絶縁耐力試験
絶縁耐力試験の目的と概要
絶縁耐力試験(耐圧試験)は、電気機器や電路が最大使用電圧に対して十分な絶縁強度を有しているかを確認するために行う試験である。機器の製作工場での検査や、現地での据付完了後に行う使用前自主検査において実施される。
メガーを用いた一般的な絶縁抵抗測定が、低い電圧で漏れ電流の少なさを確認するものであるのに対し、絶縁耐力試験は、規定の高電圧を所定の時間(一般的に1分間)印加し続け、絶縁破壊やフラッシュオーバーが発生しないことを実証する試験としての性質を持つ。
絶縁耐力試験におけるふたつの基準
絶縁耐力試験は、電路や機器が十分な絶縁性能を持っているかを確認するための試験であるが、その試験時間には「10分間」と「1分間」という異なる運用が存在する。実務においてはこの両者の目的を正しく理解し、区別して認識する必要がある。
この違いを一言で整理すると、10分間の試験は「機器が本来備えるべき素質」を確認するものであり、1分間の試験は「設備として問題なく施工されているか」を確認するものと考えれば理解しやすい。
技術基準第16条が求める「10分間」
電気設備技術基準の解釈第16条「機械器具等の電路の絶縁性能」においては、試験電圧を連続して10分間加えることが規定されている。ここで対象としているのは、変圧器や回転機といった電気機械器具そのものである。
機器内部の巻線間や鉄心、外箱との絶縁性能が、中性点条件を含めた最悪の状態においても耐え得ることを証明するための「性能規定」である。つまり、工場試験や形式試験において、その機器が構造として備えるべき設計耐力を確認するために設定された時間が、この10分間である。
現地試験で適用される「1分間」
一方で、建設現場で行われる使用前自主検査や竣工試験、定期点検における耐電圧試験では、原則として1分間の印加が採用される。
これは、工場で性能が担保された機器を現地で接続した後、ケーブルの接続不良や施工ミスがないかといった「設備全体としての健全性」を確認することを目的としているためである。すでに完成している機器に対して、必要以上の長時間ストレスを与えて絶縁劣化を招くリスクを避けるという意味合いも含まれている。
つまり、技術基準に書かれた10分間は「機器(モノ)としての性能」を指し、現場での1分間は「電路(施工)としての確認」を指す。レイヤーの異なる規定であることを理解しておけば、整合性が取れる。
試験電圧の決定と印加時間
試験電圧は、電路の公称電圧ではなく、最大使用電圧(最高電圧)を基準に算出する。公称電圧6600Vの高圧配電系統の場合、6900Vの1.5倍の電圧を試験電圧とするのが一般的である。
この場合、6900Vの1.5倍である10350Vが交流試験電圧となる。この電圧を電路と大地間に印加し、1分間耐えることをもって合格と判定する。なお、最大使用電圧が7000Vを超える特別高圧系統(22000Vなど)の場合は、最大使用電圧の1.25倍を試験電圧として採用する。
試験方法と安全措置
試験は、変圧器やケーブルといった被測定物のR相、S相、T相の各相を一括して短絡し、これに試験電圧を印加して大地との間にかける方法で行う。これにより、電路全体の対地絶縁性能を確認することができる。
試験実施に際しては、高電圧を扱うため感電事故への対策が必要となる。特に試験終了直後は、ケーブルや機器に高圧の残留電荷が蓄積されているため、接地棒などを使用して十分に放電を行ってから測定器を取り外す手順が求められる。また、既設の老朽化した設備に対して試験を行う場合、試験電圧のストレスによって絶縁破壊を引き起こすリスクがあるため、実施については慎重な検討を要する。












