短絡比
短絡比(Short Circuit Ratio、SCR)は、主に電力系統で使用される同期発電機の特性値である。この値は、発電機の設計思想、運用時の電圧安定性、系統全体の安定度に直結する指標となる。「無負荷で定格電圧を発生させた際の界磁電流値」と「三相短絡時に定格電流を流すために必要な界磁電流値」の比として表される。
実務的には、発電機の内部抵抗を無視できる場合、短絡比は百分率同期インピーダンスの逆数として定義され、短絡比が大きいほど同期インピーダンスは小さく、短絡比が小さいほど同期インピーダンスは大きい。
同期発電機が定格速度・定格電圧・無負荷という条件で運転中、三相短絡した場合の短絡電流と、同期機の定格電流の比。同期インピーダンスが小さいほど、短絡電流が大きくなり短絡比が大きくなる。
短絡比は、発電機の「頑丈さ」や「安定性」を示す。短絡比が大きな同期発電機は「鉄機械」と呼ばれ、安定度が高いが、機器が大きく高価で効率が悪いという特徴がある。同期インピーダンスが小さいため、外部負荷の急激な変動に対する電圧変動が少なく、電圧の安定化が容易である。系統の動揺に対しても安定して運転を継続しやすい。安定性を重視するため、鉄心(磁気回路)が大きく設計され、機械的な強度が高い。
対して短絡比が小さな同期発電機は「銅機械」と呼ばれ、電圧変動が大きく不安定だが、機器が小さく安価で効率が良いという特徴がある。磁気回路を小さく、銅量を少なく設計できるため、小型化・軽量化が可能で、経済性に優れる。同期インピーダンスが大きいため、電圧変動が大きく、自動電圧調整器(AVR)などによる精密な電圧制御が不可欠となる。
ディーゼル発電機やガスタービン発電機は機器小型化を図るため、短絡比を0.6~0.8として設計されるが、内部リアクタンス増大や、電圧変動が大きくなるという問題が発生するため設計による工夫が要求される。












