ローテンションアウトレット
弱電線専用の床埋込型取出口
ローテンションアウトレットは、オフィスビルや店舗の床面から、電話線、LANケーブル、インターホン線、放送線といった「弱電線」を取り出すために設置される、床埋込型の配線器具である。通常、アルミダイカストや銅合金鋳物で作られた堅牢な筐体を持ち、フロアダクトや電線管と接続して使用される。
電気設備用語において「ローテンション(Low Tension)」は低電圧・弱電流を意味し、「ハイテンション(High Tension)」は100Vや200Vの強電流回路を意味する。したがって、ローテンションアウトレットには電源コンセントを内蔵することはできず、誤って強電線を配線することは、誘導ノイズによる通信障害や、絶縁距離の不足による保安上の問題を引き起こす。電源が必要な場合は、対となる「ハイテンションアウトレット」を併設するか、強弱電を分離したインナーコンセントを選定する必要がある。
設置不適当な場所と物理的損傷リスク
ローテンションアウトレットは床面に突起として現れるため、設置位置の選定には細心の注意が求められる。机の下など、人の足が頻繁に触れる場所や、キャスター付きの椅子・ワゴンが通過する動線上に設置すると、「蹴り」による筐体の破損や、接続されたケーブルの断線事故が発生しやすい。また、可動式の間仕切りや什器の脚が乗り上げることで、アウトレット自体が変形し、蓋が開かなくなるトラブルも散見される。
これらの物理的損傷を防ぐため、設計段階で什器レイアウトを確定させ、人の動線から外れた位置に配置するか、あるいは使用していない時は床面とフラットになる収納型(フロアコンセント)を採用するなどの対策が必要である。
水気と熱源に対する施工上の禁止事項
床面清掃において、モップ掛けや水洗いが行われる可能性がある場所への設置は避けるべきである。ローテンションアウトレットは簡易的な防水構造を持つものもあるが、完全防水ではないため、清掃水が浸入すると管路を通じて下階やアウトレットボックス内部へ漏水したり、弱電端子台が腐食して通信不良を引き起こしたりする原因となる。
また、床暖房パネルが敷設されている床面への設置も原則として不可である。アウトレット本体が熱橋(ヒートブリッジ)となって放熱を妨げるだけでなく、管路内が結露しやすくなり、絶縁性能の劣化を招く。さらに、電線自体が許容温度以上に加熱されることで、通信性能の低下や被覆の硬化劣化が進行するリスクがあるため、床暖房エリアを避けて配管ルートを確保しなければならない。
OAフロア普及による施工形態の変化
かつてはコンクリート埋設配管とフロアダクトによる配線が主流であったため、金属製のローテンションアウトレットが必須であった。しかし、近年のオフィスビルでは、床下に配線空間を設ける「フリーアクセスフロア(OAフロア)」が標準化されている。
樹脂製のOAフロアパネルには、任意の位置に配線取り出し用のキャップや切り欠きが設けられていることが多く、これを利用すれば高価な金属製アウトレットを設置せずとも、ダイレクトに弱電ケーブルを机上まで引き出すことが可能である。そのため、意匠的に金属プレートを見せたい場合や、頻繁な抜き差しが必要な会議室などを除き、執務室内でのローテンションアウトレットの採用数は減少傾向にある。












