ダブルスロー(DT)
ダブルスローとは、複数系統の一時電源が供給される場合に用いる、供給元の電源を切り替えるための切替装置のひとつである。商用電源と非常用発電機からの電源を切り替えるのに使用されることが一般的である。「双投型(そうとうがた)」とも呼ばれ、ひとつの操作で「二つの異なる接続先」へ電流の経路を切り替えることができる構造を持つスイッチや開閉器(かいへいき)を示す。
配線用遮断器を並列に設置しても同じ系統が構築できるが、ダブルスローを用いることで、両系統の同時閉路を防止できる。非常用発電機からの電源が電力会社への電源系統に流れ込むことを防止するため、ダブルスローを用いることが望ましい。
最も単純なスイッチである「シングルスロー(ST、単投型)」が、電流を「流す(ON)」か「止める(OFF)」というオンオフ操作であるのに対し、ダブルスローは「A系統に流す」か「B系統に流す」かを選択できる。
物理的には、ひとつの可動接点が、A側の固定接点群、またはB側の固定接点群のいずれかと接続する構造となっている。操作レバーや電動モーターによって、この可動接点の位置を切り替えることで、電源ルートを変更することが可能である。
ダブルスローを使用する場合、負荷電流が流れた状態での切り替えが可能である。しかし、無瞬断による切り替えはできないため、切り替えの瞬間には一時的に停電状態となる。このため、PCや制御装置などはUPS(無停電電源装置)で保護する必要がある。
また、切替装置の設置場所やメンテナンスにも注意が必要である。ダブルスローそのものには遮断機能がないため、過負荷や短絡を保護することはできない。また、ダブルスロー自体の点検や交換も必要となるため、点検対象が増えてしまうことにも注意が必要である。
ダブルスローが用いられるシーン
ダブルスロー型スイッチの主な用途は、電源の自動または手動切り替えである。代表的な使用例としては、ビル、病院、商業施設、データセンターなどにおける非常用電源系統との停電時切り替えがある。通常時は商用電力会社から供給されるメインの電源(A系統)に接続されており、停電が発生した際には自動的に商用電源が途絶えたことを検知し、ダブルスローのスイッチをB系統(非常用発電機や蓄電池)に切り替える。
復旧時は、商用電源が復旧したことを検出して再びA系統へと戻す。または手動で切り替えるといった方法で、通常時の運用に復旧することで容易に停電・復電操作を達成することができる。
内線ではあまり用いられることは少ないが、電力系統の冗長化やメンテナンスのため、電力会社の変電所や配電網においても利用されている。ループ状に張り巡らされた送電網の特定の区間を、メンテナンスや事故発生時に切り離し、予備のルートへ迂回させる際に、ダブルスロー型の開閉器が用いられることがある。これにより、広範囲な停電を回避し、安定供給を維持している。
複数の配線用遮断器を組み合わせたダブルスロー同等の機能
ダブルスローは1台の操作装置で電路を切り替えることが可能だが、配線用遮断器を複数並列させて回路構築することも可能である。この方式では、投入防止バーなどを用いてメカニカルインターロックを組み、両方のブレーカーが同時に投入されないように配慮する必要がある。
この場合、ダブルスローを使用する場合に比べて、同時閉路が発生する時間が長くなる可能性があるため、安全性・安定性は低くなることに注意が必要である。












