スポットネットワーク
スポットネットワーク方式の概要
スポットネットワーク方式とは、都市部の大規模オフィスビル、データセンター、病院など、極めて高い電源信頼性が求められる施設で採用される受電方式である。電力会社から異なる系統の配電線を3回線(またはそれ以上)引き込み、それぞれの回線に変圧器を接続した上で、二次側(低圧側)をネットワーク母線で並列に接続して電力供給を行うシステムを指す。
一般的な受電方式では、通常1回線のみを使用し、事故時に予備回線へ切り替える運用を行うため、切り替え時に瞬時停電または十数秒の停電が発生する可能性がある。対してスポットネットワーク方式では、常に全回線が接続された状態で運転しているため、1回線が停電しても、残りの回線から電力供給が途切れることなく継続される。これにより、無瞬断での安定供給が可能となる。
3回線受電と常時並列運転の仕組み
この方式の基本構成は、信頼性を確保するために最低3回線の特別高圧配電線から受電する点にある。各回線には断路器とネットワーク変圧器が設置され、その二次側にネットワークプロテクタを介して、共通のネットワーク母線に接続される。
通常時は3回線すべての変圧器が並列運転を行い、負荷電流を分担して供給している。もし落雷や事故により1回線が停止した場合、ネットワークプロテクタが当該回線を自動的に切り離すが、残りの2回線はそのまま運転を継続するため、構内設備への電力供給には影響が出ない。
ネットワーク変圧器と過負荷耐量
スポットネットワーク受電に使用される変圧器は、専用に設計されたネットワーク変圧器である。この変圧器には、1回線が事故停止し、残りの変圧器で全負荷を負担しなければならない事態を想定して、過負荷運転に対する耐量が設定されている。
例えば、3回線のうち1回線が停止した場合、残り2台の変圧器で通常の負荷を支えることになるため、定格容量の130%程度の過負荷状態で数時間から数日間運転できる性能を持たせる設計が一般的である。これにより、変圧器容量を過大にすることなく、非常時の供給継続性を確保している。
ネットワークプロテクタによる保護
各変圧器の二次側には、プロテクタヒューズ、プロテクタ遮断器、プロテクタ継電器から構成されるネットワークプロテクタが設置される。
これは電力系統側で事故が発生した際、健全なネットワーク母線側から事故点に向かって電力が逆流するのを防ぐ役割を持つ。プロテクタは逆電力を検知すると即座に遮断器を開放し、構内全停電を防止する。また、復旧時には配電線側の電圧が確立されたことを検知して自動的に再投入する機能を持ち、無人運用を可能にしている。
導入のメリットと留意点
スポットネットワーク方式の利点は、受電用遮断器の操作なしに無停電供給を維持できる信頼性の高さと、特別高圧側の設備を簡素化できることによる省スペース性にある。
一方で、専用のネットワーク変圧器やプロテクタ装置が必要となるため、本線予備線方式などの一般的な受電設備と比較して導入コストが高額になる傾向がある。また、この方式を採用するためには、電力会社側の配電網がネットワーク配電に対応しているエリアである必要があり、導入可能な地域は都市部の一部に限られる。
スポットネットワーク方式の変圧器選定と保護協調
変圧器の容量選定と過負荷特性
ネットワーク変圧器の単器容量は、一般的に2500kVA以下が採用される。変圧器の容量決定に際しては、1回線が停止した状態でも残りの変圧器で負荷を負担できるよう、過負荷耐量を考慮した設計が必要となる。
一般的な過負荷特性として、100%負荷で連続運転を行った直後に、130%負荷で8時間の過負荷運転に耐え得る性能を持たせることが計算の基準となる。メーカーにより、年間に何回発生するのかを性能として規定している場合もある。これにより、長時間の事故停止時にも安定した電力供給が維持される。
保護協調と短絡容量への対策
ネットワーク母線は、複数の変圧器がバスダクトなどで並列接続されているため、短絡容量が非常に大きくなる傾向がある。そのため、低圧幹線や遮断器の選定においては、短絡電流強度に耐え得る仕様選定と保護協調の検討が不可欠となる。
ネットワークプロテクタの不要動作と対策
ネットワークプロテクタは、電圧や電力潮流の微妙な変化を検出して動作するため、故障ではない状況下でも遮断動作を行ってしまう場合がある。これを不必要動作と呼ぶ。
受電電圧不平衡による不要動作は、受電する回線間で線路長が異なったり、同じ系統に大きな負荷がつながっていたりし、受電電圧に差が生じたときに発生する。このとき、電圧の高い系統から変圧器を介して低い系統へ電力が回り込む循環電流が発生し、これを逆電力と誤検知して遮断してしまうことがある。
回生電力による不要動作は、エレベーターやクレーンなどの電動機負荷から発生する回生電力が構内消費を上回ったとき、余剰電力が系統側へ流出することで発生する。プロテクタはこれを逆電力と判断して動作してしまう。対策として、逆電力遮断の動作時限を遅らせる、回生電力発生時に継電器をロックする、あるいはダミー負荷を挿入して電力を消費させるといった方法が検討される。












