始動電流
始動電流(Starting Current)は、定格電圧で電動機を始動するとき、一時的に電動機に流れる大きな電流である。停止している電気機器に電源を投入した直後、定常状態(安定した運転状態)に達するまでの間に流れる過渡的な電流であり、定格電流よりも大きな電流が短時間流れるが、その電流は定格電流の5~7倍であり、電動機の回転速度が定格速度に到達するまで継続する。
特に誘導モータなどの回転機において顕著であり、一般的には定格電流(安定時の電流値)の5倍から8倍、条件によってはそれ以上の電流が数秒間にわたって流れる。始動時の電動機は力率が悪く、電源系統を乱す原因ともなる。始動電流の増大を防ぐために「始動装置」と呼ばれる装置を用いて、始動電流の低減を図るのが良い。
始動電流が発生する理由は、物理的な「慣性」と電気的な「逆起電力」の欠如がその要因となる。停止しているローター(回転子)を回し始めるには、静止摩擦や接続された負荷の重さに打ち勝ち、回転を開始するための大きなトルクが必要となる。
また、電気的な側面ではモーターが回転を始めると自ら「逆起電力」を発生させて電流の流れを抑制するが、回転が始まっていない瞬間はこの抑制力がゼロとなっているため、回路の巻線抵抗に依存した、非常に大きな電流が流れ込む。このような複数の要因から、停止状態の電動機を回転させるためには定格電流の数倍の容量をもつ発電機や変圧器が必要となる。
例えば、電動機に給電する電力ケーブルは、始動電流で著しい電圧降下を引き起こさないサイズとしなければ、電圧の瞬時低下により照明がちらついたり、PCや制御機器が再起動するといった不具合につながる。
また電源系統を保護する遮断器は、始動電流を短絡電流と誤認して動作するおそれがあるため、始動電流のピークを許容する「モーターブレーカー」を選定するか、始動電流で動作しない大きさの配線用遮断器とし、過電流に対する保護をサーマルリレーを組み合わせて行うといった工夫が必要となる。モーターブレーカーは、定格容量の汎用モーターに適した遮断器であり、高効率電動機などを保護する場合の選定が難しいことに注意が必要である。
始動電流を低減させる始動方法
始動装置には「スターデルタ始動」「インバーター始動」など、性能によっていくつかの種類がある。7.5kWや11kWといった中規模以上の電動機を始動する場合に、始動装置を用いるのが一般的設計手法となっている。
スターデルタ(λ-Δ)始動法は、中容量のモーターで広く使われる伝統的な手法である。始動時に結線を「スター形」にすることで電圧を 1/√3 に低減させ、始動電流を全電圧時の1/3に抑制する。回転が上がった後に「デルタ形」へ切り替えることで定格運転に移行させる。
インバータ始動は効率的かつ高度な手法で、周波数と電圧をゼロから最適制御することで、始動電流を定格電流付近に抑えつつ、必要なトルクを発生させることができる。インバーターは高価であることや、高調波の対策なども配慮しなければならないなど、検討すべき項目が多岐に渡るが、省エネ効果が高く高効率であり、優れた特性を持っている。
電動機の種類と保護の詳細については電動機の種類・保護・遮断器選定を参照。












