セルラダクト工事
概要と構造
デッキプレートなどの波型鋼材の溝部分を配線ルートとして活用する施工方法を、セルラダクト工事と呼ぶ。構造用デッキプレートの溝は波型形状になっているため、下階から見上げた場合、山と谷の形が見えることになる。この「山」となる部分の下部にカバー部材を取り付けることで、ダクト形状の空洞を構成し、上階の配線ルートとして活用できるものとして開発された。
この工法は、床スラブを直接配線ルートとして活用するため、OAフロアなどで床面を嵩上げすることなく、所定の階高でもデスク等へ電源・電話・LAN等の配線を敷設することができる。意匠上の配慮と機能性を両立する施工方法であり、現在のオフィスビルではOAフロアの構築を基本として床下げを行うのが一般的であるが、かつては主要な設計方法の選択肢のひとつであった。
法的な位置づけ
床スラブのデッキをそのまま活用する施工方法であるため、JISで規定されたデッキプレートの仕様を満足していれば、電気設備技術基準上も適法な電線路であると定められている。
なお、IV線などの絶縁電線を通す場合のみ「セルラダクト工事」として規定される。ここにケーブルを通した場合は「ケーブル工事」という扱いになり、セルラダクト部分は単なるケーブルの保護材(防護装置)であるとみなされる。これは、電線管に絶縁電線を通した場合は金属管工事、ケーブルを通した場合は保護材扱いとなる考え方と同じである。
技術的要件と接地
使用する絶縁電線は、直径3.2mmを超えるものは「より線」でなければならないと定められている。また、原則としてダクト内で電線に接続点(分岐点)を設けてはならない。
セルラダクト部分は金属製の電線路となるため、D種接地工事を施さなければならず、接地線をデッキプレートやカバーに確実に接続する必要がある。もし電源線(強電)と弱電流電線(弱電)を同一ダクト内に収める場合は、混触防止のために堅ろうな隔壁(セパレーター)を設け、C種接地工事を施すことが定められている。
普及状況と構造上の制約
電気設備技術基準などにも規定されている施工方法であるが、実際に施工されている実例は極めて少ない。一部の鋼材メーカーが「セルラーデッキ」といった専用デッキプレート部材を生産していたが、現在ではほとんど流通していないのが実情である。
また、デッキ溝を利用するという特性上、一方向への配線は容易だが、これと直交する方向への配線には「ヘッダダクト」と呼ばれる別の配線ダクトを設けて対応しなければならない。ヘッダダクトもスラブに打ち込まれるため、本体を鋼板で製作し、デッキスラブと電気的に接続することが求められる。配線の取り出しは、ヘッダダクトを通じて、ジャンクションボックスや所定のインサートキャップの部分でのみ行うことができる。
設計・施工上のルール
セルラダクト工事は、他の金属ダクト工事と同様、ダクト内部での電線接続は禁止されており、接続点は目視点検が可能なボックス内などで確保しなければならない。
また、内線規程において金属ダクト工事と同様、電線の絶縁被覆を含む断面積の総和が、ダクトの内部断面積の20%以下であることが定められている。
現在の主流
フロアダクト工事のように床スラブに金属ダクトを埋め込む方式と比べれば、スラブ厚を薄くできるという利点はある。しかし、そもそも「下階のデッキ裏を配線ルートとする」施工や、「デッキスラブ上のコンクリート部に金属ダクトを打ち込む」といった施工を採用するよりも、現代のオフィスビルでは配線をOAフロア(フリーアクセスフロア)下に収容するのが一般的である。レイアウト変更に対して自由かつ柔軟に対応できるOAフロアの方が、建物の運用メリットが大きいため多用されている。












