電気設備の知識と技術 サイトロゴ

🏠 電気設備の知識と技術 > 電気設備用語辞典 > 短絡比

短絡比

短絡比は、電力系統で使用される同期発電機の特性を示す重要な指標である。無負荷の状態で定格電圧を発生させるために必要な界磁電流と、三相短絡の状態で定格電流を流すために必要な界磁電流の比として定義される。発電機の設計方針や、運用時における電圧の安定性などを評価する数値として用いられる。

実務上の計算において、発電機の内部抵抗を無視できる場合、短絡比は百分率同期インピーダンスの逆数として表される。短絡比が大きい発電機ほど同期インピーダンスが小さく、短絡比が小さい発電機ほど同期インピーダンスが大きくなるという関係性を持っている。

発電機の特性と短絡比の関係

短絡比は、発電機の電気的な頑丈さや、負荷変動に対する安定性を示す数値である。同期発電機が定格速度で運転している状態から三相短絡事故が発生した場合、大きな短絡電流が流れる。同期インピーダンスが小さい設計の発電機は、この短絡電流が大きくなり、結果として短絡比も大きな数値となる。

短絡比が大きい発電機は、外部からの負荷変動を受けた際の電圧変動が少なく、系統の動揺に対しても安定して運転を継続しやすい特性を持つ。反対に短絡比が小さい発電機は、負荷の増減によって出力電圧が大きく変動するため、安定した電力を供給するための制御機構が別途必要となる。

鉄機械と銅機械の設計思想

同期発電機は、短絡比の大小によって「鉄機械」と「銅機械」という二つの設計思想に分類される。

  • 鉄機械:短絡比を大きく設計した発電機である。安定性を重視するため、鉄心をはじめとする磁気回路が大きく造られており、機械的な強度が高い。電圧変動が少なく安定度が高い反面、機器本体の寸法が大きくなり、重量も増し、製造費用が高価になる。
  • 銅機械:短絡比を小さく設計した発電機である。鉄心を小さくし、銅の量を減らすことができるため、小型化および軽量化が可能であり経済性に優れる。電圧変動が大きいため、自動電圧調整器などによる精密な制御が不可欠となる。

水力発電と火力発電における設計の違い

商用電力を供給する大規模な発電所においても、原動機の種類によって短絡比の基準は異なる。水車を動力源とする水力発電所の同期発電機は、回転速度が遅く、落雷などの系統事故に対する高い安定度が求められるため、短絡比を1.0から1.2程度と大きくとった鉄機械として設計される。

一方、蒸気タービンを動力源とする火力発電所のタービン発電機は、高速回転で運転されるため、遠心力に耐えられるよう回転子の直径を小さく抑える必要がある。そのため、必然的に鉄心が小さくなり、短絡比は0.5から0.6程度の銅機械となる。不足する安定度は、速応性の高い励磁装置を採用することで補っている。

常用および非常用発電設備における短絡比

建築設備や工場に設置されるディーゼル発電機やガスタービン発電機は、限られたスペースへの設置や搬入のしやすさが求められる。そのため、機器の小型化と軽量化を最優先とし、短絡比を0.6から0.8程度の小さな値に抑えた銅機械として設計されるのが一般的である。

短絡比を小さくすると内部のリアクタンスが増大し、負荷を投入した瞬間の電圧降下が大きくなるという課題が生じる。これを解決するため、高性能な自動電圧調整器を搭載し、電圧の変動を瞬時に検知して界磁電流をコントロールする設計手法が採られている。これにより、小型でありながら実用上問題のない安定した電力供給を実現している。

短絡電流と保護機器の選定

短絡比は、発電機の二次側で短絡事故が発生した際の保護協調にも影響を与える。短絡比と百分率同期インピーダンスは逆数の関係にあるため、短絡比がわかれば事故時に流れる三相短絡電流を容易に算出できる。短絡比の大きな発電機を採用した場合、事故時に流れる最大短絡電流も大きくなる。

そのため、発電機回路に設置する配線用遮断器や真空遮断器は、その大きな短絡電流を安全に遮断できる高い遮断容量を持った製品を選定しなければならない。発電機の導入計画にあたっては、短絡比の数値から想定される短絡電流を算出し、上位系統から下位の負荷に至るまでのすべての保護機器が適切に連動して動作するよう、保護協調の計算を行うことが設備設計の基本となっている。

関連ページ

短絡とは?電気回路のショートによる危険とその対策方法

非常用発電機とは?仕組み・法規制・設置基準を徹底解説

カテゴリ一覧を表示
エアコン室外機
電気の仕組み、発電所から家庭に送られる電気の流れ、直流と交流の違いなどを紹介。
風力発電
新エネルギーとして代表的な太陽光発電、風力発電、燃料電池や、排熱再利用など。
ライティングレールに取り付けられたスポットライト
照明設計の基礎知識、実務における応用、電球の特徴と選定方法などの照明設計。
分電盤の測定写真
電気計算の基礎となる幹線設計やケーブルの選定方法、配線器具の計画、電線管の種類と使い分け。
設備時計
電話、LAN、テレビ共聴、構内通信、電気時計など、弱電設備の設計や計画について。
ボックスに収容されたケーブル
電力ケーブル、通信ケーブル、光ファイバーなど数多く存在するケーブルの特徴を解説。
柱上に取り付けられた変圧器と電線
受変電設備の設計、各種保護装置の選定方法、受変電設備を構成する保護リレーの種類と整定方法など。
誘導標識
非常用照明、誘導灯、自火報、非常用発電機、防災用蓄電池など、災害発生時に使用する防災設備を学ぶ。
机の上に置かれた辞書
電気設備の関連業務を行うにあたり、必要と考えられる各種資格について学ぶ。
自然をイメージした植栽
カーボンニュートラルを達成し、二酸化炭素の排出を削減と吸収の技術について解説。
辞書を見る人
電気設備で使用される機器、材料、技術、指標や単位を解説したオンライン電気設備用語辞典。
計算機を操作する人
電気設備設計で用いられることの多い計算ツールを公開。
プライバシーポリシー
サイトを閲覧するための表示環境、公開情報に対する免責事項、閲覧時のプライバシーポリシーについて。