整流形計器
整流形計器の基本構造と動作原理
整流形計器は、交流電圧や交流電流を測定するため、ダイオードなどの半導体素子を用いた整流器と、直流用の永久磁石可動コイル形指示計器を組み合わせた計測器である。可動コイル形計器は、コイルに流れる直流電流の大きさに比例して電磁力を生じ、指針を動かす構造であるため、極性が周期的に反転する交流をそのまま入力しても指針は振動するだけで測定できない。
そこで、入力された交流信号を全波整流回路または半波整流回路に通して一方向の直流電流に変換し、その整流された電流を可動コイルに入力することで、安定した回転トルクを得て交流を測定する仕組みとなっている。
平均値応答と実効値目盛りの関係
整流形計器の内部にある可動コイルは、整流された脈流(直流)の「平均値」に比例して応答し、指針を振らせる。しかし、交流回路の計測において実務上必要とされる値は、熱的な仕事量を示す「実効値」である。そのため、計器の文字盤の目盛りは、純粋な正弦波を入力した際の実効値を直接読み取れるように、あらかじめ平均値に対して特定の係数を掛けた値で目盛り付けされている。
正弦波における実効値と平均値の比率を「波形率」と呼ぶ。純粋な正弦波の波形率は「実効値 ÷ 平均値 = 1.11」であるため、整流形計器は内部で測定した平均値に1.11を掛けた数値を指示するように調整されている。
ひずみ波形における測定誤差の発生
整流形計器の目盛り調整は純粋な正弦波(波形率1.11)を前提としているため、測定対象の交流波形が歪んでいる場合には、指示値に大きな誤差が生じるという弱点がある。現代の電気設備においては、非線形負荷による高調波の発生が顕著である。
例えば、無停電電源装置(UPS)の矩形波出力、モーター駆動用インバータの出力側、スイッチング電源の入力波形、位相制御されたサイリスタ回路などは、第3高調波や第5高調波を多く含む「ひずみ波」となる。これらの非正弦波は波形率が1.11から大きく逸脱するため、平均値に1.11を掛けて実効値とみなす従来の整流形計器では、正確な実効値を読み取ることができない。
実効値の測定方式と機器の使い分け
電気設備の保守点検において、ひずみ波形が想定される環境下では、測定器の応答方式を正確に把握して機種を選定しなければならない。
- 平均値整流実効値指示(一般的な整流形):波形が正弦波であることを前提としているため、インバータ回路やLED照明の電源回路などで使用すると、実際の値よりも低く、あるいは高く表示される誤差が生じる。
- 近似実効値整流方式:整流回路に特殊な補正回路を組み込み、ひずみ波であっても実効値に近い値を指示するよう改良された方式である。
- 真の実効値指示(True RMS方式):波形の瞬時値を二乗平均平方根で演算処理するため、波形の歪みに一切依存せず、いかなる波形でも正確な熱的実効値を示す。インバータ回路の測定にはこの方式が必須となる。
整流形計器の利点とアナログテスタへの応用
波形歪みに対する制約はあるものの、整流形計器には他の交流用指示計器(可動鉄片形や電流力計形など)にはない優れた電気的特性がある。ベースが可動コイル形であるため感度が極めて高く、測定対象の回路から奪う電力(自己消費VA)が非常に少ない。
また、周波数特性が比較的良好であり、目盛りが直流計器に近い均等目盛り(リニアスケール)となるため、指針の読み取りが容易である。これらの利点から、電気工事や保守の現場で広く普及している指針型のアナログテスタ(回路計)において、交流電圧を測定するための内部機構として標準的に採用されている。微小な交流電圧・電流を低損失で測定する用途においては、現在でも有用な計器である。
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