絶縁トランス
絶縁トランスは、入力側(一次側)と出力側(二次側)の回路を、電気的に直接つながず「磁気」のみで結合させた変圧器のことである。絶縁トランスは一次巻線と二次巻線が完全に分離している「複巻構造」を採用している。この「電気的な縁切り」により、一次側の接地系から二次側の回路を切り離すことができる。
変圧器の一次側と二次側が絶縁されていることから、ノイズなどの流入を抑えるといった用途に用いる。また、絶縁トランスを介した二次側回路は大地(アース)から浮いた状態となり、非接地状態になる。出力側の一線に触れたとしても、接地がないことにより電流の帰路が遮断されているため、感電リスクを大幅に低減できるという利点がある。
絶縁トランスは一次側と二次側が遮断されているため、コモンモードノイズの伝播を物理的に阻止できる。コモンモードノイズは電源ラインとグランドの間に発生するノイズで、通常のフィルタでは除去しにくいという特性がある。
オーディオ機器では「音がクリアになる」といわれることもあり、この電源由来のノイズ成分が遮断されることがその理由であるとされている。ただし信号ライン間や、電源の線間に発生するノーマルモードノイズはそのまま伝達することから、完全なノイズ対策とはならない点に注意が必要である。
電気設備分野では、太陽光発電システムなどで、系統側(電力会社側)のサージや事故がパワーコンディショナー等に波及するのを防いだり、エレベーターやエスカレーターの電源系統に設けてノイズを遮蔽するといった事例も多い。
ノイズカットの利用事例
医療分野では、患者に直接触れる精密検査機器の安全基準をクリアするために広く導入されている。特に、ノイズを厳しく低減しなければならない医用電源系統では、絶縁トランスを用いることで漏れ電流を大きく低減させ、高い安全性が確保できる。
病院などの手術室やICUといった医用室にあっては、電撃や漏電による影響を一般的な用途の室よりも厳しく制限しなければならず、等電位接地による物理的な電位差の発生を抑制するほか、絶縁監視装置による絶縁性能の常時監視、絶縁トランスを電気回路に接続するなど、多くの手法を用いて漏れ電流や電位差の発生を抑制している。












