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ミクロショック

心臓への直接通電による電気事故

ミクロショックとは、心臓カテーテル検査や心臓外科手術などにおいて、カテーテルや電極が心臓壁に直接接触している状態で、そこから極めて微弱な電流が流れることによって発生する感電事故である。通常、人体表面からの感電(マクロショック)では、皮膚の電気抵抗が電流を制限するバリアとなるが、ミクロショックではそのバリアがバイパスされ、心筋にダイレクトに電流が流れるため、ごくわずかな漏れ電流であっても致死的な不整脈である「心室細動」を引き起こす危険性がある。

心室細動が発生すると、心臓はポンプ機能を失い、血液を全身に送り出すことができなくなる。これを正常な拍動に戻すには、直ちにAED(自動体外式除細動器)や除細動器を用いて電気ショックを与えることが効果的である。したがって、医療行為を行う環境においては、ミクロショックの発生を未然に防ぐための厳格な電気的安全管理が求められる。

電流閾値とマクロショックとの比較

感電による危険性は電流値の大きさに依存するが、その閾値は電流の流入経路によって劇的に異なる。皮膚表面を経由するマクロショックにおいて、心室細動を引き起こす電流値(心室細動電流)は、一般的に約100mAとされている。これに対し、心臓に直接電流が流れるミクロショックでは、その1/1000である100μA(マイクロアンペア)程度の微小電流で心室細動が誘発されることが知られている。

100μAという電流値は、人間が感知できる最小電流(感知電流:約1mA)よりもはるかに小さく、術者や患者自身が「ビリッ」と感じることさえないレベルである。つまり、誰も気づかないうちに心停止に至る可能性がある点が、ミクロショックの最大の脅威である。一般的な漏電遮断器(ELB)の定格感度電流は15mAや30mAであり、ミクロショック領域の微小電流を検出・遮断することは不可能であるため、設備側での根本的な電位差対策が不可欠となる。

建築設備における等電位ボンディングと非接地配線

機器単体の性能だけでなく、医療を行う室内の電気設備環境も重要である。患者が触れる可能性のある金属部分(ベッドの柵、点滴スタンド、医療機器の外装)と、術者が触れる機器との間に電位差が存在すると、患者の身体を通じて電流が流れるリスクがある。

ミクロショックの発生を防ぐためには、それらに電源を供給する建築設備側の対策が重要である。患者の周囲にある金属体(ベッド、医療機器の筐体、サッシ、水道・ガス配管類など)の間に電位差が生じないよう、これらを電気的に接続して同電位にする「等電位ボンディング」を施す必要がある。安全基準としては、接触可能な金属間の電位差を10mV以下に抑えることが規定されている。また、電源供給システム自体を非接地配線方式(絶縁変圧器を使用)とし、一次側での地絡電流が二次側の患者回路へ波及しないよう隔離する対策も、高度な医療環境では標準的に採用されている。

特に心臓カテーテル検査室やICUなどの高度な「医用室」では、単に接地抵抗を低くするだけでなく、患者が触れる可能性のある導電性露出部分間の電位差を10mV以下に抑えることがJIS T 1022(病院電気設備の安全基準)によって求められる。また、漏電発生時の感電リスクを最小限に抑え、かつ生命維持装置への電源供給を継続するために、商用電源から絶縁変圧器を介して非接地状態で供給する「非接地配線方式(IPS)」を採用し、地絡電流を微小な値に制限するシステムも導入される。

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