短絡比
短絡比は、電力系統で使用される同期発電機の特性を示す重要な指標である。無負荷の状態で定格電圧を発生させるために必要な界磁電流と、三相短絡の状態で定格電流を流すために必要な界磁電流の比として定義される。発電機の設計方針や、運用時における電圧の安定性などを評価する数値として用いられる。
実務上の計算において、発電機の内部抵抗を無視できる場合、短絡比は百分率同期インピーダンスの逆数として表される。短絡比が大きい発電機ほど同期インピーダンスが小さく、短絡比が小さい発電機ほど同期インピーダンスが大きくなるという関係性を持っている。
発電機の特性と短絡比の関係
短絡比は、発電機の電気的な頑丈さや、負荷変動に対する安定性を示す数値である。同期発電機が定格速度で運転している状態から三相短絡事故が発生した場合、大きな短絡電流が流れる。同期インピーダンスが小さい設計の発電機は、この短絡電流が大きくなり、結果として短絡比も大きな数値となる。
短絡比が大きい発電機は、外部からの負荷変動を受けた際の電圧変動が少なく、系統の動揺に対しても安定して運転を継続しやすい特性を持つ。反対に短絡比が小さい発電機は、負荷の増減によって出力電圧が大きく変動するため、安定した電力を供給するための制御機構が別途必要となる。
鉄機械と銅機械の設計思想
同期発電機は、短絡比の大小によって「鉄機械」と「銅機械」という二つの設計思想に分類される。
- 鉄機械:短絡比を大きく設計した発電機である。安定性を重視するため、鉄心をはじめとする磁気回路が大きく造られており、機械的な強度が高い。電圧変動が少なく安定度が高い反面、機器本体の寸法が大きくなり、重量も増し、製造費用が高価になる。
- 銅機械:短絡比を小さく設計した発電機である。鉄心を小さくし、銅の量を減らすことができるため、小型化および軽量化が可能であり経済性に優れる。電圧変動が大きいため、自動電圧調整器などによる精密な制御が不可欠となる。
水力発電と火力発電における設計の違い
商用電力を供給する大規模な発電所においても、原動機の種類によって短絡比の基準は異なる。水車を動力源とする水力発電所の同期発電機は、回転速度が遅く、落雷などの系統事故に対する高い安定度が求められるため、短絡比を1.0から1.2程度と大きくとった鉄機械として設計される。
一方、蒸気タービンを動力源とする火力発電所のタービン発電機は、高速回転で運転されるため、遠心力に耐えられるよう回転子の直径を小さく抑える必要がある。そのため、必然的に鉄心が小さくなり、短絡比は0.5から0.6程度の銅機械となる。不足する安定度は、速応性の高い励磁装置を採用することで補っている。
常用および非常用発電設備における短絡比
建築設備や工場に設置されるディーゼル発電機やガスタービン発電機は、限られたスペースへの設置や搬入のしやすさが求められる。そのため、機器の小型化と軽量化を最優先とし、短絡比を0.6から0.8程度の小さな値に抑えた銅機械として設計されるのが一般的である。
短絡比を小さくすると内部のリアクタンスが増大し、負荷を投入した瞬間の電圧降下が大きくなるという課題が生じる。これを解決するため、高性能な自動電圧調整器を搭載し、電圧の変動を瞬時に検知して界磁電流をコントロールする設計手法が採られている。これにより、小型でありながら実用上問題のない安定した電力供給を実現している。
短絡電流と保護機器の選定
短絡比は、発電機の二次側で短絡事故が発生した際の保護協調にも影響を与える。短絡比と百分率同期インピーダンスは逆数の関係にあるため、短絡比がわかれば事故時に流れる三相短絡電流を容易に算出できる。短絡比の大きな発電機を採用した場合、事故時に流れる最大短絡電流も大きくなる。
そのため、発電機回路に設置する配線用遮断器や真空遮断器は、その大きな短絡電流を安全に遮断できる高い遮断容量を持った製品を選定しなければならない。発電機の導入計画にあたっては、短絡比の数値から想定される短絡電流を算出し、上位系統から下位の負荷に至るまでのすべての保護機器が適切に連動して動作するよう、保護協調の計算を行うことが設備設計の基本となっている。












