしなければならず、結果として銅損が増加するか、あるいは機器全体が大型化するというトレードオフの関係にある。
近年の省エネルギー法に基づく「トップランナー基準」においては、変圧器のエネルギー消費効率(基準負荷率における全損失)の向上が義務付けられている。そのため、鉄損を低減するアモルファス鉄心の採用と並行して、巻線の占積率を高めて断面積を確保したり、銅線の純度を上げたりすることで抵抗値を下げ、銅損を極限まで抑制する設計が主流となっている。












