セタン価
セタン価の定義と測定基準
セタン価とは、ディーゼルエンジンに使用される軽油などの燃料において、その自己着火性の良否を示す指数のことである。自己着火性とは、火花などの点火源がなくても、高温高圧の状態で自ら発火する性質を指す。
この数値は、着火性が非常に高い正標準燃料であるノルマルセタン(セタン価100)と、着火性が極めて低いヘプタメチルノナン(セタン価15)を混合し、測定対象の燃料と同じ着火遅れを示す混合比率を求めることで算出される。つまり、セタン価が高いほど、シリンダー内に噴射された直後に素早く着火する「燃えつきの良い」燃料であることを意味する。
オクタン価との違い
ガソリンエンジンの燃料性能を示す指標にオクタン価があるが、これはセタン価とは真逆の性質を示している。
ガソリンエンジンにおいては、プラグで点火する前に勝手に爆発してしまう異常燃焼を防ぐため、高いオクタン価の「燃えにくさ」が求められる。対してディーゼルエンジンは、圧縮熱で自然発火させる仕組みであるため、高いセタン価の「燃えやすさ」が求められる。一般的に、オクタン価が高い成分はセタン価が低く、セタン価が高い成分はオクタン価が低いという相関関係にある。
ディーゼルノックと着火遅れ
セタン価が低い燃料を使用した場合に発生する問題が、ディーゼルノックと呼ばれる激しい振動と騒音である。
セタン価が低いと、燃料が噴射されてから実際に着火するまでの時間である着火遅れが長くなる。すると、着火しないまま燃焼室内に未燃焼の燃料が大量に蓄積され、それらが着火した瞬間に一気に爆発的な燃焼を起こすことになる。これが急激な圧力上昇を招き、ハンマーで叩いたような大きな打撃音や振動、さらには排ガス中の窒素酸化物や黒煙の増大を引き起こす原因となる。
JIS規格と寒冷地でのトレードオフ
日本産業規格であるJISにおいては、軽油のセタン価は45以上または50以上と規定されている。しかし、寒冷地では特殊な配慮を必要とする。
寒冷地で販売される3号軽油や特3号軽油は、低温でも凍結しないよう流動性を高める成分調整が行われている。しかし、一般的に流動性の良い成分はセタン価が低い傾向にあるため、寒冷地用の軽油は、温暖地用の軽油に比べてセタン価が下限値近くまで低くなっていることが多い。そのため、冬場の寒冷地ではエンジンの始動性が悪くなったり、エンジン音が大きくなったりすることがあるが、これは燃料の特性上避けられない現象でもある。












