メラミン焼付塗装
メラミン焼付塗装は、メラミン樹脂とアルキド樹脂を主成分とするアミノアルキド系合成樹脂塗料を金属表面に塗布し、乾燥炉内において高温で加熱することによって架橋反応を起こさせ、硬化させる塗装手法である。単なる揮発乾燥や自然乾燥による塗料とは異なり、熱エネルギーを加えることで塗料分子が化学的に強固に結合するため、非常に緻密で硬質な塗膜が形成される。
日本国内の建築設備やオフィス家具の製造分野において、金属製品の表面保護および美観向上を目的とした標準的な塗装方法として広く普及している。
メラミン焼付塗装の原理と硬化プロセス
塗装の工程としては、対象となる金属製品の表面に付着した油分や汚れを化成処理によって洗浄・除去したのち、静電塗装機などを用いて塗料を均一に吹き付ける。その後、製品を乾燥炉へ搬入し、一般的に120℃から150℃(標準的には130℃前後)の比較的低温に保たれた環境下で、約20分から30分間の加熱による焼付けを行う。
この加熱工程において、メラミン樹脂の持つアミノ基とアルキド樹脂が熱硬化反応(架橋反応)を起こし、立体的な網目構造を持つ三次元高分子へと変化する。塗膜が硬化する直前に塗料が適度に流動するため、刷毛目や吹き付けの凹凸が消え、平滑で美しい光沢を持つ仕上がり面が得られる。
塗膜の物理的特性と美観の維持
焼付工程を経て形成されたメラミン樹脂の塗膜は、物理的および化学的に優れた特性を備えている。
- 表面硬度:日常的な摩擦や軽度な衝撃に対して傷がつきにくい。
- 密着性:鋼板などの金属下地に対する密着性が極めて高く、折り曲げや衝撃を受けても塗膜が容易に剥離しない。
- 耐薬品性・耐油性:一般的な洗剤や機械油が付着しても変質しにくく、清掃などのメンテナンス性が良好である。
電気設備分野における標準的な用途
その優れた保色性と適度な耐久性、そしてコストパフォーマンスの高さから、屋内で使用される金属製品の表面塗装として広範に採用されている。事務机やロッカーといったスチール家具のほか、建築の電気設備分野においては、屋内用の配電盤、分電盤、制御盤の筐体塗装として最も標準的な仕様である。
また、屋内配線に用いられるケーブルラックの表面塗装としても指定されることが多い。一般的な仕様としては、付着量100g/㎡程度の亜鉛めっき鋼板を素地とし、その上からメラミン焼付塗装を施す。盤類やラックの指定色としては、日本塗料工業会のマンセル値に基づく「5Y7/1(半ツヤ)」などのベージュ系やライトグレー系が実務上広く用いられている。
耐候性の低さと白亜化現象
多くの長所を持つメラミン焼付塗装であるが、耐候性の低さが弱点となる。メラミン樹脂は太陽光に含まれる紫外線に対する耐性が弱く、屋外環境で長期間直射日光に曝されると、樹脂の結合が分断されて光沢を失い、退色や変色を引き起こす。
さらに劣化が進行すると、塗膜の表面が粉を吹いたような状態になるチョーキング(白亜化現象)が発生する。チョーキングが進行すると塗膜の保護機能が失われ、下地の鋼板に錆が発生する原因となるため、メラミン焼付塗装を施した製品を屋外で使用することは原則として避ける設計とするのがセオリーである。
屋外用途における代替塗装技術の選定
屋外に設置されるキュービクル式高圧受電設備や、屋外用の照明ポール、ラック類などを設計する場合、紫外線や雨水に対する耐候性が必須となるため、メラミン樹脂以外の塗装材料を選定することで耐候性を高めると良い。
- アクリル樹脂焼付塗装:メラミン樹脂よりも耐候性に優れ、屋外盤の標準塗装として広く用いられる。
- ポリウレタン樹脂塗装:常温乾燥または強制乾燥で硬化し、高い耐候性と耐薬品性を持つため、過酷な外部環境に適している。
- 粉体塗装(ポリエステル樹脂など):有機溶剤を使用しない環境配慮型の塗装であり、塗膜が厚く強靭であるため、重塩害地域などの高い防錆力が求められる環境で採用される。
設置される環境の腐食性や要求される期待寿命に基づき、これら耐候性のある上位の塗装仕様へとグレードを上げる配慮が必要である。
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