混触(混触防止板)
混触(混触事故)とは何か
混触とは、変圧器内部の絶縁破壊などにより、本来絶縁されているはずの「高い電圧の電路(一次側)」と「低い電圧の電路(二次側)」が接触してしまう現象を指す。電気事故のひとつであり、正確には「高低圧混触」と呼ばれる。
通常、変圧器によって6,600Vの高圧は100Vや200Vの低圧に変換されて供給されるが、混触が発生すると、低圧側の電路に高圧がそのまま侵入することになる。低圧側の配線や接続されている家電製品、産業機器は定格電圧が100V〜200Vの使用に耐える絶縁性能しか持っていないため、高電圧が印加されることで瞬時に絶縁破壊を起こし、機器の焼損や火災、あるいは人体への致命的な感電事故につながる危険性が極めて高い。
B種接地工事による保護の仕組み
このような混触事故による異常電圧の上昇を食い止めるため、電気設備技術基準では変圧器の低圧側中性点(または一端)にB種接地工事を施すことが義務付けられている。
B種接地工事が施されていれば、万が一混触が発生して高電圧が低圧側に流れ込んでも、電流は接地線を通じて大地へと逃げることになる。これにより、低圧側の対地電圧上昇を150V以下(条件によっては300V以下)に抑制し、接続機器や人体を保護する仕組みとなっている。これが一般的な変圧器における安全対策の基本である。
混触防止板(静電シールド)の役割と構造
一般的な変圧器は二次側電路を直接接地(B種接地)することで安全を確保するが、医療用電源やサーバー用電源など、信頼性を重視して「二次側を接地したくない(非接地系統としたい)」場合がある。このようなケースで採用されるのが、混触防止板(静電シールド)付き変圧器である。
混触防止板とは、変圧器の一次側コイルと二次側コイルの間に挿入される、銅やアルミニウム製の金属板のことである。この金属板をB種接地工事で大地に接続することで、物理的・電気的な障壁として機能させる。
- 物理的な分離:コイル間の絶縁が劣化しても、まずは接地された金属板に触れるため、地絡電流として大地へ逃がすことができる。これにより、二次側コイル自体には高電圧が印加されない
- 接地の分離:二次側電路そのものを接地する必要がなくなるため、二次側を「非接地方式(フローティング)」として運用することが可能となる
混触防止板付き変圧器のメリットと用途
混触防止板付き変圧器は、構造が複雑になるため一般用変圧器と比較して高価かつ大型になりやすいが、費用対効果に見合う大きなメリットが存在する。
一次側と二次側の間に接地された金属板が入ることで、コイル間の「浮遊容量(コンデンサ成分)」結合を断ち切ることができる。これにより、高圧側から侵入してくる雷サージや開閉サージ、高周波ノイズが二次側に伝わるのを防ぐことができる。この効果を静電シールド効果と呼ぶ。
二次側が非接地(フローティング)となるため、万が一二次側で一線地絡(漏電)が発生しても、回路が大地とつながっていないため、大きな地絡電流が流れない。そのため、スパークによる火災リスクを低減できるほか、重要な機器が漏電ブレーカーの動作によって突然停止することを防げる。
こうした特性から、絶対的な信頼性が求められる病院の手術室(医用コンセント)、データセンターのサーバー電源、工場の精密制御機器ラインなどでは、混触防止板付き変圧器による絶縁電源システムが広く採用されている。
施工上の注意点
混触防止板付き変圧器を設置する場合、接地工事の種別に注意が必要である。
- 外箱(ケース):機器の保安用としてA種接地工事(高圧機器の場合)を施す。
- 混触防止板(シールド端子):高低圧混触防止用としてB種接地工事を施す。
外箱と混触防止板で接地極を分けるか、共用するかは設計思想や接地抵抗値の条件によるが、役割の異なる2種類の接地が必要になる点を理解して施工管理を行う必要がある。












