巻線形誘導電動機
スリップリングと二次抵抗による制御
巻線形誘導電動機は、回転子の構造に特徴がある誘導電動機の一種である。一般的な「かご形」が回転子にアルミや銅の棒を埋め込んだ単純な構造であるのに対し、巻線形は回転子にも固定子と同様の巻線が施されている。この回転子巻線の端部は、回転軸に取り付けられたスリップリングと、それに接触するカーボンブラシを経由して外部の二次抵抗器へと接続される構造となっている。
始動時や速度制御時には、この外部接続された二次抵抗器の抵抗値を調整することで、回転子の電流を制御する。始動完了後はスリップリング部分を短絡装置によってショートさせ、二次抵抗を切り離すことで通常の誘導電動機として定格運転を行う仕組みである。
始動特性のメリット
巻線形誘導電動機の利点は、二次回路の抵抗値を変化させることでトルクの特性曲線を制御できるという特性を利用できる点にある。二次抵抗を大きくすると、最大トルクを発生する回転数が低い方へ移動する現象を利用し、始動時の回転数がゼロの状態でも大きな始動トルクを発生させることができる。
同時に、二次抵抗の挿入は始動電流を抑制する効果も高いため、大きな慣性モーメントを持つ負荷であっても、電源設備への負担を抑えつつ力強く始動することが可能である。この特性から、頻繁な始動停止や重負荷始動が求められるクレーン、巻上機、クラッシャー、大型コンベアなどの動力源として採用されてきた。
保守の課題とインバーター化による減少
優れた始動特性を持つ一方で、保守面では大きな課題がある。回転部分に接触するカーボンブラシやスリップリングは摩耗部品であり、定期的な点検と交換が不可欠である。また、摩耗によって発生するカーボンの粉塵が絶縁低下を引き起こすリスクもあり、メンテナンスフリーなかご形誘導電動機と比較して維持管理の手間とコストがかかる。
近年では、パワーエレクトロニクス技術の発展により、メンテナンスフリーなかご形誘導電動機とインバーター制御を組み合わせることで、巻線形と同等以上の始動トルクや速度制御性を実現できるようになった。そのため、新規の設備で巻線形誘導電動機が採用されるケースは減少しており、既存設備の更新においても、かご形誘導電動機とインバーターへの置き換えが進んでいる。












