根枷(根かせ)
「根枷(ねかせ)」とは、電柱や支線、門柱、信号機、櫓(やぐら)など、垂直に設置される様々な工作物が、外部からの力(風圧、地震動、地盤の緩みなど)によって倒れたり、傾いたり、沈下したりするのを防ぐために、地中部分に設置される補強材である。
電柱の転倒や沈下、傾斜を防ぐため、電柱や支線の地中部分に取り付ける支持材。鋼管やコンクリート柱を敷設する場合、風圧や地震、電線張力によって倒れることを防止するため、所定の根入れ深さを確保しなければならない。根枷の役割は、地盤の抵抗モーメント(倒れようとする力に抵抗する力)を増大させることにある。
根枷によって得られる効果
工作物が風などで横向きの力を受けた際、その力は工作物の根元を回転させようとするモーメント(回転力)として働く。この回転力に対して、工作物本体の周囲の地盤が抵抗するのだが、地盤の種類によっては抵抗力が不足する場合がある。特に、軟弱地盤や埋め戻し土壌の場合、十分な支持力が得られないことが多い。
水田など地盤が軟弱な場所では、上記根入れ深さを確保するとともに、堅牢な「根枷(根かせ)」を施すことが定められている。敷地が広ければ電柱から支線を張って、電柱に掛かる張力に抵抗するよう施工可能だが、敷地が狭い場合には電柱そのものに根枷をあてがって固定するものがある。
電柱そのものに根枷をあてがって固定する方式の場合、張力や揺れによって倒れることが予測される方向に根枷を入れることで、傾斜に対して抵抗し、土中に根枷が食い込むことで支柱の倒れを防止する。
根枷は電柱の土中埋設部に結束し、根枷上部が土中30cm以下に埋設される計画とする。支線や支柱の引張荷重に耐えるよう、根枷強度を選定する。根枷サイズは0.7m、1.0m、1.2mといった複数のラインナップがあり、固定するポール長さや径にあわせて選定する。
電気設備技術基準では、鉄柱や鉄筋コンクリート柱における規定として、全長が15m以下の場合は根入れ深さを全長の1/6以上、全長が15mを超える場合は2.5m以上の根入れを行うことで、傾斜や倒壊を防止することを規定している。全長がさらに長くなる場合、根入れ深さはより深くなる。
また、設置方法に関連して「根巻き」という類似の工法も存在する。これは、掘削した穴にポールを設置した後、周囲にモルタルやコンクリートを流し込んで固める方法である。根枷が「抵抗体を物理的に取り付ける」のに対し、根巻きは「周囲の土壌ごと固めてしまう」というアプローチであり、特にフランジ部分の防食や、より強固な一体化が求められる場合に使用されることが多い。











