ケーブルヘッド
高圧ケーブルを高圧機器や受変電設備と接続するため、端末処理を施した部分。ケーブルヘッドを構築するため、被覆を剥いだ高圧ケーブルに絶縁テープ(エフコテープ)や半導電テープを巻いた構造となっており、分岐管を用いて二又または三又に分岐する。受変電設備を構成する重要部材のひとつであり、略称として「CH」と表記される。
高圧ケーブル(CVケーブルなど)の端末処理においては、絶縁性能の維持と「電界の緩和」である。 ケーブルの遮へい銅テープを剥ぎ取った端部には、電気力線が集中しやすく、電界強度が極端に高くなる。このままでは絶縁体が耐えきれず、放電や絶縁破壊を引き起こすリスクがあり、これを防ぐために、ストレスコーンと呼ばれる部材を用い、等電位線を広げて電界集中を緩和させる処理が必要となる。ケーブルヘッドは単なるカバーではなく、電気的なストレスを制御するための保護装置として機能する。
ケーブルヘッドの組み立ては、あらかじめ拡張されたゴム製の部材を、プラスチックのコアを引き抜くことで収縮させ、ケーブルに密着させる方式が主流である。火気を使用せず、均一な締め付け力が得られる。
ケーブルヘッド部分に発生しやすい不具合として、シュリンクパックと呼ばれる現象がある。ケーブル製造時のシース残留応力により、日射・通電を繰り返す熱サイクルに影響されて、シースの収縮によりシースずれが起きる現象である。内部の遮蔽テープが引っ張られて破断するおそれがあり、接地の連続性が失われて発熱し、導体を破損させてしまう。
電線メーカーはシュリンクバックを抑制するための対策品として、アルミクリートや熱収縮チューブ、常温収縮チューブで押さえ込む製品などを開発し、「シュリンクバック模擬試験」により収縮現象が発生した場合に、一定以上のズレが起きないことを確認する効果検証しており、高い安全性が担保されている。
ケーブルヘッドの浸水対策
ケーブルヘッド内部に浸水すると絶縁破壊の原因となるため、屋外用では雨覆と呼ばれる笠をケーブルヘッドに設け、雨の侵入を防止する。寒冷地では内部の浸水が凍結し、絶縁体に機械的な損傷を与えることがあるため注意が必要である。ケーブル内部に水が浸入すると、絶縁体が劣化する「水トリー現象」を引き起こし、重大な地絡事故に繋がるため、水分の侵入は厳しく制限しなければならない。
ケーブルヘッドは接地線が取り付けられるようになっており、地絡継電器や地絡方向継電器の動作のためのシールド接地が可能となっている。高圧電線路のひとつであるため、A種接地工事を行い安全性を高めなければならない。
ケーブルヘッドを含む高圧受電設備の健全性は、電力供給の安定性に直結する。一般的に高圧ケーブルおよびその端末処理部(ケーブルヘッド)の更新推奨時期は20年〜30年とされ、水の影響がある屋外では10~20年が推奨されている。
推奨時期に満たない設備であっても、湿気の多い環境や、電流値が継続的に大きな系統などでは、早期の劣化が見られることから、点検により異常が発生していないか重点的に確認し、異常傾向が見られた場合は早期更新を強く推奨している。
点検のポイントとして、目視による表面の亀裂、トラッキング(炭化導電路)の有無、および停電を伴う絶縁抵抗測定が不可欠である。特に、設置から10年を超えた設備では、絶縁破壊の前兆となる微弱な放電の有無、発熱・振動・臭気といった五感に頼った検査を組み合わせながら、安全管理を行っている。












