地区音響装置
地区音響装置の概要と種類
地区音響装置とは、自動火災報知設備の感知器や発信機と連動し、建物内にいる人々に対して火災の発生を知らせるための警報器具の総称である。一般的にはジリリリという音を発するベルが用いられるが、音声による避難誘導を行う非常放送設備のスピーカーを地区音響装置として代用することも可能である。
小規模なオフィスビルなどではベルによる警報が主流であるが、百貨店やホテル、大規模なオフィスビルなど不特定多数の人が利用する特定防火対象物においては、ベルが突然鳴り響くことによるパニックの発生が懸念される。そのため、状況に応じた音声メッセージを流すことができる非常放送設備を設置し、これを地区音響装置として機能させることが一般的である。
配置基準と音圧の確保
地区音響装置は、火災時に建物内のどこにいても警報音が確実に聞こえるように配置しなければならない。消防法では、音響装置の中心から各階のあらゆる地点までの水平距離に基づいて配置基準を定めている。
ベルを使用する場合、水平距離25メートル以下となるように配置することで、火災報知に必要な音圧である90デシベル以上を確保できるものとして扱われる。一方、非常放送設備のスピーカーを使用する場合は、水平距離10メートル以下となるように配置することで、L級スピーカーの基準である92デシベル以上を確保できるという仕様規定となっている。この規定に従って配置計画を行うことで、複雑な音響計算を行わずとも法的な必要音圧を満足させることが可能となる。
鳴動方式:一斉鳴動と区分鳴動
建物の規模によって、警報を鳴らす範囲(鳴動方式)が異なる。
延べ面積が小さい建物や5階未満の建物では、火災信号を受信すると同時に全館のベルが一斉に鳴動する一斉鳴動方式が採用される。対して、5階建て以上かつ延べ面積3000平方メートルを超えるような大規模な建物では、出火階とその直上階のみを優先して鳴動させる区分鳴動方式(出火階直上階鳴動方式)が採用される。
これは、火災の危険が最も高いフロアの人間を優先的に避難させ、階段室に避難者が殺到して将棋倒しになるなどの二次災害を防ぐための措置である。なお、一定時間が経過しても火災信号が継続している場合は、自動的に全館鳴動へと切り替わり、建物全体の避難を促すシーケンスが組まれている。実務では「タイムアップ」と呼ばれ、自動的に切り替わる時間設定については所轄消防機関との協議が欠かせない。
音声警報の段階的動作
非常放送設備を地区音響として用いる場合、パニック防止と誤報対策の観点から、段階的な警報システムが導入されている。
感知器が1つ作動した段階では直ちに火災とは断定せず、女性の声で「感知器が作動しました。係員が確認しております」といった旨の予備警報(感知器発報放送)が流れる。これは女性の声には落ち着きを与える効果があり、高い周波数帯域が騒音の中でも通りやすいという特性があるためである。
その後、係員が現場確認を行って発信機を押すか、別の感知器も作動して2信号となるか、あるいはスプリンクラー等の消火設備が起動するといった火災確定条件が満たされると、男性の声で「火事です。落ち着いて避難してください」といった本警報(火災放送)に切り替わる。男性の低く力強い声は、危機感を与え、行動を促す効果があるとされている。












